貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

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第61話ロドム

「ジェシカさん?どうしたの?」

ローズがいきなり出ていってしまったジェシカにのんびりとした声で話しかけると、ジェシカがそっと扉を開き顔を覗かせる。

「あら?私お邪魔じゃないかしら?」

ジェシカがカイルを見ると

「大丈夫ですよー今カイル様の寝癖を直してた所です」

ローズがちょうどいいとタオルを退かせると、カイルの寝癖も落ち着いていた。

「あっ!バッチリですよカイル様これで安心して戻れますね」

ローズは気にした様子もなくカイル様の髪を撫でた。

固く固まっているカイルに…

「ローズちゃん…無いわ…さすがにカイル様が可哀想だわ…」

ジェシカはカイルを憐れむように見つめた。

微妙な空気のまま下に降りるとジフさんが厨房に立っていた。

「ジフさんおはようございます!腰は大丈夫ですか?」

カイルが声をかけると

「ああ!一晩寝たらバッチリだ!」

ポンっと腰を叩くと…

「あいたたた…」

ジフさんが顔を顰める。

「ジフさん無理しないで下さい」

ローズが心配そうに声をかける。

「ワハハ!嘘だ!もう本当に大丈夫だよ」

屈めていた腰を伸ばす。

「なんだぁ~」

ローズがホッとすると

「さぁ飯食ったら王宮に戻るんだろ?沢山食べて行ってくれ!」

ジフさんが二人にご飯を大盛りによそうと

「どうしよう…こんなに食べたらクレアさんに怒られちゃうかも…」

ローズが心配そうに呟くと…

「ローズ…顔が笑ってるぞ…」

カイルがローズに囁くと、ローズはニヤついていた口元を隠す。

「まぁ、ここでの事は内緒にしておこう」

カイルが苦笑して言うと

「ありがとうございます!じゃあ遠慮なくいただきます!」

ローズはあっという間に大盛りのご飯を食べ終えるとお代りを要求していた…。

「ふー…お腹いっぱいです…」

ローズが満足そうにお腹をさする。

「そうだろう…大盛りの飯を二杯も食えば…」

カイルが呆れると

「いや…つい、食べられるときに食べておかないとと思ってしまって…」

ははっと笑うと

「では、そろそろ帰ろうか。あまり遅くなると二人が心配するからな」

カイルが立ち上がるとローズもそれに続く。


「ではジェシカさんお茶会当日よろしくお願いします」

ローズが頭を下げると

「任せておいて!」

ジェシカさんが頼もしく返事を返した。


二人に手を振って王宮へと歩いていると…

「あっ!君!」

ローズが突然声をかけられた。

カイルが庇うように間に入ると…

「あっ!ロドムさん」

そこにはお土産を買ったお店のロドムさんが心配そうにローズに駆け寄ってきた。

「止まれ!」

カイルが厳しい言葉でロドムを止めると…

「なんだ?君…また追いかけられているんじゃ…」

ロドムもカイルを睨みつける。

バチバチと火花を散らしそうな雰囲気に

「ちょ、ちょっと二人ともやめて下さい!カイル様この方がお土産届けていただいたロドムさんですよ!ロドムさんこの方は…友達のカイル様です」

「友達?」

ロドムが怪しむようにカイルを見つめる。

「友達なのに様付けて呼んでるの?」

ロドムがローズに聞く

「あっ…それは…」

ローズが言いにくそうにすると

「それもそうだな。ローズ、友達なんだから俺の事はカイルでいいんだよ」

カイルがローズに笑いかけると自分に向けた表情の違いにロドムが驚く…

「あぁ、なるほどね…」

カイルのローズへの思いを知り、納得してボソッと呟いた。

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