オウルシティと傷無し
story:11 お望みどおりに
一体全体どうやって情報を仕入れたのか、想は親父の電話番号を知っていた。
「うちは人材派遣会社ですよ? 一度でも登録された名前と電話番号などの個人情報を3年間は保存しておく義務があるんです」
「その個人情報を俺に教えたら、職権乱用にならねえのか」
「なりますよ。ですから善良なる一般社員の方のものは絶対に教えません」
俺は、番号は親戚に教えてもらったなどと適当なことを言って、親父を呼び出した。最初は来るのを拒んでいたが、遺産相続の件で金を渡せると言うとあっさり来ることになった。
深夜。人里離れた、もう誰も住んでない民家の前で待っていた。
近づいて来た父親は、俺の持っていたアタッシェケースを見て、眼を輝かせた。視線を下に誘導して、油断しきったその首筋に、拳銃のグリップで思い切り一撃を見舞った。
気絶した親父を家の庭のガレージに引きずり込み、シャッターをして明かりを点けた。明かりとは言っても、誰も住んでいない家だ。電気は通っていない。だからアウトドア用のランプを使った。
ガレージの壁際にある柱の両方から縄を引っ張り、奴の手に括り付けた。両腕を広げた状態でうつ伏せの形。簡単には身動きを取れないはずだ。
しばらくするとうめき声が聞こえた。
「目が覚めたか」
「う、ここは。いったい何が……? ん? う、動けねぇ。なんだこれは! 助けてくれ、然壽!」
俺は名前を呼ばれたことに腹が立ち、思い切り横腹を蹴った。
ここなら俺の足が痛まず、こいつの内臓だけを傷付けられるという直感があった。まあ、爪先に鉄板が入った安全靴だから、こっちの足が傷付くってことはそうそう無いが。
「うぐぅう! な、なにをするんだ!」
反抗する態度にも腹が立つ。肩を思い切り踏む。
「あ、あぎぃぃいい! ああ! す、すまん! よくわからんが、怒っているんだな? 謝るから、許してくれ! たたた、た、すけてくれ!」
俺は更に体重を掛けながら唾を吐いた。
「な、なんてことするんだ! 親に向かって! あ、ぐ! 痛い!」
「親は子供から金なんざ盗らねえんだよ」
ミシミシと肩から音が鳴る。このまま踏み続ければ肩の骨が折れる、そんな予感がしている。
「痛い痛い痛い痛い!! 解った! すまなかった! 金は返す!」
「その金があったら姉貴が生き返るか?」
「いや、それは」
「お前が追い詰めたんだぞ。姉貴を。俺の学費を稼いでやるって一生懸命働いて、そんな優しい姉貴に付け込みやがって」
「すまなかった!」
謝ったことにさえもう、腹が立って仕方がなかった。
アタッシェケースから取り出したコルトガバメントの銃口を向ける。
「へ?」
「死にたいか?」
「ししししし、死にたくない!」
——パンッ!
乾いた音共に銃口から放たれた弾丸は、男の人差し指を吹き飛ばしていた。手からは白い骨が見えている。血は、まだ出てない。
「あっつうぅうう! ああああ! いつうぅあああ!」
「お望みどおりにしたぞ」
「う、撃たないで、くれ……!」
手の今まで指があった部分を思い切り踏みつけた。
「ぎゃあああ! ふむなあああ!」
汚い声を叫ぶために開かれた口に、思い切りトゥーキックを刺し込む。鉄板入りの爪先だ。
ミシミシミシミシと、何本も歯が折れる音がした。
「ため口をやめろ。ゴミが」
もう一度、二度、三度、目の前のゴミの口に足を突っ込む。白や銀の欠片が、その頭の周りに転がっていたが、ゴミが散らかった程度にしか思えなかった。
「ほうひまひぇん、はふへへえええ」
「何言ってるかわかんねえよ」
——パンパンパンパンパンッ!
銃声がガレージの中にけたたましく響く。
無事だった方の手の指を全部撃ち落とした。
マガジンリリースボタンを押して、空になったマガジンを引き抜き、新たな弾丸を装填する。
「聞くが、お前は俺の親か?」
こくこくと頷く。
——パンッ!
残り4本のうち1本が吹き飛ぶ。
「あああああ!」
血を吐き散らしながら叫ぶ。きたねえな。
「もう一度聞く、間違えるな? お前は俺の親なのか?」
今度は首をぶんぶんと横に振る。
「そうか。良かったぜ」
俺は懐からCABINを取り出し、一本咥えて火を点けた。
「そう言えば、お前は煙草吸わないのか?」
「ふえはいんれふ。はいはよわふへ」
「何言ってんのかわかんねえけど、吸えないのか?」
こくこくと首を縦に振る。
「案外吸ってみるといいもんだぜ。どうだ、吸ってみるか?」
そう言って火の点いたままの煙草の先端を近付ける。そいつは首を横に振る。
「遠慮するな、よ」
——ジュッ。
煙草の火を歯茎にグリッと押し付ける。
「んんんんん!」
歯茎は一瞬だけ水ぶくれが出来上がり、すぐに潰れて液体が血と共にダラダラと垂れた。
すると間もなくして鼻を突くアンモニア臭がした。どうやら今ので漏らしたらしい。
——パンッ!
「んああああああああああああああああああ!」
股間から漏れた尿の後を追うように、股間から流れ出た赤い液体が滲む。
「姉貴の葬式の時に金を貸せと言ってきたお前。高校生の姉貴から金を巻き上げていくお前。果たして人間なんだろうかと、疑問だったんだ。取り敢えず親でないことは解ったが、人間かどうかの区別ははっきりしてねえ。俺は、お前は人間じゃあないんじゃあないかと思うが、お前は人間なのか?」
目の前の男は考えているようだ。身じろぎ一つ取らない。その間に煙草を一本咥え、火を点ける。
「間違えるなよ? まだ3本分チャンスはあるが、なるべく多く残したいだろう? お前は人間か?」
ゆっくりと首を横に振る。
「そうか。謎が解けて良かったぜ」
俺はアタッシェケースからもう一丁のコルトガバメントを取り出す。
「姉貴は俺を助けるために、フォルトレスとして自分を売って死んだ。母さんはいずれ虐待されて死ぬ子供を助けるために死んだ。まさか親父だけが自身のための生を全うして死ねるなんて、俺は思いたく無くてな。この家族の中で最も悪い死に方をすれば、姉貴や母さんは親父よりマシだったと思えるだろう? これで姉貴や母さんが報われるとか、さすがにそんなことは思ってねえよ。ただ、俺が多少スッキリするってレベルの話だ。その程度の話の為に、お前には死んで欲しかった。それも人間としての尊厳を全て失って……つまり人として死ぬんじゃあなく、ゴミとして処理されて欲しかった」
二つの銃口を向ける。
「ゴミなら、喋ったり動いたりするのはおかしいからな。正しい姿に戻してやるよ」
それから無心で、トリガーを引き続けた。途中、マガジンを何度も交換して、全てを撃ち尽くすまで、ゴミに向かって弾丸を放った。途中からもう、呻き声も聞こえなくなっていた。
ホールドオープンしたガバメントのスライドストップを解除すると、シャッ。という乾いた音がガレージに響き、そのあとに静寂を作った。根元まで燃え切ってフィルターだけになった煙草をゴミに向かって吐き捨てた。
ほどなくして、シャッターの開く音がした。風が入ってくると、むせ返るほどの死臭が逃げ出すように外へと這い出して行った。
その死臭とは逆に、足音が近付いてくる。
「もう、終わりましたか?」
爺さんだ。葬儀屋の。
「ああ」
理三郎爺さんは、蹲踞の姿勢でゴミに向かって手を合わせた。
「手を合わせる必要はねえよ。それはゴミだ」
爺さんは振り返るとにっこり笑った。
「それはゼンさんの価値観のお話ですから。私は私の価値観の中で、一つ一つケリを付けて行きたいだけです。独り善がりでもなんでもね」
爺さんがする葬儀ってのが気になって、俺はそのまま見ていた。
「なあ爺さん。それは俺の親父でもなければ人間でもなかったらしい。だとしたら俺は一体どうやって、何の為に生まれてきたんだろうな」
「さあ」
「俺はそもそも生きているんだろうか? それこそ俺がゴミだったりしてな」
爺さんは自嘲に笑んだ俺の視線を掬うように、下から覗き込んできた。
「ゼンさん。私の葬儀、見ておいてください」
「そのつもりだった」
「そうですか。それは良かった。これから長い付き合いになりそうですからね。少々不思議なことが起こりますが、一度で慣れてください」
爺さんがそう言いながら、ゴミの対岸に渡り俺の方を向いた。良く見えるようにということだろう。爺さんはまた腰を落として、左の掌を下に向けた。すると爺さんの両目の黒目の部分の左半分が赤色に変色した。よく見るとその赤は揺らめいていて、まるで赤い煙が瞳の半分に立ち込めているようだった。俺から見て左だから、爺さんの瞳の右半分が赤い煙に包まれているってことになる。その状態で、ゴミの周りの地面を掌でなぞっていく。すると、そこに灰が出現した。地面に付いた血も、掌が通ったあとには灰だけが残る。そしてゴミに触れた途端、全てが灰になった。あとには血もゴミも何もかもない。
「私のこの能力はね。生きていないものを灰にするんです。血も肉も骨も。温度も無く。ですからそうですね、ゼンさんが仰る通り、ゴミも灰にできます」
そう言ってゆっくりと立ち上がると爺さんは、俺の肩をポンポンと叩いた。
「こうして貴方に触れても、灰にはならないでしょう? 生きているってことです。ゴミじゃあないってことです。それでは貴方はどうやって、何の為に生まれたのか。それは、これからの人生の中で考えていけばいいでしょう。なあに、焦る必要はありませんよ。貴方なら多分そう遠くない未来で辿り着けますから」
そう言ってまた、爺さんは深い皺を作って、にっこりとほほ笑んだ。
「うちは人材派遣会社ですよ? 一度でも登録された名前と電話番号などの個人情報を3年間は保存しておく義務があるんです」
「その個人情報を俺に教えたら、職権乱用にならねえのか」
「なりますよ。ですから善良なる一般社員の方のものは絶対に教えません」
俺は、番号は親戚に教えてもらったなどと適当なことを言って、親父を呼び出した。最初は来るのを拒んでいたが、遺産相続の件で金を渡せると言うとあっさり来ることになった。
深夜。人里離れた、もう誰も住んでない民家の前で待っていた。
近づいて来た父親は、俺の持っていたアタッシェケースを見て、眼を輝かせた。視線を下に誘導して、油断しきったその首筋に、拳銃のグリップで思い切り一撃を見舞った。
気絶した親父を家の庭のガレージに引きずり込み、シャッターをして明かりを点けた。明かりとは言っても、誰も住んでいない家だ。電気は通っていない。だからアウトドア用のランプを使った。
ガレージの壁際にある柱の両方から縄を引っ張り、奴の手に括り付けた。両腕を広げた状態でうつ伏せの形。簡単には身動きを取れないはずだ。
しばらくするとうめき声が聞こえた。
「目が覚めたか」
「う、ここは。いったい何が……? ん? う、動けねぇ。なんだこれは! 助けてくれ、然壽!」
俺は名前を呼ばれたことに腹が立ち、思い切り横腹を蹴った。
ここなら俺の足が痛まず、こいつの内臓だけを傷付けられるという直感があった。まあ、爪先に鉄板が入った安全靴だから、こっちの足が傷付くってことはそうそう無いが。
「うぐぅう! な、なにをするんだ!」
反抗する態度にも腹が立つ。肩を思い切り踏む。
「あ、あぎぃぃいい! ああ! す、すまん! よくわからんが、怒っているんだな? 謝るから、許してくれ! たたた、た、すけてくれ!」
俺は更に体重を掛けながら唾を吐いた。
「な、なんてことするんだ! 親に向かって! あ、ぐ! 痛い!」
「親は子供から金なんざ盗らねえんだよ」
ミシミシと肩から音が鳴る。このまま踏み続ければ肩の骨が折れる、そんな予感がしている。
「痛い痛い痛い痛い!! 解った! すまなかった! 金は返す!」
「その金があったら姉貴が生き返るか?」
「いや、それは」
「お前が追い詰めたんだぞ。姉貴を。俺の学費を稼いでやるって一生懸命働いて、そんな優しい姉貴に付け込みやがって」
「すまなかった!」
謝ったことにさえもう、腹が立って仕方がなかった。
アタッシェケースから取り出したコルトガバメントの銃口を向ける。
「へ?」
「死にたいか?」
「ししししし、死にたくない!」
——パンッ!
乾いた音共に銃口から放たれた弾丸は、男の人差し指を吹き飛ばしていた。手からは白い骨が見えている。血は、まだ出てない。
「あっつうぅうう! ああああ! いつうぅあああ!」
「お望みどおりにしたぞ」
「う、撃たないで、くれ……!」
手の今まで指があった部分を思い切り踏みつけた。
「ぎゃあああ! ふむなあああ!」
汚い声を叫ぶために開かれた口に、思い切りトゥーキックを刺し込む。鉄板入りの爪先だ。
ミシミシミシミシと、何本も歯が折れる音がした。
「ため口をやめろ。ゴミが」
もう一度、二度、三度、目の前のゴミの口に足を突っ込む。白や銀の欠片が、その頭の周りに転がっていたが、ゴミが散らかった程度にしか思えなかった。
「ほうひまひぇん、はふへへえええ」
「何言ってるかわかんねえよ」
——パンパンパンパンパンッ!
銃声がガレージの中にけたたましく響く。
無事だった方の手の指を全部撃ち落とした。
マガジンリリースボタンを押して、空になったマガジンを引き抜き、新たな弾丸を装填する。
「聞くが、お前は俺の親か?」
こくこくと頷く。
——パンッ!
残り4本のうち1本が吹き飛ぶ。
「あああああ!」
血を吐き散らしながら叫ぶ。きたねえな。
「もう一度聞く、間違えるな? お前は俺の親なのか?」
今度は首をぶんぶんと横に振る。
「そうか。良かったぜ」
俺は懐からCABINを取り出し、一本咥えて火を点けた。
「そう言えば、お前は煙草吸わないのか?」
「ふえはいんれふ。はいはよわふへ」
「何言ってんのかわかんねえけど、吸えないのか?」
こくこくと首を縦に振る。
「案外吸ってみるといいもんだぜ。どうだ、吸ってみるか?」
そう言って火の点いたままの煙草の先端を近付ける。そいつは首を横に振る。
「遠慮するな、よ」
——ジュッ。
煙草の火を歯茎にグリッと押し付ける。
「んんんんん!」
歯茎は一瞬だけ水ぶくれが出来上がり、すぐに潰れて液体が血と共にダラダラと垂れた。
すると間もなくして鼻を突くアンモニア臭がした。どうやら今ので漏らしたらしい。
——パンッ!
「んああああああああああああああああああ!」
股間から漏れた尿の後を追うように、股間から流れ出た赤い液体が滲む。
「姉貴の葬式の時に金を貸せと言ってきたお前。高校生の姉貴から金を巻き上げていくお前。果たして人間なんだろうかと、疑問だったんだ。取り敢えず親でないことは解ったが、人間かどうかの区別ははっきりしてねえ。俺は、お前は人間じゃあないんじゃあないかと思うが、お前は人間なのか?」
目の前の男は考えているようだ。身じろぎ一つ取らない。その間に煙草を一本咥え、火を点ける。
「間違えるなよ? まだ3本分チャンスはあるが、なるべく多く残したいだろう? お前は人間か?」
ゆっくりと首を横に振る。
「そうか。謎が解けて良かったぜ」
俺はアタッシェケースからもう一丁のコルトガバメントを取り出す。
「姉貴は俺を助けるために、フォルトレスとして自分を売って死んだ。母さんはいずれ虐待されて死ぬ子供を助けるために死んだ。まさか親父だけが自身のための生を全うして死ねるなんて、俺は思いたく無くてな。この家族の中で最も悪い死に方をすれば、姉貴や母さんは親父よりマシだったと思えるだろう? これで姉貴や母さんが報われるとか、さすがにそんなことは思ってねえよ。ただ、俺が多少スッキリするってレベルの話だ。その程度の話の為に、お前には死んで欲しかった。それも人間としての尊厳を全て失って……つまり人として死ぬんじゃあなく、ゴミとして処理されて欲しかった」
二つの銃口を向ける。
「ゴミなら、喋ったり動いたりするのはおかしいからな。正しい姿に戻してやるよ」
それから無心で、トリガーを引き続けた。途中、マガジンを何度も交換して、全てを撃ち尽くすまで、ゴミに向かって弾丸を放った。途中からもう、呻き声も聞こえなくなっていた。
ホールドオープンしたガバメントのスライドストップを解除すると、シャッ。という乾いた音がガレージに響き、そのあとに静寂を作った。根元まで燃え切ってフィルターだけになった煙草をゴミに向かって吐き捨てた。
ほどなくして、シャッターの開く音がした。風が入ってくると、むせ返るほどの死臭が逃げ出すように外へと這い出して行った。
その死臭とは逆に、足音が近付いてくる。
「もう、終わりましたか?」
爺さんだ。葬儀屋の。
「ああ」
理三郎爺さんは、蹲踞の姿勢でゴミに向かって手を合わせた。
「手を合わせる必要はねえよ。それはゴミだ」
爺さんは振り返るとにっこり笑った。
「それはゼンさんの価値観のお話ですから。私は私の価値観の中で、一つ一つケリを付けて行きたいだけです。独り善がりでもなんでもね」
爺さんがする葬儀ってのが気になって、俺はそのまま見ていた。
「なあ爺さん。それは俺の親父でもなければ人間でもなかったらしい。だとしたら俺は一体どうやって、何の為に生まれてきたんだろうな」
「さあ」
「俺はそもそも生きているんだろうか? それこそ俺がゴミだったりしてな」
爺さんは自嘲に笑んだ俺の視線を掬うように、下から覗き込んできた。
「ゼンさん。私の葬儀、見ておいてください」
「そのつもりだった」
「そうですか。それは良かった。これから長い付き合いになりそうですからね。少々不思議なことが起こりますが、一度で慣れてください」
爺さんがそう言いながら、ゴミの対岸に渡り俺の方を向いた。良く見えるようにということだろう。爺さんはまた腰を落として、左の掌を下に向けた。すると爺さんの両目の黒目の部分の左半分が赤色に変色した。よく見るとその赤は揺らめいていて、まるで赤い煙が瞳の半分に立ち込めているようだった。俺から見て左だから、爺さんの瞳の右半分が赤い煙に包まれているってことになる。その状態で、ゴミの周りの地面を掌でなぞっていく。すると、そこに灰が出現した。地面に付いた血も、掌が通ったあとには灰だけが残る。そしてゴミに触れた途端、全てが灰になった。あとには血もゴミも何もかもない。
「私のこの能力はね。生きていないものを灰にするんです。血も肉も骨も。温度も無く。ですからそうですね、ゼンさんが仰る通り、ゴミも灰にできます」
そう言ってゆっくりと立ち上がると爺さんは、俺の肩をポンポンと叩いた。
「こうして貴方に触れても、灰にはならないでしょう? 生きているってことです。ゴミじゃあないってことです。それでは貴方はどうやって、何の為に生まれたのか。それは、これからの人生の中で考えていけばいいでしょう。なあに、焦る必要はありませんよ。貴方なら多分そう遠くない未来で辿り着けますから」
そう言ってまた、爺さんは深い皺を作って、にっこりとほほ笑んだ。
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