金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第23話 侯爵領

そこから、馬車は進み、街を一つ通り過ぎた。

「あと、4時間もすれば、私の領地に入るぞ」
「分かりましたわ」

道は舗装されている為、魔物はほとんど姿を現さなかった。

「見えたぞ、あれが私の領地、ミスタンだ」
「ここまでくれば、ほぼ、安心と言えますね」

3時間と少し、馬車に揺られ、侯爵領ミスタンへと到着した。
馬車は、検問所を素通りし、ミスタンの街の中に入って行く。

「領主様がおかえりになったぞ!」
「あら、本当ね」

馬車の窓から、外を眺めているが、領民からは慕われている様子だった。
それは、街の様子を見ればよく分る。
重い税で苦しんでいるようでも無く、街には活気で溢れていた。

「よさそうな街ですわね」
「そうだろう。ここは、いい所だぞ」

侯爵は自慢げに言った。
やがて、馬車は、街の中でもひときわ目立つ、大きな屋敷の前で停車した。

「お疲れ様でございました。到着いたしました」

執事のロルフが、そう告げた。

「まずは、私が出ますので、侯爵とソフィはそのままで」
「分かった」

ここまで来れば安心だと思いたいが、国の重役はどこで襲われるか分からない為、警戒は怠るべきではない。
アリーセは、馬車を降りると、索敵魔法を展開する。

「うん、大丈夫ですわね」

周りに敵がいない事を確認すると、馬車の中に居る、侯爵とソフィに、問題無い事を伝えた。

「おう、ありがとう。アリーセが護衛で助かったわ」
「私も、安心できましたわ」

そう言って二人は微笑んだ。

「良かったですわ」

馬車を降りると、屋敷の玄関を開けた。

「「「「おかえりなさいませ」」」」

屋敷の従者が頭を下げて出迎えてくれる。

「おう、ただいま」
「ただいまです」
「何をしている、アリーセも入りなさい」

立ち止まっていたアリーセに向かって言った。

「は、はい」

アリーセも屋敷の中に入った時、正面から、薄いピンク色のドレスを身に纏った女性が出てきた。

「あら、あなた、おかえりなさい」
「ただいま、ファミーユ」
「あら、お客様?」

ファミーユと呼ばれた女性は、アリーセに目を向けた。

「ああ、紹介するよ。彼女はアリーセさん。護衛として同行してもらった」
「じゃあ、この方がソフィを助けてくれたという」
「そうだ」
「失礼いたしました。私、ディオンの妻で、ソフィの母のファミーユ・オーダンと申します」

スカートの裾を摘まむと、綺麗に一礼した。

「ご丁寧にありがとうございますわ。私、アリーセ・ベートと申します」

アリーセもまた、頭を下げた。

「今日は泊っていくだろ?」

侯爵がアリーナにそう、聞いてきた。

「よろしい、のですか?」
「もちろんだとも。神経を使って疲れただろう。しっかり休んでくれ」
「ありがとうございますわ」

こうして、アリーセはミスタンでも、侯爵にお世話になることになった。

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