貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

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第53話城下

「えっと…お茶会の用意の為に城下に出ても大丈夫でしょうか?」

ロビーでの勉強の後にスチュアートに聞いてみると…

「お一人…ですよね?それはやめておいた方が…私が行ければよいですが他の方の目がありますし…」

スチュアートがチラッと周りを見ると偵察に来ていたメイド達と目が合う。

「はぁ…念には念入れておいてよかったです…」

そうは言いながらもため息をつくと…

「あっ…そうですね。私の変わりに護衛を付けますのでその方と行ってきて下さい。この後部屋に迎えに行かせますのでそちらで待っていて下さい」

スチュアートさんが何かを思い出し笑顔で答える。

「わかりました…では…」

スチュアートさんに部屋まで送ってもらい待っていていると…

トントン…

部屋のノックの音に返事をすると…

「カイルです。スチュアートさんからローズを護衛するようにと…」

カイルの声に扉を開くと

「あっ…カイル様が頼まれたんですね!確かに事情を知ってるから動きやすいか…」

ローズは納得すると部屋へと招き入れ

「どうぞ、今準備致しますのでそちらで座ってお待ちください」

ローズはソファーを進める、しかしカイルはソワソワして…

「いいえ…扉のそばで待っていますのでごゆっくり準備してください…」

落ち着きのない様子に…苦笑して

「別に襲ったりしませんから、私といる時くらいのんびりとしていいんですよー」

「あなたになら…襲われても…」

カイルがボソッと呟くと…

「何か言いました?」

ヒョイっと顔を覗かせる。

「い、いいえ!」

「ふーん…ならいいですけど、カイル様はタイプじゃ無いから安心して下さい」

ローズはニコッと笑ってカイルに宣言した…。


用意が終わってカイルの元に行くと…座らないと言っていたソファーに深く座り込み元気の無い様子で顔を俯かせ沈みこんでいた…。

「カイル様?どうかしましたか?」

ローズが心配そうに顔を見ると、来た時にくらべて顔色が悪い…

「カイル様、顔色が悪いですよ…調子が悪いなら違う方に頼んで下さい」

ローズが言うと

「いえ…大丈夫です…行きましょう…」

元気の無い小さい声に

「カイル様…ちょっとよろしいですか?」

ローズはカイルのおでこを触る…しかし熱は無いようだった。

「熱は…ないかな」

近くで顔を見るとみるみると顔が赤くなる。

「やっぱり…熱があるんじゃ」

「いや!これは違うから大丈夫だ…さぁ行こう!」

カイルが部屋を出ようとするとローズがカイルの手を掴んで止める。

「無理しないで下さい」

少し怒っている様子のローズに

「どうしたんです…何を怒っているのですか?」

訳がわからずカイルが聞くと

「カイル様を心配しているんです。ちゃんと自分をいたわって下さい!私の事は違う方に頼んで今日は休んだ方がいいです。なんなら一人で行きますから!」

「なんでそんな事を言う…」

「友達が調子悪かったら心配するのは当然です!」

「友達…」

「ええ!大事な友達です!」

「大事…」

「あっ…すみません。失礼でしたね申し訳ありません…王都で友と呼べる方は余りいませんのでつい…」

ローズが下を向くと、カイルは慌てて

「いや!俺も君を大事に思っている。同じだ…」

カイルの言葉にローズは目を見開くと

「ありがとうございます」

嬉しそうに微笑んだ。

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