悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

56話 最後の1%。


 56話 最後の1%。

 片目はつぶれ、全身複雑骨折で、
 耳も聞こえづらく、頭がズキズキと割れそうで、
 しんどくて、泣きたくて、辛くて、苦しくて、

 ――そんな全部に埋もれながらも、センは、

「ヒ……ロォ……見…………参…………っ」

 勇気を叫び続けた。

 大事なものを守るために闘い続けるという覚悟を示した。
 その尋常ではない献身を目の当たりにして、
 コスモゾーンが震えた。

 感情論の終着点。
 凝り固まった指向性が風化する。

 だから――というのもおかしな話なのだが、
 しかし、事実として、
 本来であれば完全に反則なのだが、
 コスモゾーンは自由意志を通した。

 無意識の暴走。
 結局のところは、それだけの話。

 センエースの覚悟は、
 特殊なアリア・ギアスとして昇華され、
 コスモゾーンの中核を震わせた。

 記憶の螺旋が、強制的に、円の輪郭を持つ。
 途切れ途切れだったカケラが収束する。

 100万回を超える献身。
 常軌を逸した王の愛。

 常人では、とても受け止めきれない『センエースの覚悟』が、
 『彼女たち』の中心で立体的になっていく。

 完全には無くさなかった『センエースへの想い』が昇華されていく。

 センがどれだけあがいても、
 絶対に削り切れなかった『最後の1%』が、
 本物の器となって、現世に顕現する。

 積み重ねてきたのはセンだけではない。
 能動的ではなかったかもしれないが、
 センに付き合わされて強制的だったとはいえ、
 確かに、間違いなく、確実に、

 ――彼女たちの『中』では、
 多くの『想い』が磨き上げられていった。





 その『想い』に対して、
 コスモゾーンが『事実』をつきつける。





 センが、これまでに何をしてきたのか。
 この無限ループにおいて、
 どんな想いで、もがき、あがき、苦しみ続けてきたのか。

 その全てが、ダイレクトに、
 彼女たちの魂魄へと刻まれる。

 コスモゾーンのワガママに振り回される。

 ――結果、世界に亀裂が入る。
 その亀裂から、深い輝きが、注ぎ込んだ。
 天使の階段。

「……なん……だ……」

 何が何だか分からず困惑しているセン。
 すると、亀裂の向こうから、
 龍の鎧を装着した美少女が現れた。

 知らない顔だった。
 けど、面影は随所から感じる。

 その『彼女』は、まるで、K5をモンタージュで合成させたような顔をしていた。
 身にまとう龍の鎧も、彼女たちの龍を合成させて練り上げたような色鮮やかさ。

 彼女は、

「――神の慈悲――」

 センの体に触れて、神の魔法を使った。
 命が癒されていくのを感じた。
 痛みが熔けていく。
 こころが、満たされていく。

 彼女は、
 センの体が、あらかた癒えたのを確認したところで、

「……っ」

 我慢できなくなったように、
 センをギュっと抱きしめた。
 かきいだくように、強く、強く、抱きしめて、

「辛かったよね……苦しかったよね……」

 遠慮なしに、想いのたけをぶつけていく。

「ありがとう……ずっと、ずっと……ありがとう」

 ポロポロと涙をこぼし、

「愛しさで溺れそう」

 心の底から湧き上がる感情をぶつけていく。


「幾億(いくおく)の……
 刃のように、冷たい涙……
 必死になって、飲み干しながら……
 無限の痛みを心に背負い……
 それでも、あなたは……闘い続けてくれた……」

 言葉が結晶になって降り注ぐ。
 無数の光が束になって、
 ほんの少しでも、
 『センエースの愛に応えよう』と、
 必死になって、想いを紡いでいる。

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