悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

14話 定まった人類の方向性。


 14話 定まった人類の方向性。

「センエース……貴様に勝つために……これだけ準備を整えてきた……それでも勝てないのは……なぜだ……」

「俺が積んできたモノが、お前の準備を超えていた。疑問を抱くまでもない話。小学生の算数のドリルよりもシンプルな理論だ」

 たんたんと話すセン。
 そんな彼に、イブは、

「貴様は……異常だ……」

 最後にそう言い残して目を閉じた。
 観念したイブを、
 センは、図虚空で喰らい尽くす。

 その瞬間、
 世界中のまぶたの裏から、
 センとイブの姿が消えた。

 もちろん、苦痛も綺麗サッパリ消えている。
 全人類が、理解する。

 自分たちは救われた。
 この星に存在するすべての人間が、
 センエースに救われた。


 ――その理解に届くと同時、
 人類の感情は、一つにまとまった。

 完全なる一つではない。
 そんな概念は存在しないから。

 しかし、方向性が一つに定まることはありえる。

 『センエースに対する畏敬』

 感謝すべき人、
 おそろしい人、
 などなど、ベクトル的には、色々と思うところはあるだろうが、
 しかし、心に生まれた『畏敬の念』だけは共通していた。

 この世の誰もが、
 『センエース』という概念の全部を、おそれうやまう。

 『人類全員が、束になってかかっても敵わない化け物』

 その化け物が、

 『信じられないほどの高潔さでもって、自分達を守ってくれる』

 という『理解』に届く。
 その理解は、『深い安心感』に直結する。
 これまで感じたことのない安らぎを感じた。

 胸の中に、『支え』ができた気がした。
 これまでは、『一人で生きてきた』と、みなが、ずっと思っていた。

 家族や友人など、他者とのかかわりはあるものの、
 しかし、結局のところ『人間は一人だ』と思ってきた。

 それは事実であり、その事実は、今も変わりないのだけれど、
 しかし、彼・彼女たちは思う。

 ――自分は一人ではなくなった。

 目を閉じれば、心の中にヒーローがいる。
 すでに、イブの魔法は消えているので、
 まぶたの裏に、明確な映像として映し出されることはないけれど、
 心には焼き付いている。

 ボロボロになりながら、
 自分たちの苦痛と絶望をすべて背負って、
 必死に、健気に、献身的に、
 全身全霊で救いの手を差し伸べてくれたヒーローの雄姿。


 胸に抱いた心の『支え』は、
 今日を頑張りぬく理由になった。
 明日と向き合う動機になりえた。

 不安定だった人類は、今日、この時をもって、
 絶対的な精神的支柱を得た。


 人類の明日は、おどろくほど美しく輝いていた。





 ★




 ――祭りになった。

 公式メディアも、もちろん盛大に騒いだが、
 ネットの世界が爆発的なお祭り騒ぎの様相を呈する。

 『センエースがガチで人類の王様だった件』

 『奇跡を中心とした話術』で民衆を扇動するワケでも、
 『悟ったような真理』で死後の救いを説くわけでもない。

 純粋な『肉体言語』で人類を救い散らかしたヒーロー。

 無教養でも一発で分かるその明快さが、
 やはり、センエース教の一番の醍醐味だと言えよう。

 もはや、センエースは完全な教祖だった。
 もちろん、中には、センエースのことを『対エイリアン用の最終決戦兵器』としてしか見ない者も、いないことはないが、しかし、大半の者は、センエースのことを神格化させて、崇め、奉るようになった。


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