悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!
64話 GOOだって、無駄に悩む。
64話 GOOだって、無駄に悩む。
「――『可能性だけ』でモノを言うのであれば『誰にだって芽はある』……と思っているかもしれがないが、しかし、実際のところはそうじゃねぇ。もちろん、俯瞰で見れば、そうかもしれないんだが、しかし、ピンポイントで見た場合、やはり、ちょっと違うんだ」
そう言ってから、センは、クティーラの目をジっと見つめて、
「お前は、『目覚めるチャンス』を得た。それを、『どう扱うか』はてめぇで決めろ。お前に『道を選ぶ権利』なんざないんだが、『覚悟を決めるか決めないか』くらいは自分で選べる。つぅか、そこだけは、お前の主人である俺でも関与できねぇ」
センの言葉を受けて、
クティーラは、数秒、考えてみた。
悩んでいるのではない。
ただ、考えている。
この状況では、確かに、選択肢など存在しない。
もはや、クティーラは、センの眷属になってしまった。
今後は、センの『力の一部』として生きるしかない。
「……あなたに食らいついていったら……あたしも……あなたみたいになれるのかな?」
そんな質問を投げかけるクティーラ。
センは、その問いかけを、何度か咀嚼してから、
ゴクンと飲み込み、
「俺みたいにはならない方がいい。できたら、もっとマシな命を目指してくれ。そうじゃないと、たぶん、使い物にならない。いや、まったく使い物にならないことはないんだろうが……でも、普通に、めんどくさいと思うから、違う目標をたててください。お願いします」
チョケた発言でお茶を濁すセン。
そんなセンを横目に、
クティーラは、天を仰ぐ。
色々と、何かを考えている顔。
これまでのこと、これからのこと。
そんなクティーラを横目に、
ガタノトーアが、
「災難だったな」
そう声をかけた。
本音だった。
ガタノトーアは、センに捕まったことを、
不幸だとしかとらえていない。
しかし、クティーラは少し違った。
センエースの器に触れた者の反応は、
基本的に二通り。
ドン引くか、
感銘を受けるか。
クティーラは、
どちらかと言えば……
「災難……いや、むしろ……僥倖だったかもしれない……」
後者よりだった。
ガッツリと、完全に後者まっしぐらかといえば、
それもまた違うのだが、
しかし、ガタノトーアの方向性とは明らかに異なる。
クティーラは、センエースの魂魄に感銘を受けた。
その凄まじい道程に、畏怖さえ覚えた。
だから、
「神様になれれば、『生まれた瞬間から、ずっと抱き続けてきた謎の焦燥』が解消されるような気がした。けど、本当は分かっていた。アウターゴッドになったところで、この胸のザワつきは、決してなくなりやしないってこと」
クティーラは、非常に不安定な精神を持つ。
その不安定さは、言葉で簡単に表現できるものではない。
あえていうなら、命が持つ根源的な不安定さ。
自分に対する自信のなさ。
自分の存在価値に対する疑問。
なぜ、生まれてきたのか。
なぜ、存在するのか。
仮に、理由があったとして、
自分という個体である必要はあったのか。
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