貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

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第36話女性不信

ロイ王子に問い詰められる

「あの時…カイル様の様子がおかしかったので」

ローズはカイルを心配そうにちらっと見た。

「どうおかしかった?」

「……ご令嬢方を恐れているように見えました、あまりに苦しそうだったので思わず…」

余計なお世話だったかとすまなそうにすると

「そうか…」

ロイが頷く。

「すまない…その通りだ。ロイ、彼女は悪くない。情けないのは俺なんだから」

カイルがローズを庇うようにロイに言う。

「別に僕はローズを責めようなんて思ってないよ」

「「えっ?」」

王子の言葉にカイルもローズも顔をあげると

「ローズはあの場で何一つ嘘はついていないからな!あそこで一つでも嘘をついていたら…罪に問われる事になっていたかもしれない」

カイルがローズの言葉を思い出すと…

「確かに…名前も出身も爵位も自分から男性とも女性とも言ってないな…」

「しかし…あの対応は男そのものだったがな」

ロイが令嬢達の反応を思い出し笑っている。

「スチュアートさんを真似て見ました」

「なるほど…」

「確かに…」

ロイとカイルがうんうんと納得する。

「スチュアートさん素敵ですからね!」

ローズが頬を染めると

「そうか…スチュアートが素敵…か…」

カイルが複雑な表情をする。

「余計な邪魔者が入ったがとりあえず戻ろう、クレアとスチュアートが心配する」

ロイがそう言って馬に乗ると、ローズとカイルも後を追った。その途中で

「私は…女性が苦手でな…」

カイルが前を向きながらボソッと呟くように話し出す。

「そうなんですか?クレアさんや私とは普通に話されているように見えますが?」

「子供と母と王妃様とクレアさんは大丈夫なんだ…他の女性は…特に令嬢が…」

「なるほど…私は令嬢では無いと」

ローズが頷くと

「ち、違う!何故かローズは大丈夫なんだ…」

「こんななりをしているからですかね?」

ローズが笑ってズボンを叩くと

「どんな姿でもローズなら大丈夫だ…」

カイルが真剣にローズを見つめた。

ローズはカイルの気の使った様子に微笑んで…

「何故…女性が苦手なのか聞いてもよろしいでしょうか?」

するとカイルは幼い頃のトラウマを話し出した。

ローズはカイルの話を黙って聞いていた…

「それはお辛い経験でしたね…」

ローズがそっと目を伏せるがカイルをじっと見つめると

「でも、さっきのご令嬢方はカイル様を誘拐しようとした人とは全くの別人です。彼女らを女性と一括りにせず、一人の人間として見てあげてはどうでしょう?」

「一人の人間…」

「ええ…犯罪者の肩を持つ気はありませんがあの時カイル様を誘拐しようとしていたのが男性なら?男性すべてを恐れましたか?」

カイルはハッとする。

「あの時いたのはただの一人の犯罪者です。女性ではありません、犯罪者なのです。その事でカイル様が恐れる必要はありません。そんな犯罪者に負けないで下さい」

ローズはカイルを力強く見つめると…

「そう…だな…」

カイルはあの時の光景を今でも鮮明に覚えていたが…なるべく考えないようにしていた。

しかし、女性がそばに来る事であの時の情景がフラッシュバックされていた。

しかし…ローズに言われてその時の事をきちんと思い出して見ると…あの時自分を恐怖に陥れた女は確かに一人だけ…あの人間だけ…

カイルはあの時の出来事を冷静に思い出すことができた…。

「なんて考えて見るのはどうでしょうか?」

ローズが照れながらカイルを見る。

「すぐには無理そうだが…そうだな…そう思ってみるようにしよう…」

カイルがローズに笑いかけると…

「よかった…」

ホッとしたように胸を撫で下ろす。

「これでカイル様の女性が苦手なのが少しでも良くなれば…」

「良かなれば?」

「私が女性だと堂々と言えますもんね!女性嫌いのカイル様が平気な女性など…女じゃ無いと言われかねませんからね!」

ローズがうんうんと頷くと…

「あっぶな!」

話を聞いていたロイが馬から落ちそうになっていた…

「ロイ!大丈夫か?」

「王子?」

カイルとローズが慌てて駆け寄ると…

「だ、大丈夫だ…」

体制を建て直して馬に乗り直す。

「全く…悩んでるこっちが馬鹿みたいだ…」

ロイは二人に聞こえないように呟くと…苦笑いしながら厩舎へと急いだ。





          

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