悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

62話 トロッコ問題ですらない。

62話 トロッコ問題ですらない。

「貴様らを殺したあとは、テキトーに、退散させてもらうことにしよう」

「ふむ……」

「盟約の内容を、もう少し、具体的にしようか。あのカスが、貴様を殺すと、あのカスは助かる。助かるのは、あのカスだけだ。他のヤツは全員殺す。……この盟約を拒むなら、貴様ら全員を殺す。これは、最後の譲歩。交渉には一切応じない」

そこで、トコは数秒考えてから、

「……整理してもろたら、めっちゃ簡単な問題になったな。……当たり前の話やけど、全員死ぬよか、そっちの方がマシ……」

そうつぶやくと、

「よし。閃。あたしを殺せ」

「……おいおい」

「いや、わかるで。あんたの言いたいことも。けど、このままやったら、全員死ぬ。全員死ぬか、一人は生き残るか。その二択を前にして、悩む必要は皆無やろ。こんなもん、トロッコ問題にもなってへん」

一人を殺して五人を助けるか、
それとも、
五人を殺して一人を助けるか。

この二択ならば、倫理的な意味で『悩む理由』は存在するが、

『全員死ぬ』か、
『一人は生き残る』か、
という二択のどこに悩む理由があろうか。

「ロイガーの気が変わらんうちに、さっさとあたしを殺せ。そんで、あたしらが死んだことを300人委員会に連絡してくれ」

覚悟を示してみせたトコを横目に、
ロイガーが、



「ここまで、アッサリと死を享受されると、さすがに興醒めだな」



などと、面倒なことを言い出す。

「ほれ、みてみぃ! あんたが、さっさと、あたしを殺さんから、また、アホが余計なことを口走りそうやで!」

そんなトコの悲鳴をシカトして、
ロイガーは、

「……ほぼ一択という選択内容に問題があった。というわけで、薬宮トコ……貴様にも条件を出す。あのカスをその手で殺せ。そうすれば、70%の確率で、貴様を助けてやる」

「……」

「確率は遵守すると誓う。70%を引けば、必ず助けてやる。……あのカスが貴様を殺した場合、あのカスは確実に助かる。貴様が、あのカスを殺した場合、70%の確率で、貴様は助かる。さあ、どっちにする?」

その質問を受けて、

「前者に決まっとるやろ、アホか、お前」

と、トコは即答した。
それには、センが驚いて、

「えぇ……いや、おいおい……お前、頭どうなってんだ?」

そんなセンに対し、
トコは、シレっと、

「あたし、たまに、ミレーやツミカと、ポ〇モン対戦するんやけどなぁ。ここぞという場面の『きあいだま(命中70%)』が当たったためし無いねん」

「……」

「というわけで、あとのことはよろしく」

そう言って、両手を広げるトコ。
『さっさと殺せ』と体で表現している。

そんな彼女の狂気に、
センはゾクっとした。

決して『魅力を感じた』という意味ではない。
純粋な『寒気』の方。
『SAN値が下がった』と言ってもいい。

奇妙な感覚に包まれる。
目の前にいる女に対して、
どう表現すればいいのか一ミリもわからない感情を抱いた。

          

「悪役令嬢をすくい散らかす、日本の高校生に転生した最強神!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く