悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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69話 茶柱の方程式。


 69話 茶柱の方程式。

「あんた、センが逃げたら自殺するいうてなかったか? センは逃げたぞ! はよ、死なんかい!」

「残念でしたーっ、あそこの高位GOO二体が睨みをきかせているので、自殺できませーん、はい、論破ぁ! にゃはは!」

 騒いでいる二人を尻目に、
 黒木が、ボソっと、

「結局、彼の正体については、何一つ、わかりませんでしたね……」

 タメ息をひとつはさんでから、

「というか、ミレーさんも、必死に、追及してくださいよ。あなた、中盤以降、だんまりを決め込みすぎですよ」

「ちょこちょこ喋っていたけど、あんたらが、グイグイと前に出すぎているから、かき消されてしまっただけよ。あんたら、もう少し、自重してくれる? 言っておくけど、私って、一般人の中に混じれば、かなりトリッキーな存在として、何もしなくとも浮いてしまうレベルなのに、あんたらと一緒にいたら、『うわっ……私のキャラスペック、モブすぎ……』って相対的自己矛盾に陥ってヘコむんだけど」

 渋い顔で、そんなことを言う紅院に、
 茶柱が、憐れな子羊を見る目で、

「大丈夫だよ、紅院さん。あなただって、そう捨てたものじゃないわ。確かに、私と比べたら、容姿もルックスも顔面も、まるでゴキブリの屁みたいなものだけど、でも、うん。人間は……顔じゃないから、元気だして、ファイト」

 静かなトーンで、煽り散らかしていく。
 紅院は、普通にブチギレ顔で、

「……殺すぞ」

 本気のガチギレを向けられて、
 茶柱は、

「応援してあげただけなのに、そんなにキレてくるだにゃんて……酷いにゃ! そんなミレーてぃんには、この言葉を贈らせてもらうにゃ。――『立てばメンヘラ、座れば阿修羅、歩く姿は鬼女の果て』――」

「……すごいわね。あまりにキレすぎて、逆に冷静になってきたわ」

「ふふん! それが狙いにゃ! ツミカさんの行動は、いつだって、計算されつくされた前衛アートなのにゃ!」

「もしかしたら、あるていどは計算しとるんかもしれんけど、基本的に、式も答えも間違っとるんよなぁ」

「なのに、時たま、使っている公式だけは正解だったりするので、本当に厄介な人なんですよねぇ」

 ケラケラと笑っている茶柱と、
 それに辟易している他の美少女たち。

 そして、そんな二人の護衛となった高位GOO二体。

 すでに、だいぶカオスな状況だが、
 しかし、カオスな状況は、ここからさらに加速していく。


 ★


 瞬間移動で、あの場から逃げ出し、
 自宅の自室に戻ってきたセンは、

「クティーラとガタノトーアは、そこそこ強いから、この先、アウターゴッドが沸かない限り、時間稼ぎぐらいはできるだろう。これで、とりあえず、急場はしのげる……あいつらの死がリセットされないのは、今回のループだけ……今回だけ、どうにか、守り切れば、また、いつものループに戻る……そうだよな、ヨグシャドー」

 呼びかけると、
 図虚空の中にいるヨグシャドーは、軽く脈動しながら、

「たぶんな」

 と、フワフワした言葉を投げかけてきた。

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