悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

102話 田中トウシでは……


 102話 田中トウシでは……

「あ、信じていないな。言っておくけど、仮に、ヨグのオッサンを1とした場合、ボクの全力は86000ぐらいあるんだからね」

「……そうですか……あざーす、おつかれでーす」

 サラっと、そう流してから、
 センは、クルルーと対峙する。

「……さて、それじゃあ、今から殺すから。無駄な抵抗は、出来るだけ控えてくれるとありがたい」

「ナメたことを。死ぬのは貴様だ」

 軽く言葉を交わし合ってから、
 両者は、ヒュンと、姿を消した。

 残像を世界に刻みながら、時空を駆け抜けて、
 互いに、拳をかわしあう。

 無粋な魔法を切り捨てて、
 互いに、全力の肉体言語コミュニケーション。

 拳を交わし合う中で、
 センは、

「こちとら、これまで、ボケニートと厨二迷宮という、鬱陶しいコトこの上ない地獄で、もがきあがき苦しみ続けてきたんだ! イカれた化け物どもと、バカみたいに長い時間戦って殺されて、ついには、トウシにまで頼るはめになって、結果的に、ヨグの分体を殺すまで成長した! その俺がぁ! てめぇみたいな、モブの強化版ごときに、いつまでも負けると思うなよぉおおお!」

 歯をむき出しにして、
 全身全霊の特攻。

 とりま、後先考えない、アホの一撃。
 計算を伴わないバカの一手は、
 時に、とんでもない突破力を発揮する。


「龍閃崩拳!!」


 今のセンに可能な最強の全力をぶつけられたことで、
 クルルーは、

「ぶげはぁっ!!」

 豪快に吐血する。
 白目をむいて、吹っ飛んで、

「っ……が……ぁ……っ」

 そのまま動かなくなった。

 その様を見届けたセンは、
 ニャルに視線を向けて、

「どんなもんじゃい……あほんだらぁ……ナメんなよ」

 そう啖呵を切って見せた。

 そんなセンに、
 ニャルはニコっと、嬉しそうに微笑んで、

「いいねぇ」

 と、親指を立てながら、そう言うと、
 その親指で、中指をはじいて、パチンと音をたてた。

 すると、クルルーの体がスゥっと溶けていって、
 センの中へと納まっていく。

「見事だ、センエース。この偉業は、君以外、誰もなしえない」

「……トウシなら、もっと楽にここまで来られたと思うけどな」

 不愉快そうに、拗ねたように、そう言うセンに、

「いや、無理だね」

「……ぇ」

「田中トウシでは、ここまでくることは出来ない。絶対だ。それだけは、嘘偽りなく、全力で保証しよう」

「……」

「君はすごいよ、センエース」

 その言葉を受けて、
 センは、自分の奥からこみあげてくる何かを感じた。

 一瞬、泣きそうになって、
 けれど、それはあまりに無様だから、
 どうにか、全力で奥歯をかみしめて、


「……何を根拠に……」


 つい、謎の反発精神を見せてしまうセンに、
 ニャルは、ボソっと、小さな声で、

「根拠も何も、事実として、田中トウシはここまでこられなかったんだよねぇ……」

「あん? なんて? いくらなんでも声が小さすぎる。もっと、はきはき喋ってくれ」

「気にする必要はないよ。ふと、宇宙の膨張率について思いをはせただけだから」

 ニャルは、そこで、ニコっと微笑み、

「セン。とにもかくにも君だけだ。君だけが、この先にいける」

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