悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

18話 この絶望は、あちらのお客様からです。

 18話 この絶望は、あちらのお客様からです。

「そのナイフは『精神負荷と引き換えに魔力量が上がる』という性質を持つ。基本的には、どんな時でも『俺に流れる』ようにしているが、その辺の調節は自由自在」

 センは、ゾーヤに対して、丁寧に、図虚空の説明をしていく。

「ちなみに、今は、俺にベクトルを向けている。精神的負荷というのが、どういうものなのか、知りたいなら、教えてやるけど?」

「……」

 そこで、ゾーヤは、ナバイアに視線を向ける。
 ナバイアは、空軍将校経験者の屈強な白人男性で、
 彼も、ゾーヤほどじゃないか、根性はかなりキマっている。

 この状況で行動を起こせるだけの根性があり、
 肉体的にも、精神的にも優れた元超位軍人。

 そんな彼が、今、白目をむき、泡を吹いてぶっ倒れている。

「……調節が自由自在だというのが本当なら、その精神的負荷というのを1パーセントぐらいに抑えることも可能かしら?」

「ああ、出来るぞ」

「では、それで、経験させてもらっていい?」

「了解。――図虚空(マスター)、聞いていただろ? 『1パーセントの精神負荷』を、そちらのオールドレディに」

 命令に従い、
 図虚空は、ゾーヤに魔力を流し込む。
 それと同時、ゾーヤの全身を、重たい絶望が包み込む。

「うううっ……っっ!!!」

 電気ショックでもくらったみたいに、
 イスから転げ落ちながら、
 図虚空を投げ捨てるゾーヤ。

「はぁ、はぁ、はぁ……っっ」

 真っ青な顔で、胸をかきむしりながら、
 冷や汗ダラダラの顔で、

「……今ので……1パーセント……? 本当に……?」

「ああ。ちなみに言っておくと、『ウムルなんとか』ってGOOをSATUGAIした時は、230%まで引き上げた。そのぐらいしないと勝てなかった。いやぁ、あいつは本当に強かったよ」

「……」


 いろいろあった結果、
 この場にいる全員が、
 『センエース』の異常性に気づきだす。

 ゾーヤは、心の中で、

(久剣一那を投げ飛ばしてみせた技量……異次元レベルの精神力……そして、なにより、言葉の端々から伝わってくる、病的とも思える高潔さ……なるほど……傅(かしず)きたくなる……この少年は……間違いなく王の器……『命』の頂点に立つべき存在)

 理解に届くと、
 ゾーヤは、紅院正義に視線を向けた。

 ゾーヤの視線に気づくと、正義は、ニィと、
 意味深に微笑んでから、
 その視線をセンに向けて、



「――我々は、か弱い存在です」



 それまでとは違い、
 際立って礼儀正しく、
 謹んで、

「残念ながら『合理と向き合うだけの器量』は持ち合わせていない、ひどく不完全な命。野放しのままだと、我々は、今後も、過ちを犯し続けるでしょう」

 そう言いながら、
 センの前で、片膝をついて、
 うやうやしく、頭を垂れて、

「正しい指導者が必要です。……どうか、我々の王として、我々を管理していただきたい」

 などと、言い出した紅院正義に対し、
 センは、

「……」

 『やられた』という顔で、言葉につまる。

 そんなセンに、正義(まさよし)は、

「我々を導けるのは、あなたしかいない。他の者では絶対に不可能です」

 たたみかけていく。
 そんな正義の迫力に、センは、『逃がさない』という強い気概を感じた。


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