金髪縦ロール無双~無実の罪で国外追放された元天才参謀、世界唯一の女性Sランク冒険者になった途端戻って来いと言われましたがもう遅い。私の居なくなった国は急激に弱体化したようです~

津ヶ谷

第1話 嫌われの参謀

アリーセ・ベート、ミューレン王国の軍事作戦参謀だ。
長い金髪をいわゆる縦ロールにし、令嬢のような服装をしているアリーセ。
確かに、澄んだ青色の瞳と白い肌、美人と言えるであろう。

参謀とは軍隊の総指令官的な役割を果たす、大事な役職だ。
アリーセは23歳の若さにしてその役職に就いた。

彼女が参謀の役職に就いてからというもの、ミューレン王国は負けを知らなかった。
それほどアリーセは優秀だったのである。
しかし、そんなアリーセの順風満帆な生活は長くは続かなかった。

若い女が軍隊の総司令官なのだ。
反感を覚える者も少なからず居た。

「参謀、四千の兵がこちらに向かっています」
「では、こちらは三千五百の兵を出す。北の砦の衛兵五百を残し、こちらに招集せよ」
「はっ!」

今日の作戦も上手くいっていたはずだったが……。

――


「ど、どうしてこうなったんですの……」

アリーセは薄暗い牢の中に閉じ込められていた。
ちなみに、アリーセは戦闘の時は口調が変わるのだ。

「ふっ、悪く思うなよアリーセ。お前が目立ち過ぎたのがいけない」

アリーセを参謀に置くことを最後まで反対していた、バスラ―公爵の姿があった。

「どういうつもりですの?」
「どうもこうも、お前には消えてもらうのさ。私の部下の罪を被って消えてもらうのさ。いつまでも若い女を参謀のお座に就かせておいては、我が国が舐められる」

公爵はどうしてもアリーセを失墜させたいようである。

「こんなことが明るみに出たら、国王も黙ってないのではなくて?」
「要らん心配をするな。全ては根回し済みである」

公爵は不敵な笑みを浮かべた。

「せいぜい、裁判までそこで大人しくしているんだな」

それだけ言い残すと、侯爵はアリーセの前から立ち去った。

「あの、バカ公爵め」

何度かこの鎖を外してやろうと試みたが、特殊な素材を使っているらしく、アリーセの手持ちのものだけでは、どうにもならなかった。
これも、アリーセの実力を多少は警戒してのことだろう。

牢に閉じ込められて三日。
食事は一日に二回。飲み物は死なない程度にと言った感じだ。
ずっと太陽の光を浴びていないアリーセは、今が何時かも分からない。

「出ろ!」

衛兵によって牢の扉が開けられた。
おおよそ、四日ぶりの外である。
アリーセは鎖につながれたまま、どこかに連れていかれる。

「どこに行くつもりですの?」
「黙って歩け」

しかし、アリーセはどこに向かっているのかの見当は付いていた。
もう、十年以上もこの国に、この王都に住んでいるのだ、大体の所には足を運んできた。

「裁判所、ですわね……」
「今からお前の裁判だ」

この時、アリーセは自分が何の罪で投獄されているのかも知らされていなかった。

「私は何の罪ですの? きちんと説明してください」
「それは俺の口からいう事ではない」

アリーセは裁判所の中に連れられて行った。

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