金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第31話 ミューレンへの帰還要請

メールス国王陛下の予想は見事に的中した。
ミューレン王国から、ディオン侯爵宛てに書簡が届けられた。
一国の調査能力を駆使すれば、アリーセがどこで何をしているかなど、簡単に調べがつくのであろう。

「アリーセさん、どうするおつもりですか?」

侯爵に呼び出され、今は侯爵家の応接間に居た。

「どうも、こうも、無視するに決まっていますわ。今更戻って来いなんて、都合がいいにもほどがあります」

書簡には、アリーセが居なくなり、軍事力が低迷していること。
隣国でSランク認定された、実力を考え、国外追放を取り消し、再びミューレン王国の軍事力強化に協力して欲しいというものであった。

「私がこの国に居る限りは、ミューレンも無闇に手は出せません。それに、侯爵やメールス国王陛下の後ろ盾もあります。もし、手を出されたらぶっ飛ばしますから安心してくださいいな」

アリーセ笑顔で言った。

「一国相手に戦争でもするつもりか?」
「たとえ、軍が束になってかかって来ても、私は勝てます」

アリーセが言い切った。

「本当に、君が敵に回らなくて良かったと思うよ」

侯爵は苦笑いした。

「この件、メールス国王陛下のお耳には入れていますの?」
「ああ、先ほど使いの者が書簡を届けに行ったよ」
「なら、陛下にも事情を話した方がいいかもしれませんね」
「おう、まさか、うちに君の帰還要請が届けられるとはな」

侯爵は頭を掻きながら言った。

「侯爵家に私が出入りしていることを調べたのでしょう。一国の調査機関を使えばそのくらいは出来ますわ」
「まあ、陛下の予想が当たったわけだな」
「にしても、都合がよすぎですわ。戻る訳ありませんのに」
「私としては、君のその言葉を聞けてよかったよ。しばらくは身の回りに気を付けてくれ」
「分かりましたわ」

アリーセは立ち上がると、侯爵家を後にした。


****


「陛下、どういうおつもりですか!? アリーセ・ベートに帰還要請を出すなど!!!!」

バスラー公爵が血相を変えて、ミューレン国王の元に乗りこんできた。

「今は、見栄を張っている場合ではない。再び、彼女の力が必要なんだ」
「あんな女に何が出来るんです! 新しい参謀ならすでに」
「その参謀がポンコツだから言っておろうに! ったく、アリーセを追放するとは何を考えている。馬鹿モンが!」

ミューレン国王が、珍しく声を荒げた。

「しかし、女を参謀になんて」
「では、この状況をどう説明するんだ。アリーセはメールス王国でSランク認定を受けたそうじゃないか。それに比べ、わが国は弱体化する一方。責任、取ってくれるんだろうな?」

国王は、厳しい視線をバスラーに送った。

「分かりましたよ! 責任くらい取ればいいんですね!」

バスラーも怒声を放ち、国王前から立ち去った。

「あの女、消すしかないみたいだな」

バスラーは、不敵な笑みを浮かべていた。



          

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