金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第3話 元参謀は国を去る

あれから二日間、牢の中で過ごした。
そして、三日目の朝、牢の扉が開かれた。

「出ろ!」
「いよいよ、この国ともおさらばね」

アリーセは少し口角を上げた。

「何が可笑しい?」

アリーセの表情に気づいた衛兵は尋ねた。

「こんな腐った国にいつまでも仕えるよりは、出て行った方が気楽にやれると思ったのですわ」
「そうか」

衛兵はぶっきらぼうな返事をすると、アリーセをミューレン領地と外を繋ぐ門の前に連れてきた。
繋いでいた鎖を外すと衛兵は荷物をアリーセに放り投げた。

「ほら、預かってた荷物だ。中身は多分そのままだぜ」

多分という所に引っかかったが、そんなことは別にどうでも良かった。

「武器は?」
「そんなもんを渡して、襲われたらどうする? 元とはいえ、作戦参謀だ。俺たちじゃ相手にならん」

衛兵はお手上げのポーズをした。
そこまで、高い剣ではないが、お気に入りの武器が自分の手を離れるのは、何とも言えない寂しさがある。

「ま、せいぜい死なないように頑張ってくれ。城壁の外は魔物も多いからな」
「忠告感謝しますわ」
「では、裁判による判決に基づき、アリーセ・ベートを永久追放する。二度とミューレン王国に立ち入ることを禁じる」
「わかりましたわ」

それだけ言うとアリーセはその場を立ち去った。

門が見えなくなった所でアリーセは荷物の中身を確認した。

「本当に、ほとんど無くなっていないんですわね」

しかし、金が半分ほど無くなっていた。

「この資金では、一ヶ月持つか持たないか、といった所ですわね」

アリーセは小さくため息ついた。

「とりあえず、これからどうするか、ですわね」

近くにあった、ちょうどいいサイズの岩に腰を降ろすとアリーセは考え込んだ。

「確か、この先にはメールス王国がありましたわね。とりあえずの目的地はメールス王都としますわ」

考えもまとまった所で、アリーセは立ち上がった。
立ち上がり、数十分ほど歩いただろうか。
囲まれるような気配を感じ取った。

「魔物ですわね」

普段ならこの程度の魔物造作もないが、今のアリーセに武器はない。

「正直、体術は消耗するから嫌なのよね」

仮にも、元王国の参謀なのだから体術もそれなりにこなせるが、あまり好かないアリーセ。
その時、ふと自分の腰より伸びた金髪縦ロールが目に入った。

「これ、使えるかも……」

そう考えていたその時、目の前に狼のような魔物が出現した。

「どうやら、考えている暇はなさそうね」

アリーセは一か八か、自分の金髪縦ロールに硬化魔法をかけ、重力制御魔法を展開する。
槍のように尖り、刀のような切れ味を持った金髪縦ロールは魔物を一刀両断する。

「これ、意外と使えるわね。でも、魔物相手は勘弁したいかもだわ」

なにせ、魔物の血が付いてしまうのだ。
気分がいいものとは言えない。

その後、三体の魔物を、ドリルのように回転させた金髪縦ロールで仕留めると、自分の髪に浄化の魔法をかけ、血を落とした。

「初めてやりましたけど、魔物相手は極力使いたくないですわね」

そんなことを口にし、魔物の死体を道の隅に寄せた。

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