悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

45話 新しい領域。


 45話 新しい領域。

「命の限界まで、よく頑張った。貴様は、『人に許された最終地点』にまでたどり着いた。それは、他の誰にもできないこと。貴様だけが成した偉業。存分に誇るがいい。貴様は、間違いなく人の王だ」

 マイノグーラは、
 まっすぐに、センを賞賛してから、

「王として生まれ、王としての誇りを胸に抱き、王として気高く高潔に生き、王としての矜持(きょうじ)を保ったまま、王として死ぬ。下等種に許された幸福の中でそれ以上は存在しない。貴様ほど、幸福で幸運な人間は他にない。その喜びに打ち震えながら、安らかに死ぬがいい」

 そう言いながら、
 マイノグーラは、
 出力を上げて、
 センの懐に飛び込んできた。

 すさまじいエネルギーを感じた。
 そのエネルギーの余波に触れているだけで、全身が蒸発しそう。

 そんな中、
 センは、

「これが……壁か……」

 目の前にある壁を認知した。
 物理的な実態は存在しないが、
 しかし、ハッキリとした質量を感じた。

 不思議な感覚だった。
 おそろしく圧縮された時間の底で、
 センは、『自分の道を阻む壁』と向き合う。


「なぜだろう。この壁……見覚えがある……俺は、この壁を知っている」


 意識の中で、ソっと触れてみた。
 ひんやりと冷たくて、少しザラついている。
 もちろん、錯覚だったが、
 しかし、決して無価値な妄想ではない。

 質量を伴う錯覚は、
 センの中で、確かに存在している。

「幾度となく……俺は、この壁と向き合ってきた……」

 『記憶の海』に石が投げ込まれた。
 ポチャンと音をたてて、水面に無数の円を広げる。

 広がって、溶けて、混ざって、
 そうやって、自由になっていく命の輪。

「俺は、この壁を何度も破ってきた……そんな気がする……具体的な回数は分からないが……とにかく、たくさん……俺は、この壁を、超えてきたような……そんな気がする……謎のデジャブ……」

 『壊してきた壁の数』は、
 そのまま、センエースを支える器となって、魂の深部に刻まれる。

 それだけは、どれだけ奪い取ろうとしても無意味。
 刻み込まれた誇りは、中心の奥で、弾けて混ざる。

 濁って、揺らいで、またたいて、
 そうやって、命の輪郭は形成される。

 その強度は、ダイアモンドが裸足で逃げ出す硬さで、
 どこの何をもってきたとしても決して砕くことはできない。


「……知っている……分かるぞ……『お前』の殺し方……」


 どんなに厚くても、
 どんなに硬くても、
 『壊せない壁はない』と知っている。

 どうすれば壊せるか、
 ヒーローは知っている。

 誰にでも出来ることではない。
 かじりついてきた自分だからこそできる暴挙。


「見える……見えるぞ……俺の『先』が……」


 必死になって積み重ねてきたものが、
 また、一つ、実ろうとしている。

 折れることなく、必死になって、
 地獄という地獄を端から積んできた男の器に、
 また、一つ、命の水が注がれる。






「――真・究極超神化プラチナム――」





 たどり着いたのは、
 パチモンの最果て。

 プラチナムの向こう側に至ったセンは、

「――閃拳――」

 心を込めて『必死になって磨き上げてきた拳』を、
 外なる神に向かって放つ。



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