悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

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84話 男……?


 84話 男……?

「カンツ……俺はお前を認めたね」

 センは、意識のギアを、もう一つ上げていく。

「てめぇの強さの『根源』は、その『笑える特質』なんかじゃねぇ。そんなものなくたって、お前は十分に強いよ」

 ボコボコにされていながら、
 しかし、カンツの目に絶望の色はなかった。

 どこまでも、まっすぐな目で、センを睨みつけている。
 驚くほど澄んだ目。
 吸い込まれそうなほどに透き通っている。
 おそろしいほどに美しい瞳。

「俺にはわかる。てめぇの重さ。わかるからこそ――」

 だから、センは、

「――閃拳――」

 丁寧な一撃を放った。

 魂魄を乗せた一撃。
 鋭くて、速い。
 圧倒的な純粋無垢。
 きわめてシンプルだが、だからこそ、最強の一撃。

 オメガセンエースの最も厄介なところ。
 それは、『深部』にセンエースを抱えているという点。

 『ただのクソ野郎』なら、ゼノリカの敵ではない。
 『ただのクソ野郎』にカンツが負けることはない。

 しかし、オメガセンは、
 『中心』が、『英雄』で構築されているクソ野郎だから、
 ゼノリカとは、相性が最悪。

 努力を積んでいて、核の根性だけはエゲつないクソ野郎。
 そんなクソ野郎の対策マニュアルなど、さすがのゼノリカにも存在しない。
 ゼノリカに存在しないというより、どこにも存在しない。
 あまりにも厄介が過ぎる難敵。
 それが、今のセンエース。

 ――だから、結果、



「……が……はっ……」



 吐血しながら、
 カンツは、
 奥歯をかみしめながら、

「……神の拳を……騙るか……」

 フラつき、よろめきながら、

「……薄っぺらなカスのくせに……どうして……神を騙った拳だけ……こんなに重い……」

 まったく理解が出来ないという顔で、

「……無念……」

 心底の奥から湧き上がるくやしさをこぼしながら、
 カンツはその場に倒れこんだ。

 カンツの気絶を確認することなく、
 センは、


「――神速閃拳――」


 異次元の速度で、

「ぐっ……!」
「ごほっ……!」


 アストロギアとアクバートの鳩尾に拳を叩き込む。
 倒れこむ二人を尻目に、
 センは、

「……ゼノリカ……想像していたよりも重量感がある……が、しかし、正直な話、『数値』で言うと、かなり微妙だな。質量は十分でも、数値がこの程度だと、俺の器は満たせねぇ……こうなったら、五聖とか、三至とかいう上位連中の『養分力』に期待するしかないな」

 などとつぶやいていると、
 そこで、

「……ん?」

 背後に気配を感じて、
 センは、その気配の主に視線を向けた。

 そこには、長身で細身の優男がいた。
 一見すると、女性に見えなくもないほど線が細い。
 柔和な表情で、雰囲気からも暖かさを感じる。
 言葉を交わさなくとも、その雰囲気だけで、
 『一流の存在である』と理解できた。


「……お前……そうとう強いな……その存在感、アストロギアに匹敵している」


 センはそうつぶやいてから、

「ちなみに、お前は誰だ?」

 そう声をかけると、
 その『男』は、堂々と胸を張って、


「栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席、序列4位、ジャクリナ・ジストメナ」


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