悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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58話 狂愛のアリア・ギアス。


 58話 狂愛のアリア・ギアス。

「くく……何が覚悟だ。ビビっただけのくせに。『お前』は本当に脆いな。あんな、カスみたいな女共の攻撃で怯みやがって。つぅか、『お前』、ちょっと泣いてんじゃねぇか。本当に、いつまでたっても泣き虫だな。気色悪ぃ。もう、マジで死ねよ」

 気配の禍々しさがグンと上昇した。
 もともと、オメガは、異様なオーラに包まれていたが、
 自問自答を経たことで、そのオーラの異質さに磨きがかかった。

「ここから先の俺には『脆さ』も『隙』もない。俺は完全に壊れた。完全なる俺を相手に、てめぇらみたいな、ハンパな女神が相手になると思うなよ」

 魔力とオーラが充満していく。
 とんでもない存在感。
 圧倒的な強者のたたずまい。

 そんなオメガを前にして、
 『彼女』は、

「確かにあたしはハンパだよ。けど、もう何もできないわけじゃない。あたしだって積んできた。センエースを愛している。その想いを積み重ねてきた」

「狂愛のアリア・ギアスは、俺が知る限り、最も醜いメンヘラの終着点。何もかもが腐ってドロドロになったゲロの集合体。それ以下であることはあっても、それ以上にはなれない汚物」

 言葉で殴り合ってから、
 オメガと彼女は、握りしめた拳をかわしあう。

 高次の魔法も乱舞させて、
 特殊な領域魔法を展開させて、
 ありとあらゆる『神の御業』を暴走させて、
 どうにか、相手の息の根をとめようと必死。

 食い破るように、空間をざわつかせる二つの神。
 八方で爆音が霧散して収束。

 無限を彷彿とさせる応酬。
 数えきれない武が躍り狂う。

 炸裂し、弾けて、破砕する。
 衝動的なギアで、ケイデンスを加速。

 断絶(だんぜつ)が重複(ちょうふく)されていく。
 色彩を狂わしていく高次の幻想。

 尊くて淡い『仄(ほの)かな一瞬』が世界を優雅に穢していく。
 命が輝く。

 ――そんな高次の闘いは、
 時間にすると、数秒で決着がついた。

 内容は濃いのだが、どちらも神速なので、
 実質的な決着までの時間はすさまじく短い。

「がはっ……」

 白目をむいて吐血する『彼女』。
 オメガの強烈な一撃で意識が飛びそうになった。

 普通なら失神して当たり前の一撃。
 けれど、『彼女』は、奥歯をかみしめて、

「もう少し……削る……あと……もう少しぐらいは……」

 折れることなく魔法を放った。
 もはや、武を通すだけの余力は残っていない。
 しかし、魔力はまだ尽きていない。

 本当の、最後の最後、完全に空っぽになるまで、
 抗い続けてやるという覚悟を示す彼女に、
 オメガは、

「みっともないあがきだ。自覚しろよ。結局、てめぇじゃ何もできねぇ」

「何もできないということはない。愛する男を、ほんの少しでも支えることができる……もう、ただ守られるだけのお嬢様じゃない」

 血走った目で睨みつける。

「あたしにてめぇを殺すことは出来ないだろう。というか、する気もない。あんたを叩き潰す役目は、ヒーローに任せる。ただ、全部を押し付ける気はない。あたしにできる全部を使って命がけのエールを送る」

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