悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!
80話 ここには俺がいる。だから、何も心配しなくていい。
80話 ここには俺がいる。だから、何も心配しなくていい。
「お前をかばったんじゃない……回避しようとしたら、逆にあたっただけのこと……もうお気づきかもしれんが、俺は、まあまあのウッカリ屋さんなんだ」
「そ、その奇妙な嘘をつくことに、いったい、なんの意味がある?!」
「……意味なんかねぇよ」
そう言いながら、センはグっと顎をあげて、
宙に浮かんでいる三体のアウターゴッドを見上げながら、
「意味なんかねぇ……誰かを守ることも……救いを求める声に応えたいと願う気持ちも……ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ……意味なんかねぇんだよ、きっと……」
自分の中の哲学が膨れ上がっていく。
『そんな妙な気分になること』も、まあ、たまにはある。
「……『意味があるかどうか』はどうでもいい……そうじゃねぇ……そうじゃねぇんだよ……」
朦朧とした意識の中で、
センは、
「俺は、ただ……俺のやりたいように……『俺が望む自由』をワガママに執行するだけだ……」
ギンッッと、
これまでよりも、一層強く、
その瞳に迫力を込めて、
「黙って見ていろ……そうすれば……」
そう言って、自分の背中を見せつける。
大きな背中だった。
「あとは何とかしてやるから……全部どうにかしてやるから……」
中肉中背の平均的ボディスタイルだが、
しかし、今のゾーヤにとって、センの背中は、
この世の何よりも大きく見えた。
「――今、ここには、俺がいる。だから、何も心配しなくていい」
絶望の中で、重荷を背負い、
それでも、まっすぐ立って、
涼やかに凛と前を見る英雄。
そんな背中を、ゾーヤは、息を呑んで、ただ見つめる。
この上なく尊い英雄の背中を、心奪われた目で見つめる。
センに、その目を向けているのはゾーヤだけではない。
この場にいる人間全員が、
センの大きな背中を見つめていた。
ここにアホはいない。
だから一瞬で理解する。
『命の王がここにいる』という理解。
この極限状態で、しかし、
300人委員会の重鎮たちは、
強い『安心感』の中に在った。
誰もが、幼子のように、
父を見つめるように、
英雄の背中を見つめていた。
多くの重たい視線を背中に背負い立つセン。
そんなセンに、
ギは、マヌケを見る目で、
「ボロボロだな。ムシの息だ」
見たままの事実を口にした。
言葉にすることで、事実を確定させる。
その必要があったかと言えば否。
今、重要なのは、必要があるかどうかではない。
ギの発言に対し、
センは、小さな角度で頷いて、
「ああ、すげぇ痛ぇよ。目もかすんでいる。足もふらつく」
あえて、軽くフラついてみせるセン。
おどけているのではない。
これも、また、事実を確定させているだけ。
「――『ヤイの異次元砲をまともにくらって生きている人間がいる』というのは、本当に驚きの事実だが……まあ、しかし、『ヤイの異次元砲をくらってピンピンしている』という驚きまではなかった。貴様は普通に死にかけている。もはや、貴様に未来はない。そこまで損傷してしまえば、我ら三体を処理しきることは不可能」
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
70810
-
-
337
-
-
147
-
-
3087
-
-
140
-
-
4112
-
-
0
-
-
107
-
-
63
コメント