悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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64話 そう簡単にはいかない。


 64話 そう簡単にはいかない。

(ええなぁ、これ……これだけスペースを多くとれると、何もかもがスムーズに運ぶ。快適、快適ぃ)

 全てを並列に行っていくトウシ。

 情報に対して無双を決め込んでいくスタイル。
 コスモゾーンが、どんどん、丸裸にされていく。

 10万の脳を、遠慮なくフルで酷使した結果、
 ほんの数十分で、

(――よし。表層部分は、だいたい、解析完了)

 ありえない速度で、
 トウシは、コスモゾーンの表層を理解してしまった。
 アカシックレコードの軸を網羅して、
 この世の英知全てに根を張った。

(本当に大事な情報には、だいたい、アホみたいに堅牢なプロテクトがかかっとる……ここからは、そのプロテクトを、どうにかして、はがしていく)

 根気のいる作業だった。
 とにかく手間暇を必要とする。

(コスモゾーンの禁域は、ものすごい複雑な暗号で守られとるな……最低でも5~6個のカギが必要やけど、一個のカギを見つけるだけで、とんでもない手間がかかる……)

 間違いなく世界最高の頭脳を持つ究極天才超人である田中トウシが全力を賭しても、さすがに、コスモゾーンの壁を超えることだけは厳しかった。

(あかんな……もう時間切れ……)

 茜色だった空が、無粋な黒に飲み込まれていく。
 あと1時間もすれば、見事な夜になるだろう。


「……はぁ」


 深いため息をつきながら、
 トウシは、天を仰いだ。
 その表情には、とてつもない疲労が見える。

 トウシは、目線だけで、コンダクターに合図を送る。
 コンダクターはコクっとうなずいてから、

「それでは、本日の実験は以上になります。みなさま、ご苦労様でした。これから、ホテルに案内しますので、係員の指示に従って――」


 ★


 その日の夜、トウシは、時空ヶ丘の仮眠室で眠っていた。
 とにかく必死に体を休めている。
 脳は疲労しなくとも、眼球と首肩腰は疲労する。

 本当なら、自宅で眠りたいところだが、
 アカシックレコードを解析した結果、
 今日の夜に、『ウムル=ラト』というGOOを倒さなければ、
 世界が、面倒なことになってしまう、ということが分かったので、
 仕方なく、いつでも出動できるよう、
 時空ヶ丘に滞在している。

 もちろん、今のトウシは、瞬間移動も使えるのだが、
 高位の次元ロックを張られる可能性も考慮しての行動。

 トウシが休息をとっている間、
 紅院たちは、学校内を警備していた。

 『ウムル』が現れた時に、
 すぐさま、トウシを呼び出せるように準備をした上で、
 ピリピリとした警戒態勢をとっていた。

 しかし、いつまでたってもウムルが召喚されない。

 5時間が経過したところで、

「本当に召喚されるのでしょうか? その気配が、まったくないのですが」

 黒木がそうつぶやいた、
 その時、



「――自動で召喚されるわけではない」



 背後から現れたソンキーが、
 黒木にそう声をかけた。

「休んでいなくていいのかにゃ?」

 そんな茶柱からの問いかけに、

「十分ではないが、あした稼働できる程度の、最低限の休息は確保した。あとは、必要な処理をする。茶柱、エイボンの書は持っているな?」

「もってくるように言われていたからにゃぁ。ほい」

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