悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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79話 禁則事項です。


 79話 禁則事項です。

「ヨグシャドー。これで、条件達成か? それとも、まだ他にも何か?」


 問いかけると、
 それまで、ハンパに沈黙を保っていたヨグシャドーが、

「条件の一部、達成だ」


「……一部ねぇ」

 ため息交じりに、そうつぶやいてから、
 センは、

「それは、つまり……この世界を狙っている侵略者は、あいつらの世界の住人だけじゃなく、他の世界にも存在していて、そいつらが、今後、やってくるから、排除しろ――と、そういう意味か?」

 その具体的な質問に対し、
 ヨグシャドーは、

「……」

 またもや沈黙で返してきた。
 センは、辟易した顔で、

「なんで、急に無口キャラを導入してきた? 意志疎通が不便すぎてダルいから、普通のヨグさんに戻ってくれない?」

「無口キャラを発掘したわけではない。単純な話。この世界において、私は、自由な発言権を有していない」

「……発言権を有していない? またおかしなことを言う。全にして一、一にして全であられるヨグ様を縛れる法などありますまい」

「私はいつだって、運命という糸に操られているだけのマリオネットでしかない」

「夢のない話だねぇ。こっちとしては、金メダリストの実力者には、どーんと構えていてもらいたいところなんだけれど?」

「それが許されるほど、この世界の真理は甘くない。どれだけの力をもっていようと……いや、力をもっていればいるほど、窮屈で退屈。それがこの世界の真理の一つ」

「実に哀しい話だねぇ」


 などとつぶやいてから、
 センは家に帰った。

 家に帰るまでの間、ヒマだったので、
 ヨグシャドーから、どうにか、情報を聞き出そうと、
 いろいろ試してみたセンだったが、
 しかし、

「……」

 驚くほど沈黙を尊ぶヨグシャドー。

 結局、深いところは何も分からないまま、
 センの初日は終わった。


 ★


 翌日は土曜日で、学校は休み。

 センは、『何をすべきなのか、イマイチ不明瞭』という現状を打破すべく、
 『学校の深部』に忍び込むことを決めた。

(現状だと、『この学校が天使養成施設であること』と『昨日のヤツみたいなヤツが、たまに沸いて出てくること』しかわかってねぇ。それだけじゃ、正直、話にならん。せめて、天使の実力の上限と、敵の概要ぐらいは知っておきたい……)

 昨日のカスと同等かそれ以下しかいない、
 というのであれば、問題は皆無だが、

(しかし、俺のこれまでの人生を鑑みた場合、そんなヌルゲーで終わる可能性は皆無……どうせ、いるはずだ。今の俺でも相手にならない、とんでもない化け物が……そして、どうせ、俺は、そいつの処理を押し付けられる……)

 普通の人間なら、『重度の被害妄想』と一蹴されるような思考だが、
 しかし、センの場合、これまでがこれまで過ぎたため、
 たんなる疑心暗鬼とも言い切れない。



(……この時計塔……確実に、ここは、重要施設だろ……『そうじゃなかったらおかしい』というレベルの雰囲気に包まれ過ぎている)



 仙草学園敷地内のちょうど中心部に建っている巨大な時計塔。

 一般生徒はもちろん、教師ですら、
 立ち入りが許されない聖域。

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