ホバローディ・ヴィヌガレド

汰綿欧茂

第3話 初めての宇宙戦

 ファルコンタイプの獣形機プトルスとの交戦中の5機のホバローディが大苦戦の状態だった。
 敵機がMMCブロック民収容の2号輸送機にまとわりついた事から市民の安全の為に救助活動したが、間にあわずに多くの死傷者を出したのは、もはや言い訳に過ぎない。

 ホバローディと獣形機の対立の間を一機のホバローディ・ベグリアム6号機が応戦してきた。
 無線回線で接触しだす操機員。

「援護にきました。私も加わります」
「誰? その声、ブリーフィングルームにいた新米……いや、巻き込まれた一般民か?」

 フレスニー中尉は、嫌そうな口調で苦戦のさなか応対した。
 ベーンザルク少尉が口を挟んできた。

「アルフェイさん、ここは君がくる場所ではないはずだ」
「すみません。でも艦長の許可は得てます」
「ふん、おおかたその仔猫が鳴き声で艦長に色仕掛けしたんだろ?」

 とダムティー少佐が半分ふざけて割り込んだ。

「今は敵対の最中です。私も任務に参戦させていただきます」

 アルフェイは無理に応戦しようと機体を接触しだす。

「誰がフォーメーションの中に潜れと命じた? そんな事すれば陣形が崩れ士気が乱れる」

 チームリーダーのロアーク大尉が注意を払った。当然の措置だ。突然、新米が陣形に入ればフォーメーションに影響すると判断したか
「艦長命令なので、私は……」
「あんたさ、足手まといなんだ。チームから出てってくれ。危険地帯にむざむざ来るなら、それなりの戦果を得てからにしろ!!」

 ドマスリー少佐はキリキリしながらアルフェイを追い返した。
 突然ベーンザルクは四人の同僚と共闘陣形を外した。アルフェイの元へ接触しだした。

「どうした、ベーンザルク? 貴官は何故なぜアルフェイ殿に取り付く? 陣形を崩す事は命令……いや反作戦行為と見做みなし、禁固刑がくだされる。それで良いのか?」

 ロアークが部下の行為を正そうと応対した。
 リーダー発言はこんな対立状態の中でも、厳格に取り計らうもの。部下のしつけが行き渡らねば、士気がもろくなり一機の敵に殺られる危機が高くなるからだ。

「俺、いや自分は、アルフェイさんと共闘の陣形に入らせてもらいます。これは、私事わたくしごとでなく、有効手段としての判断です」

 ドマスリーはベーンザルクに突っかかってきた。

「ああ? ベーンよ、お前は生意気なんだよ。いちいちな。何が有効手段だと? その女は一人で獣形機を狩ったからと調子に乗ったマグレな勝ち組なんだ。手を貸すだけちゃんちゃらおかしい事だぜ」
「しかし、ドマスリー少佐、自分は彼女にもやれる事があると判断したまで」

 ロアークは、隊長としての責務の遂行の妨害と見定めるかどうか、部下に試してみせた。

「厳罰を逃れるには、除籍し我々と敵対する事が条件だ。それでもアルフェイ殿に付くならそれも良い。それは、貴官に任せる」
「自分は取り付いてません。新しい陣形の作戦を自己判断したのです」
「そうか……ならば、その陣形のフォーメーションで敵対せよ。これは最後命令だ。これに失敗した暁には、貴官を敵と見做し対立する。よろしいな」
「……了解。……では、アルフェイさん、自分との連携を頼みます」

 アルフェイは新しい陣形フォーメーションを組む作戦に否応なく加わる事に至った。

「私は、ベーンザルクさんとは組めません。援護ができると思っての甘い行為でした」
「そういうのは又のち程話す。今はとにかく、自分の指示に従ってそれに合わせて対象に接触を図る。大丈夫?」
「え……ええ、何とか」

 プトルスに変化が見られた。それは、再び一度襲った目標の輸送機だった。
 敵機の移動する側にはリタルの弟のハイルズが一人だけうずくまってるポイントだったのだ。

「何ィ  又、アイツは輸送機を狙ってきただと。隊長、止めに入り……」

 ドマスリー機が動くのを制止しだすロアーク。その止めに入った時の腕のパワーは計り知れない。

「今の戦いはベーンザルクたちの作戦だ。今は黙認だ」
「しかし〜……」

 プトルスが接触を図るその瞬間だった。
 突然に炎の筋が鞭のように叩きつけてはその筋が敵機の節足部に絡みついた。
 そして、炎の筋と思わすスキルは発火され敵機の四肢を引きちぎった。苦悶してる状態のそれにグレネードで止めをさしたアルフェイ。
 対象は沈黙した。アルフェイとベーンザルクの連携が勝機に導いたのか……うまく言葉では表現てきなかった。

「確かに、ハイルズ君の助けを呼ぶ声が……脳裏に焼き付いたような。あの輸送機から弟君のシルエットが見えた気がした……私、幻覚でも見えてたの?」
「ほら、自分らの陣形でよく知らなかったがプトルスから勝てた。君のお陰さ、アルフェイさん」
「私は、何にもしてなかったはず。確かに……」

 何はともあれ新しい陣形フォーメーションの作戦がたまたま勝機を与えた。たまたまだ。
 出動操機員総員は一斉にふねに帰還した。
 輸送機の応急処置した穴埋め箇所は、修理用、スペースビルダーという工事機甲師が完全修復しだした。

 未だに2号輸送機の機内民にハイルズがいると気になっていたアルフェイ。
 少し浮かれて調子に乗ったベーンザルクが鼻歌まじりでアルフェイに寄り添う。

「あの時はほんと何があったんだろうな。炎の筋が、ロープ付きの鞭に見えたりとなんかおかしかったよな」
「あのマニュアルにない攻撃スキルは、機体に備えてなかったわ。いったい何なのか私にはさっぱり……」

 ロアークが入り込み、アルフェイにお礼を言い渡しにきた。

「アルフェイ殿、戦時中の士気をなくす妨害行為は軍規律では軍事会議にかけられる忌まわしき行為。今後はわたしの指示に従っていただく。以上だ。作戦の後だ。少しばかり休憩取る事も大事だぞ」

 一方的に伝えてはすぐ退室しだしたロアーク。
 薄く笑みを浮かべては、少しは前向きな姿勢を取ってみたアルフェイだった。

「そうね。私は安管委に直談判に行く事かもね。次はウォーターサロンというポイントステーションで補給するのでしょう?」
「ああ、確かに次の航行先はそこだけど。何で?」
「私、腹をくくったわ。ウォーターサロン内の安管委に取り付くわ」
「ええっ、何で 」

 目を丸くしたベーンザルクだった。

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