オウルシティと傷無し
story:04 ダンスタイムだ
追跡を始めて数十分の間に、次々に車が右折していった為、セダンとの距離は一気に詰まった。間には大型バイクがあるだけだ。恐らくバックミラーに俺らは映っていることだろう。嫌な予感がする。もう既に勘付かれているかも知れないな。
よくよく見てみると、間を走るバイクはAvintonだった。ヨーロピアンスタイルのバイクには相応しくないハーレーのエンジンが積まれている。その走りは控えめに言って化け物。そんなバカでかい化け物に気付いたのが今更だったのは、乗ってる奴もバカでかかったせいだ。身長が高いってだけじゃあなくて、体の厚みも相当あるな。そんな奴が膨張色の白のライダースーツを着てるんだから余計にでかく見える。そしてこれまた大きなものを背中に担いでいる。2mはあろうかというウッドベースの入れ物。楽器を運ぶには荒々しい運搬方法だが、車が無ければ仕方ないのか。さっきからずっと嫌な予感がしているが、まさかこけねえだろうな。
しばらく後ろに付いて走っていると、車線が減って、建物の類も少なくなってきた。手入れのされていない畑や古びた電信柱くらいしかない。いよいよ本格的に何もない、閑散とした風景になってきた。それでもバイクが追従しているあたり、セダンとの関係性が疑われる。偶然とは思えない。そんなことを考えていると、前のバイクが本当に少しずつだが、減速を始めた。バイクとは言えアヴィントン。そんな超ど級の大型が真ん中を走っていては抜くに抜けない。そうこうしている内にセダンとの距離が開いていく。不味いな。追い抜き禁止の道路だが、仕方ねえ。そう思いハンドルを切りかけた瞬間。
とてつもなく嫌な予感が頭を掠めた。
俺はアームレストから咄嗟にコルトガバメントを取り、セーフティレバーを外した。瞬間、オーディオから流れる曲が変わった。ああ、これは俺も知っている。
——『ACIDMAN』の『FREEWHITE』……。
前を走るバイクから何かが投げられた。拳大の黒い塊が跳ねながら道を転がってくる。
俺はそれが何かも確認せず、すぐさま窓から腕だけを出し、一発撃つ。
弾丸に弾かれたそれが上空を舞う。肉眼で視認した限りじゃああれは。
「しゅ、手榴弾!?」
想が叫ぶ。
俺は上空を舞う手榴弾にもう一発当て、後方へと飛ばす。
予想される爆発から逃れる為、アクセルをベタ踏み。この際バイク野郎を轢き殺してもやむを得ない。そう思ったがしかし、バイクはこっちが加速するより早く前進していた。後方に爆発音を聞いた。バックミラーで見る限り、炎上するタイプじゃなく榴弾をまき散らすタイプだ。上空で爆ぜていたら、二人とも死んでたな。
「ダンスタイムだ、イカレ野郎」
バイカーが次の行動をするより早く、アームレストに控えてあるもう一丁のコルトガバメントを手に取る。両手撃ちじゃなきゃあ、対応しきれない気がした。そうすると、操縦者が不在だ。今、ハンドルは誰も持っていない。
オートクルーズに切り替え、アクセルから足を放し、立ち上がりながら吼える。
「想! ハンドル握ってろ!」
「無茶言いますよねえーー!」
反論しながらもハンドルを握ったのを目の端に見て、構えた銃をぶっ放す。二丁からさながらマシンガンの様に放たれる弾丸は、全弾前方の地面に向かっている。バイカー本人にではない。初弾が地面に到達するかどうかというタイミングで、そこに相手が投げた鉄製の何かが飛来し、ぶつかり、甲高い金属音を発しながら車線の外側に弾け飛んでいく。同じく放っておいた弾丸とそれらがぶつかり合い外に流れる。マセラティの行く先に落ちるはずだったそれらは、マキビシだった。えげつねえもんばら撒きやがって。
だが、相手は相手でこちらの動きに面食らっているはずだ。なにせマキビシを撒くより早く弾丸を放っている。次の行動を迷わせるには十分な一手だったはずだ。
だがなんだろうな。この速度域だからか、相手に照準を合わせると嫌な予感しかしねえ。確かに倒れてバイクごと轢いたらこっちもタダじゃあ済まされねえだろうが……。
俺の思考の間隙を縫うように、バイクは突然加速した。俺は座席に座り直し、想と操縦を変わり、アクセルを踏み込んだ。
たとえ相手がハーレーのエンジンを積んでる化け物だろうが、こっちも時速100kmに5秒で到達する化け物だ。初速で出遅れてもすぐに追いついて見せる。そしたら抜き際に鉛玉くれてやる。が、点になったバイカーが、バイクを左に寄せて降りているのを視認した瞬間、またも嫌な予感が奔った。男はウッドベースカバーから身の丈程の鉄の塊を引き抜いた。
——不味ったぜ……!
俺はブレーキを踏みながら叫んだ。
「伏せろ!」
想は言われた通りに頭を抱えて体を折り曲げていた。俺は操縦を放棄し、ハンドルの下に体を滑り込ませた。
よくよく見てみると、間を走るバイクはAvintonだった。ヨーロピアンスタイルのバイクには相応しくないハーレーのエンジンが積まれている。その走りは控えめに言って化け物。そんなバカでかい化け物に気付いたのが今更だったのは、乗ってる奴もバカでかかったせいだ。身長が高いってだけじゃあなくて、体の厚みも相当あるな。そんな奴が膨張色の白のライダースーツを着てるんだから余計にでかく見える。そしてこれまた大きなものを背中に担いでいる。2mはあろうかというウッドベースの入れ物。楽器を運ぶには荒々しい運搬方法だが、車が無ければ仕方ないのか。さっきからずっと嫌な予感がしているが、まさかこけねえだろうな。
しばらく後ろに付いて走っていると、車線が減って、建物の類も少なくなってきた。手入れのされていない畑や古びた電信柱くらいしかない。いよいよ本格的に何もない、閑散とした風景になってきた。それでもバイクが追従しているあたり、セダンとの関係性が疑われる。偶然とは思えない。そんなことを考えていると、前のバイクが本当に少しずつだが、減速を始めた。バイクとは言えアヴィントン。そんな超ど級の大型が真ん中を走っていては抜くに抜けない。そうこうしている内にセダンとの距離が開いていく。不味いな。追い抜き禁止の道路だが、仕方ねえ。そう思いハンドルを切りかけた瞬間。
とてつもなく嫌な予感が頭を掠めた。
俺はアームレストから咄嗟にコルトガバメントを取り、セーフティレバーを外した。瞬間、オーディオから流れる曲が変わった。ああ、これは俺も知っている。
——『ACIDMAN』の『FREEWHITE』……。
前を走るバイクから何かが投げられた。拳大の黒い塊が跳ねながら道を転がってくる。
俺はそれが何かも確認せず、すぐさま窓から腕だけを出し、一発撃つ。
弾丸に弾かれたそれが上空を舞う。肉眼で視認した限りじゃああれは。
「しゅ、手榴弾!?」
想が叫ぶ。
俺は上空を舞う手榴弾にもう一発当て、後方へと飛ばす。
予想される爆発から逃れる為、アクセルをベタ踏み。この際バイク野郎を轢き殺してもやむを得ない。そう思ったがしかし、バイクはこっちが加速するより早く前進していた。後方に爆発音を聞いた。バックミラーで見る限り、炎上するタイプじゃなく榴弾をまき散らすタイプだ。上空で爆ぜていたら、二人とも死んでたな。
「ダンスタイムだ、イカレ野郎」
バイカーが次の行動をするより早く、アームレストに控えてあるもう一丁のコルトガバメントを手に取る。両手撃ちじゃなきゃあ、対応しきれない気がした。そうすると、操縦者が不在だ。今、ハンドルは誰も持っていない。
オートクルーズに切り替え、アクセルから足を放し、立ち上がりながら吼える。
「想! ハンドル握ってろ!」
「無茶言いますよねえーー!」
反論しながらもハンドルを握ったのを目の端に見て、構えた銃をぶっ放す。二丁からさながらマシンガンの様に放たれる弾丸は、全弾前方の地面に向かっている。バイカー本人にではない。初弾が地面に到達するかどうかというタイミングで、そこに相手が投げた鉄製の何かが飛来し、ぶつかり、甲高い金属音を発しながら車線の外側に弾け飛んでいく。同じく放っておいた弾丸とそれらがぶつかり合い外に流れる。マセラティの行く先に落ちるはずだったそれらは、マキビシだった。えげつねえもんばら撒きやがって。
だが、相手は相手でこちらの動きに面食らっているはずだ。なにせマキビシを撒くより早く弾丸を放っている。次の行動を迷わせるには十分な一手だったはずだ。
だがなんだろうな。この速度域だからか、相手に照準を合わせると嫌な予感しかしねえ。確かに倒れてバイクごと轢いたらこっちもタダじゃあ済まされねえだろうが……。
俺の思考の間隙を縫うように、バイクは突然加速した。俺は座席に座り直し、想と操縦を変わり、アクセルを踏み込んだ。
たとえ相手がハーレーのエンジンを積んでる化け物だろうが、こっちも時速100kmに5秒で到達する化け物だ。初速で出遅れてもすぐに追いついて見せる。そしたら抜き際に鉛玉くれてやる。が、点になったバイカーが、バイクを左に寄せて降りているのを視認した瞬間、またも嫌な予感が奔った。男はウッドベースカバーから身の丈程の鉄の塊を引き抜いた。
——不味ったぜ……!
俺はブレーキを踏みながら叫んだ。
「伏せろ!」
想は言われた通りに頭を抱えて体を折り曲げていた。俺は操縦を放棄し、ハンドルの下に体を滑り込ませた。
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