悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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22話 殺してくれ。


 22話 殺してくれ。


 『ループ地獄はもう終わったのだろう』なんて、
 意識の底では、そんなことを思っていたりもした。

 だから、この不意打ちはきいた。
 体の奥底にズシンと響いた。

「うぇっ……おぉえぇっ……」

 こみあげてきた絶望。
 ひねり出されるようにして、
 センは吐しゃ物をまき散らす。

 どうにか、ベッドから降りて、
 フラつく足を支えて、
 外の様子を確認すると、

 当たり前のように、全人類が死滅していた。
 世界は終わっていた。

「……ぁあ……ぁああ……」

 必死になって築き上げてきた理想の世界が、
 一夜で全て消え去ってしまった。

 おそろしいほどあっけない最後だった。

「ぁああ……ぅぁあああ……いぃいい」

 その場で、へたりこみ、
 頭を抱えて、ただただ、無様に泣きじゃくるセン。


 ――そんなセンに、
 図虚空の中に潜むヨグシャドーが語り掛けてくる。

「目を背けるな、センエース。正しく見届けろ。これが、貴様の現実だ、センエース」

 言葉を投げかけられて、センは、

「……うぅう……ぁあ」

 数秒、泣き続けたが、

「……っ……うっ……」

 むりやり、涙を押し殺すと、
 天を睨みながら、

「……こっ……」

 懇願するように、

「……殺してくれ……」

 と、命の終焉を依頼する。

「……俺は、結局……あいつらと、関係を結べなかった……これから、お前の本体が出てくるんだろう……? お前の本体なら……バカみたいに強くなりすぎた今の俺でも……余裕で殺せるだろう? ……殺してくれ……頼むから……もうイヤなんだ……もう……これ以上は……」

 枯れない涙で溺れるセンに、
 ヨグシャドーは、

「甘ったれるな。なぜ、いちいち、私の手をわずらわせる? 死にたければ、自分で死ね」

「……力が入らないんだ……動けないんだ……だから……頼む……」

「言っておくが、今の貴様が死ねば、ぜんぶ終わる。貴様だけの問題ではない。すべてが終わる。運命は、貴様に未来を託した。貴様が折れたら全部終わりだ」

「……」

「あと、死にたい詐欺のメンヘラ行為で私の同情をひこうとしても無駄だ。本当に死にたいなら、舌を噛み切って窒息すればすむ話」

「……力が入らない……顎にも……」

「嘘をつくな、バカが。だったら喋れるか、カスが。貴様に死ぬ気などない」

「……仮に……俺の『死にたい』という願望が嘘だったとしても……結果は何も変わらない。今から……お前の本体が召喚される……俺は死ぬ……この20年で、俺は、ずいぶんと強くなったが……アウターゴッドの王に勝てるとは思えない」

「条件を満たせなければ、私の本体が召喚されると言ったな? あれは嘘だ」

「……あ?」

「童貞の相手をするほどヒマではない。私の本体をナメるな」

「……」

「ここらで、今回の『銀の鍵のリミット』を教えてやる。今から10分以内だ。10分以内に飛ばなければ、二度と、過去に記憶を飛ばすことはできない。世界を取り戻す方法を完全に失う」

「……」

「どうするかは貴様の自由だ。いつだってそう。最後に決めるのは貴様自身。自由に決めろ」


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