悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

9話 薬宮トコの罪。


 9話 薬宮トコの罪。

「てめぇの罪を数えろ。このガキは、てめぇのせいで死ぬ。全部、てめぇのせいだ! 俺を忘れやがって! 俺を! こんだけ……こんだけ頑張って……くそがぁ……っ」

 とことんまで声を荒げて、
 全力の怒りをぶつけるセン。

「罪深い貴様の罪を! 自覚しろぉお! てめぇのせいだ! 全部! 全部! 全部!」

 そんな、センの慟哭を受けて、
 トコは、

「あたしは……」

 涙を流しながら、

「そんなに……わるいことを……したんか……?」

 想いを吐き出した。
 センにぶつけられた理不尽に対し、
 自分の感情をさらけだす。

「親を奪われて、地獄を見て……それでも、一生懸命……毎日……頑張って……化け物と戦って……苦しくても……辛くても……ただ……必死に……世界を守るために……大事な友達を守るために……頑張ってきたのに……あたしは……」

 センほどではない。
 ここまで、すべての地獄を背負い続けてきたセンほどではないが、

 しかし、薬宮トコも、そうとうな地獄を背負っていた。
 自分の奥に、苦しみを抱え込んで、
 それでも、健気に、必死に、
 痛みを伴う毎日を積み重ねてきた。

 お互い、ボロボロと、涙を流しながら、
 ただ、ひたすらに、言葉を交わし合う。

「……あたしが憎いなら……あたしが悪いなら……あたしを殺してくれてええ……ズタズタにしてくれてええから……関係ない子供を殺すとか……やめてくれ……ほんまに辛いから……やめて……」

 ひぐひぐと、鼻水をたらして、泣きじゃくるトコ。
 そんなトコの、弱さが爆発した顔を見て、
 センの中で、感情がまぜこぜになった。

 『憎悪されるべく』、彼女たちに放った『自身の憎悪』は、
 ただの演技などではなく、純粋な黒い塊だった。

 無限の地獄ループの中で、センの中に刻まれた暗い歪み。
 『こんなに頑張っているのに、どうして報われないの?』というブザマ。
 センは聖人ではない。
 聖人ではないのだ。

 ――だが、決して、ただのクソ野郎ではない。
 だから、

「……すぅ……はぁ……」

 センは深呼吸をする。
 鋼の覚悟にハッパをかけて、
 自分の中に、深く潜っていく。

(……俺が……欲しいものは……)

 不思議なもので、とことん落ちると、整理される。
 雑多になっていた感情が、
 この無様さの中で整っていく。
 だから、

(こいつの謝罪じゃない……そんなものはいらない……俺が本当に欲しいのは……)

 気づく。
 自分の本音。

 『無数にある本音』の中で、
 自分が、一番大切にしているもの。

 それだけは、絶対に、何があってもなくしたくないと、
 こころの底から強く、強く、強く、抱いている想い。


 ――愛されたかったの――


 ――それが本音――


 ――けど――


 ――それ以上に――


 ――笑って生きてほしかった――


 ――俺がいない世界でもいいから――


 ――愛して、愛されて――


 ――そうやって、幸せに、生きてほしかったんだ――





「……よく見ろ」





 そこで、センは、トコの目の前に、赤子を突き出して、

「さっきのガキと同じ顔だろう?」

 そう言われて、トコは、赤ん坊の顔をよく見て見る。
 へちゃむくれで、可愛げない顔をしている。

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