第56話芋煮

「すまねぇなローズ…」

ジフさんが寝ながら謝ると

「大丈夫ですよそれに怪我をさせてしまったのはこちらのせいですから。気にしないで下さい」

ローズはジフさんに笑顔を向ける。

「じゃあご飯の準備してきますね！」

「頼む…野菜とか肉は切ってあるからな。今回は客には申し訳ないが食べられれば文句もないだろう、ぶち込んでスープにでもしてくれ」

「せっかく泊まってくれている人に申し訳ないですから出来るだけの料理は作るつもりですよ！」

「そうか、ありがとうな。倉庫にある食材なら好きな物使ってくれていいからな！」

ローズは頷くと腕まくりをして厨房へと向かった。

ジフは痛む腰を擦りながら寝ていると…そのまま深く夢の中へと入って行ってしまった…。

「さてと…」

倉庫にくると早速なんの食材があるかあさってみる。

「あっ！これは使えそう！これも！これも！」

ローズは久しぶりの料理に気分が上がってきた！



バタバタバタ!!

忙しそうに歩き回る足音にジフは目を覚ますと…

「あっ…寝ちまってた…」

起き上がろうとすると先程より幾分腰の調子が良くなっていた。

ゆっくりと体を起こして立ち上がり騒がしい食堂に向かうと…

「おかわり！」

「こっちもだ！」

「俺も追加で飯を頼む！」

泊まりの客のおかわりの声があちこちから聞こえてくる。

「すみません…ご飯だけ食べれませんか？」

外からはご飯だけでも食べに入れないかと顔を覗かせる人もいた…

「ちょっと待ってください！外に並んでて貰えれば席が空き次第ご案内しますので！」

ジェシカが声をあげて答えると

「カイルさん！これ5番テーブルのお客さんに持っていって！」

「わ、わかった」

カイルがお皿を両手で受け取ると落とさないように恐る恐る運ぶ。

「待たせた」

テーブルに恐る恐る料理を置くと

「兄ちゃんありがとよ！でかい図体の癖に皿運ぶの慎重過ぎないか？」

テーブル客に笑われながらカイルも給仕を手伝っていた…。

「なんだ…この騒ぎは？」

ジフが唖然とその光景を眺めていると、ジェシカがジフに気がついた。

「ジフさん大丈夫？」

ジェシカが心配そうに体を見ると椅子を持って来てくれる。

「ここだと危ないから厨房に移動出来る？」

ジフは頷くとそっと手を添えながら厨房へと移動させた。

そこではジェシカの服を着てジフのエプロンを付けたローズがでっかい鍋を一生懸命掻き回していた。

「ロ、ローズ？何作ってるんだ？」

ジフさんが近づいて鍋の中を覗き込むと…

「あっ！ジフさん大丈夫ですか？これは私の領土でよく食べられてる芋煮です」

ローズが振り返りながら汗を拭う。

「倉庫の奥にたくさんあったので使わせて貰いました。ジフさん味見してみてくれますか？」

ローズがジフの分を器によそって差し出す。

「いい匂いだな…それにホッとする味だ」

「これがお客さん達が何だか懐かしい味だって大人気なのよ、もう人手が足りなくてカイルさんにも手伝ってもらったの」

ジェシカが言うとなれない様子でお客さんの対応をしているカイルが目に入る。

「外にも噂を聞いてご飯を食べたいって人が並んでいるのよ」

「私の領土の料理がこんなに受け入れてもらえて嬉しいです！まだまだありますからたくさんの人に食べてもらいましょうね」

ローズが言うと

「こうしちゃおれん！俺も手伝うぞ！」

ジフが立ち上がるとふらついて壁に手を付ける。

「ジフさん無理しないで！」

ローズがジフを支えると

「立ってるのがやっとじゃない…」

ジェシカが呆れて反対側を支えた。

「あっ！なら芋煮を混ぜておいてくれますか？座りながらで大丈夫なので無理のない程度で…」

「おお、そのくらいなら出来そうだ」

「よかった！それなら私も給仕にまわります！ジェシカさん頑張りましょう！」

ローズとジェシカは一人で困り果てているカイルの元に向かった。