悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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66話 『センエースごときが、オメガ相手に、何をしても無意味である』


 66話 『センエースごときが、オメガ相手に、何をしても無意味である』

「お前の神風特攻には畏怖すら感じるよ、センエース。俺は、この世で、唯一、お前にだけ恐ろしさを覚える」

 言いながら、スルリと、受け流しの精度を高めるオメガ。

「けど、それは、人間がゴキブリに抱く恐怖と類似している。気味の悪さ、気色の悪さに対する不快感。それだけ」

 ヌルリと、
 センは、ひっくり返された。
 あえて痛みを伴わないスッ転ばし。

 すべてを込めた特攻すらも、
 オメガの前では無意味だと思い知る。

 ここまできて、ようやく折れるか……と思いきや、
 しかし『そんなことはどうでもいい』とばかりに、
 センは、より深く、自分の武に没頭しはじめる。

 まるで頭の中から絶望が消えてしまったかのように、
 スっと、クリアに、世界の全てを見通して、

「これでダメか……なら……」

 と、貪欲に、無邪気に、アホウのように、
 次の最善手だけをひたむきに求め続ける。

 最適解のひねり出しに没頭している間、
 センは、『恐怖』と決別できる。
 頭の片隅には残っているが、
 しかし、恐怖に寂しさを抱かせるレベルでシカトできる。

 『センエースごときが、オメガ相手に、何をしても無意味である』。
 そんなことは分かっていた。
 だが、どうでもよかった。
 意味があるかどうかを考えられるほど、センは賢くはない。

「これもダメか……なら……」

 勘違いしてはいけないのだが、
 今のセンは、『可能性を追及している』のではない。
 ただ、試行回数を積み重ねているだけ。

 これまでと同じ。
 ずっと、ずっと、繰り返してきたこと。
 いまさら、根本が変わることはない。

 センエースは、繰り返す。
 バカみたいに、ボロボロになって、
 脆くて小さなベイビーステップを、
 頭がおかしくなっても止まらずに、
 ただただ、ただただ、バカみたいに積み重ね続ける。

「センエース。貴様は本当にサイコパスだな」

 そんなセンのムーブを、
 オメガも黙って許容するわけではない。
 ユラリと、センの右腕にからみつき、
 鉛筆の芯でも折るみたいな気軽さで、

「ぎぃいいぁぁ……っっ!!」

 バキっとへし折られた。
 しかし、折れたのは腕だけ。
 心は、むしろ、もっと熱くたぎる。
 絶体絶命で、腕も失い、未来が見えない状況で、
 ――そんな絶望的状況かだからこそ強く輝く意味不明な魂魄。


「ぎぃ……ぐっ……腕一本じゃ、足りねぇ……この程度じゃ、折れる気にならねぇ……もっと俺を壊せよ……いい加減、俺も辛いんだ。諦めたいんだ。だから、俺の心を摘み取れよ」

 ギンッと、強い目で、オメガを睨み、

「俺の話を聞いて驚けよ、クトゥルフ・オメガバスティオン。俺は、今、普通に、お前を殺す気でいる。どうだ、すげぇだろ? 正直、自分に対するドン引きが止まらねぇ。俺、やべぇよ。マジでイっちゃってるよ。もう、怖ぇよ」

 センの軽口がノってくる。
 意識を通さない、脊髄反射の妄言。
 しかし、その言葉に嘘はない。

 この期に及んで、センは、本当に、
 オメガを殺すつもりでいる。

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