ブサメンに三次元美少女たちが話しかけてくるなんてあり得ないでござる!

みくりや

mikuちゃんとデート





 デュフフウ!放課後。
 ついに了承してしまったアイドルとのデート?
 ボクはすこし憂鬱になりながらも、約束は約束だからと校門前で待ち合わせをした。教室から一緒に移動するとやっかみがうるさいからだ。


 ボクはデブだ。だから常に臭いや、不潔には敏感に対処している。だってブサメン、デブオタの上に、スイカの匂いがするなんて言われた日にはもう立ち直れない。
 だから常にメンズボディシートを常に5袋携帯しているのでござる。
 当然さっきもトイレでごしごし体中を拭いてきた。だから不潔ではないと思う。
 顔の造形が不潔と言われたらどうしようもないんだけれど。
 そうこうしているうちに、mikuちゃんが来たようだ。




「お、おまたせー!いろんな人につかまっておそくなっちゃった!」
「い、いま着いたところでござるよ」
「ふふふ……紳士なのは素敵よ!いこ?」




 ブヒィイイイイ!!なんだこのあざとさは!!!ミルちゃんの比ではないあざとさ!ぐぐぐ、かわいさなんかにま、負けないんだからね!ビクンビクン!
 上目遣いで、ボクの腕に引っ付いてくる彼女は、相変わらず良い匂いがするしかわいいし、ふわっとしているしで、ヤバいでござる。




「い、いきもしょい」
「ぷっ……光圀くんおもろ!」




 訳の分からない事をいってしまった。
 それでも笑って済ませてくれる彼女はやさし――はっ!?








 ボクたちは一緒に歩きながら、駅前ちかくのスイーツ店にやって来た。明らかに場違いでござる。周囲は女性ばかり、カップルが一組いる程度。
 そして椅子が女性用だからボクが座ったら、へしゃげてしまいそうだ。とりあえず、そーっと椅子に座ってみる。




「光圀くん……どうしたの?」
「……椅子がへしゃげそうで怖いでござる」
「ぷっ!おもしろいこと言うね!」
「必死でござるよ!」




 なぜかうけたけれど、ボクは半空気椅子状態でこの場を乗り切ることにした。まったくなんて店だ。それによく考えたらボクは甘いものがそんなに得意ではない。
 おねえさんが注文をとりにきたけれど、明らかにモンスターを見る目だ。いや、やはりおねえさんにはボクがハイオークに見えてるようだ。


 ちょっとムカついたから、「オレ オマエ クウ」って試そうとおもったけれど、いまはmikuちゃんと一緒だから騒ぎを起こしたくない。






「メープルシロップのヘーゼルナッツ・ミックス・パフェお願いします。光圀くんは?」




 えー!?ボクはこんなにオシャレなお店に来たことがないから、何をえらんでいいかわからないでござる!もう適当にお勧めのやつにしよう!




「じゃ、じゃあこのおすすめのイチゴとピスタチオのパフェでおねがいします」




 さすがにござるは言わない。冷静になっていればボクだってTPOをわきまえるさ。




「ね、ねぇ?ふつうにござる語じゃないじゃない。そっちのほうがかっこいいよ?」
「ござる語ってなんでござるか。それにボクだって空気はよめるでござる」
「ぷっ読んでないじゃん!」




 ブフィィイイイイイ!!なんでござるか!くすくす笑う彼女のかわいさったら!!!!おかしいでござるぅうう!!3次元なんてありえないでござるぅうう!!!もう悶えすぎて顔がまっかになってるやもしれぬでござるでおじゃる!!!!




「あ、相川氏?そんな顔されたら、いくらブサメンでも勘違いしてしまうでござるよ?」
「みくってよんでよ!わたしもたくみって呼ぶから。いいでしょ?」




 デュフフウィイイ!上目遣いも卑怯でござる!!!




「じゃあみく氏……でよいでござるか?」
「良くない!氏ってなによ!せめてちゃんとか呼び捨てでしょ?」
「じゃあ、みみ、みくちゃん!」
「なぁに?たくみ」




 プギャャアアア!!なんでござるかこれは!!甘すぎる!拙者には甘すぎるでござるでおじゃる!




 ブゥウウウウ!!!!!!




 そして来たスイーツも甘い!!!!




 そんな話をしていると、周囲のひそひそ話が聞こえてきた。なにやら怪しんでいる様子。




「な、なぁにあれ?え?mikuじゃないあれ」
「うそ?ほんとだぁ!写メとろ!!え!?」
「となりのギガンテスなにあれ?」




 となりのト〇ロみたいなノリでギガンテスって言わないでほしいでござる。
 それにしてもこれは、不味い流れでござる。




「ねぇ……あれヤバくない?」
「う、うん。mikuが襲われちゃうんじゃ……」
「うっそ……警察?」




 さらに不穏な空気がながれている。でもみくちゃんはそんなことをまったく気にしていない様子だ。アイドルだとやっかみもおおいだろうから、慣れているのかもしれない。




「んふふ~おいしっ!普段はダイエットってうるさいから食べられないんだ~」
「今日はいいのでござるか?」
「うん!たくみと一緒の時はがまんしないって決めたんだ」
「なんででござるか?」




「あたしの屋上の練習……みててくれたでしょ?」
「ギクゥ!」
「ぷっ『ギクゥ』って口で言う人初めて見たよ、んふふ」
「き、きずいていたのでござるか?」
「うん。……はじめはキモいって思ってた。でもたくみがいると屋上に誰もこないから安心して練習できたんだよ?」
「ぐ、偶然でござる。ボクはゲームしていたでござる」
「そうやって、あたしの嫌がる事をしないでしょ?だから遠慮しないの!」
「みくちゃん……」


 彼女は常に注目されている。それもいやらしい目で見られる方が多い。頑張っているみくちゃんを知っているから、ボクはそういう目で見るのは出来るだけ避けてる。
 ちゃんと彼女の努力を見て、あげる人間が必要なのでござる。こんなブサメンキモオタでも、彼女が満足してくれるのはうれしいものだ。




「だから、たまにでいいから遊びにつれてってよ!にはは!」
「そ、そんなことで良ければお安い御用でござる!」
「ぷっ!もどってる!でも好きな方でいいよ!」
「デュフフゥ!ボクの右目に宿る闇が、みくちゃんにパワーを分け与えるのでござる!」
「あははは!おもしろ!!」




ドガッシャーン!




「ブヒィイイイ!椅子が壊れたでござる!!!」




 思わずはしゃぎすぎて、空気椅子を忘れていたでござる。ボクはそのまま床に転げてしまった。




「キャーー痴漢よ!」


ドガッ!


「ブヒィ!!」


「パンツ覗いてるんじゃないわよ!!」


ゲシッ!


「ブヒィ!!」


「警察!警察をよんで!!!」


パンパン!!!


「ブヒィ!!ブヒィイイイ!!」


ドカッ!ドゥムッ!パァンッ!ガンガンッ!!


「ブヒィイイィイ!」




 お店は大混乱に陥って、ボクは間もなく警察に連行されるのであった。その騒ぎに巻き込まれたら大変だからみくちゃんは先に返した。












 デュフフ、取調室。




「事情は分かった。mikuさんとも連絡が取れて聞いたよ。その風体じゃぁ誤解されるわなぁ」
「デュフフ。よ、よく言われるでござる」
「キモッ……じゃなかった、光圀くんだっけ。キミが無実だったのは分かったけれど、逆にこれは傷害事件だ」




 たしかにほぼリンチといっても過言ではないし、女性なのにかなり強くやられて、顔や体は痣だらけになっていた。
 でも訴えて騒ぎを大きくすればmikuちゃんに迷惑がかかるのでござる。




「いえ、いいんでござる」
「そ、そんなにボコボコにされたのにか?」
「デュフフ。女性の方々には不快な思いをさせてすみませんでしたと、伝えてほしいでござる」
「お、おまえ……」




 取り調べをしたおじさんは、涙をながしてばしんばしんと背中を叩いてくる。今は特に痛いからやめてほしいでござる。




「何かあったら助けてやるから遠慮なく言えよ!!」




 説明にすごく時間がかかって、解放されたのは朝の3時だ。怪我をしているのに歩くのはつらいので、警察署のロビーで寝て、そのまま学校に行くことにした。


 警察を訪ねてきたキャバ嬢のお姉さんには、ハイオークが寝ていると恐れられ、散歩がてらに寄ったおじいさんには――


「トロルじゃ!トロルがおるぞぉ!!!」


バシンバシン!!!


「ブヒィイイイ!」


 杖でしこたま殴られた。警察署でさらに暴力事件が起きるとはさすがに、受付の警察官もびっくりしていた。






 くそうぅ。やっぱり3次元だと総合的に見てろくなことがおきない。たとえみくちゃんと仲良しになれたとしても、それはあくまでお友達?いやペット?いやテイマーと獣魔契約という関係だ。そうボクはテイムされたハイオークだ。
 やはりここはミルちゃん一筋でいるべきでしょうが!











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