悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

97話 修正パッチ。


 97話 修正パッチ。

 ――結局のところ、ほんのわずかな時間だった。
 数字にすると、1分を切る神速の死闘。
 どちらかが弱かったわけではない。
 愚鈍な泥試合にはならなかっただけ。
 美しく幕を下ろした。
 それだけの話

「……こんなにも、アッサリと……私を超越してしまうとは……風雅だな」

「強かったよ、虚空の王よ。あんたは間違いなく最強の神だった」

「……くく……」

「なにがおかしい?」

「いや……そのセリフは、まだとっておいた方がいいと思ってな」

「……?」

「しょせん、私は分体に過ぎない。真の本体と比べればゴミ。そう簡単に、私の本体に拝謁できると思うな。本当の私の力を知った時、はじめて、そのセリフを口にしろ」

「……いや、お前が本体だって言ってたじゃねぇか」

「あれは嘘だ」

「お前、ウソばっかりだな」

 ため息を一つはさんでから、

「あのさぁ……マジで、真の本体とやらは、お前を大幅に超えているのか? 決着がつくまでの時間こそ短かったが、実際のところ、けっこう、ギリギリの殺し合いだった。これ以上、強いバージョンに出てこられると、普通に困るんだが……」

「もっと強くなれ、ヒーロー。その先にしか……『答え』は存在しない……」

 最後にそう言い捨てると、
 ヨグの分体は、
 スゥっと、世界に溶けていった。

 その様子を最後まで見届けてから、
 センは、
 天を仰いで、

「……お前らも引き継げたら……色々と楽なんだけど……たぶんできない……だろ?」

 そう尋ねると、
 まず、トウシが、

「ワシらは今回限りの特例。これからワシは、コスモゾーンを経由して、オリジナルの器になる」

 続けて、ソンキーが、

「俺は、シャドーに近いソウルレリーフに過ぎない。戦闘経験は、オリジナルに注がれるだろうが、それ以上でもそれ以下でもない」

「それでいいのか?」

「いいも悪いもない。今の俺はそういう概念。オリジナルのソンキー・ウルギ・アースが強くなるための糧。これは、オリジナルの俺が望んだこと。つまりは、俺自身が背負った業」

「……お前は本当に、脳筋だな……」

 そうつぶやいてから、

「じゃあな、鬱陶しいバカども。オリジナルによろしく」

 ふところから、銀の鍵を取り出すと、


「――俺は、まだ、頑張れる」


 世界に対する滅私奉公宣言をしてから、
 過去に飛んだ。



 ★



 ――初日の朝に戻ったセンは、

「……なにもかも全部、問題なく、引き継がれているな……ようし」

 変に歪んだ部分がないか、
 一通り確かめてから、
 スマホを取り出して、

「……トウシの経験も、俺の中に根付いている……知識も理解もある……今の俺なら、F‐クリエイションを使える!」

 そう意気込みながら、
 F‐クリエイションを起動するセン。

「……あ、ちくしょう……『トウシがいじった部分』に修正パッチが当てられていやがる……クソが……できれば、経験値取得倍率はそのままにしてほしかった……まあ、いい。俺にも、トウシの器が刻まれている。同じ人間であるトウシにできたこと。頑張れば、俺にもできるさ。俺は、やればできる子だ」

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