ブサメンに三次元美少女たちが話しかけてくるなんてあり得ないでござる!
事件の発端
デュフフゥ!ボクは今日から復帰だ。
結局2週間で退院してすぐ復帰できた。頭を切ったから少しだけ縫ったけれど、なんの問題ない。
だってボクの神の励起をもってすれば無敵だからね。デュフフ。
「ついにきやがったな!久々にやってやるぜっ!」
ドガッ!
「ブヒィ!!」
いつも通りに陣内くんがサッカーボールキックをやってくる。ボクは退院したばっかりだというのに、容赦がないなぁ。
これにはクラスメイトのみんなも引いている。
「や、やめなよぅ……ブサ……ブタくん退院したばっかりらしいよ」
「そうだぜ!ブタクサくん大変だったらしいじゃん!」
ぜんぜん誰も名前を覚えていないじゃないかっ!
はっきりいって、そんな同情はべつにいらないのだ。腫れもの扱いを受けるより、いつも通りの陣内くんのほうがありがたがったりする。
「ややや、やめるでござるよ!」
「キモいんだよオタク!」
ドガッ!
「ブヒィ!!」
彼のサッカーボールキックは、実はそんなに痛くはない。まったく痛くないといったらウソだけれど、この前のけがに比べたらお遊びみたいなものだ。
「あやや!光圀氏!大丈夫ですかな?」
「デュフフ。ボ、ボクの神の励起が復讐心を糧にして、発現するのでござる!」
「おお!いつもの切れが戻っておりますぞぉ!光圀氏!」
山根氏は相変わらず、ボクについてこれる唯一の好敵手。やりおる。
そうしているうちに何時ものギャルグループがやって来た。
「や、やっぱりキモい……でもとめな……キモイ」
「キモイ。キモイ。キモイ。まじキモイ」
「おはよ!光圀くん!今日の帰りにいっしょにパフェを食べに行かない?」
「「「え~~~~~!!!???」」」
最近はmikuちゃんがすごく積極的だ。
ボクにはミルちゃんというものがありながら、彼女の誘惑に負けそうでござる。でもリアル彼女なんていつか裏切られるに決っている。それだったらやっぱりミルちゃんに人生をかけるべきだ!
それに彼女は現役アイドル。最近は雑誌のモデルやCMまで出ているじゃないか。彼女は破竹の勢いで成長しているというのに、ボクという石、岩?いやストーンマンにつまずいていてはいけない。
「あ、相川氏……何度もいいまするが、や、やめたほうがよいでござるよ……」
「お願い!一回ぐらい付き合ってくれてもいいでしょ?」
「やや!光圀氏!羨ましいですぞ!mikuちゃんがああいってるんですぞ!一ファンとしても、一回ぐらい聞いてあげてくだされ!」
「グッド援護!」
「わぉ!mikuちゃんからサムズアップをいただきました!!もう死んでもいいですぞ!!」
「や、山根氏?」
だめだコイツ。早く何とかしないと。
「しかたない。一回だけでござるよ?」
「やった~~~!!」
mikuちゃんが大喜びしている。うーんファンがみたら、ニュースになってしまうのでは……。
「……ねぇデブ。いいのあれ」
「クールにののしらないでほしいでござる。美月ちゃ――
バチン!
ブヒィイイ!」
相変わらずどSだ。何の理由もなくバインバインと叩かないでほしいでござる。
ボクが痛がっていると、目の前に委員長がたっている。良い匂いがするからあまり近くに立たないでほしいのでござる。
「……おはよ。無事復帰できたようね」
「……?お、おはようでござる」
委員長はなぜか神妙な面持ちだ。真剣なまなざしにボクはすこし嫌な予感がした。
「ちょっと話があるわ。ついてきて」
「……?い、いやでござるよ?」
「な!?いいから来なさいキモブタ!」
ドガッ!
「ブヒィイイイイ!」
あれ、委員長って蹴る人だったっけ。陣内くんと同じノリでサッカーボールキックされた。
委員長に連れられて、階段したの目立たないスペースへとやって来た。前を歩いていた委員長はくるりとまわって、ボクを真剣な目でみる。
「この前の暴力事件。まずいわ……光圀くんが手を出していないことは一目瞭然だけれど、問題が大きくなっている」
「そ、そういえば刑事らしき人が病室に2~3度きてたかなぁ?」
「あんたの幼馴染、如月美月?あの子の所為だわ」
「そ、それはないのではござらんか?」
そういえば美月ちゃんが病室で謝っていた。でもいつもひっぱたくことを謝っていたのかと思っていた。
「あの子……加害者グループにいた、男に手をだしていたのよ」
「え、えぇ?」
「だけど、あの子さらに浮気して別の男に乗り換えたの。そしてその男にも捨てられて今はフリーだけど、今度は山根くん?だっけあんたの友達をねらって、あんたに近づいているでしょ?」
「ぶひぃいいい!美月ちゃんはとんだビッチではござらんか!?」
「び、ビッチかどうかしらないけど、とっかえひっかえしてたのは確かね」
あの「大人になったら匠くんのお嫁さんになる!」って言っていた美月ちゃんが、ビッチになっていたとは。デュフフウ!
「光圀くん?」
ボ、ボクはわりと2次元ならビッチもいける口。NTR属性もわりと好きな”ばくだん岩”のような心臓の持ち主さ!
「……光圀くん?」
ただし、3次元ではちょっと引いてしまうのでござる。
「このデブ!」
バチン!
「ブヒィイイイ!!」
「話をききなさい!ショックなの?そんなブサイクな顔して?」
「ブ、ブサイクは関係ないでしょ!」
「口答えしない!」
バチン!
「ブヒィイイイ!!」
もうこの委員長嫌いだ。
幼馴染でもない無関係なのに、美月ちゃんみたいにバチンバチンたたいてくる。
「話をもどすと、山根くんを狙ってるけど、ほとんどあんたとばかり話している。それから幼馴染もあいまって勘違いしたらしいのよ」
「ブヒィイイ、とんだとばっちり!」
「……そ、そうね。でもそれだけじゃなくて、その男、地元の政治家の息子だから、今回の件はもみ消されたわ……」
そうだったのか、通りで刑事がうろついているのに、その後何もおきていないと思った。
「しょ、しょうがないでござるよ。美月ちゃんがけがしなくてよかったでござる。それにボ、ボクには何といっても今は神の励起が宿っているのでござる!」
ボクは彼女にも心配をかけないように、いつも通りのポーズを取る。けれど、ボクのオタ魂についてこれる好敵手が今はいないから、ちょっと恥ずかしい。
「……な、なんで?あんなにひどいけがを負ったのに!何にも傷ついていないビッチの心配?……うそでしょ……ブタの癖に……かっこよすぎでしょ」
最後の方はもごもごよいってよく聞こえない。
「とりあえずもう襲ってこないなら、問題ないでござるよ?さぁはやくもどったほうがいいでござる」
「……光圀くんは?」
「ボ、ボクは少し後にいくでござるよ。一緒に戻ったらボクが強姦魔やハイオークと間違われてしまうのでござる」
「ぷっ……それって経験則?」
「そうでござる」
ボクがそういうと、彼女は機嫌が直ったように戻って行った。やれやれ、やっぱり3次元女子の気持はまったく理解できないでござる。
やっぱりボクにはミルちゃんしかいない!
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