悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!
65話 ただの誤解。
65話 ただの誤解。
「……エクセレント」
誰にも聞こえないほど、小さな声で、
ヨグシャドーは、センを称賛する。
センには届いていないが、
ヨグシャドーの耳には、世界の喝采が聞こえた気がした。
センには聞こえない拍手が世界を包み込んでいる。
――センは、
「お前が小三の時に書いていた自作小説の主人公の名前は――」
当たり前のように、
今日という日と向き合っていく。
4999回目を、自分の中心に積んでいく。
地獄以上に苦しい『神話生物たちとの死闘』を経て、
面倒なフラグをたてながら、
寝る間を惜しんでアイテムを探索して、
そして、センは、また、
「俺は、まだ……がんばれる」
過去の自分に記憶を飛ばすべく、
銀の鍵を使った。
★
センエースの狂気を、
『彼ら』は、
『ここではないどこか』で見ていた。
破格の英傑が集うこの特別領域の中でも、
特に優れた魂魄を持つ者の一人である『マザコン熾天使』が、
ボソっと、
「俺なら折れている」
本音を口にした。
「というか、たいていのヤツは折れているはずだ。これほどまでの地獄を、5000回も繰り返せるというのは、ありえない根性。いや、もはや、根性という枠で測ってはいけないレベル。ただの異常」
そんな彼の呟きに対し、
隣にいる『聖なる厨二死神』が、
「ボクちゃんの場合、5000どころか、最初の10周ぐらいでアウトだったろうねっ♪ なんせ、根性死んでるからねっ♪」
そんな彼の呟きに対し、
後ろに座っている『煽り厨の殺神』が、
「……10周たえるだけでもすごいと思うけどねぇ。俺の場合、1周目の初日を乗り越えることも不可能だろうし。……というか、君の場合、なんだかんだ言いながら、5000ぐらいは耐えそうだけど」
と、そこで、マザコン熾天使が、
煽り殺神に対し、
「とかなんとか言いながら、あんたは、1万ぐらいは余裕なんだろ?」
「前から思っていたけど、この人、あれだよねっ♪ 『勉強してないわぁ』とか言いながら、テストで満点とるタイプだねっ♪」
「……いや、あのね……俺、昔から、異常な過剰評価というか、間違った査定を受け続けてきて、もう、色々と諦めている部分もあるんだけど……でも、これだけは言わせて。俺、一般人なのよ。君らみたいな『特殊な超人っぷり』は持ち合わせていないんだよ。ものすごく、平均的な感性の持ち主なのよ。モブなの。基本。俺みたいなものは。わかる?」
「気づけよ、あんた、センエースと同じこと言ってんぞ」
「いやいやいやいや! 違う、違う、違う! センエースは一般人を名乗る変態! 俺は、誤解を受けているだけの凡庸な一般人! センエースと俺の間には、明確な差があるから! 本当にやめて! センエースと同列だけは、マジでやめて! 本当に違うから!」
「天然は自分のことを天然だと認めない理論だねっ♪」
「だからぁ! ああ、もう!」
頭を抱えて、歴戦の苦悩を表に出しつくす煽り厨。
そんな彼を尻目に、
マザコン熾天使が、
「まあ、それはそうと……」
「――『それはそう』で流さないでほしいけれど……」
という煽り厨の文句を聞き流し、
「ようやく5000周目のはじまり。ここから、また一段と、過酷になっていくわけだが……はたして、我らのセンさんは耐えられるかね」
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