第30話ダンス

「さて、課題も順調に進んでいますので今日は違うレッスンを致しましょう」

「違うレッスン？」

ローズが首を傾げると…

「ダンスです」

「ダ、ダンス…」

ダンスと聞いてローズの顔が引き攣った。

「お茶会の審査で途中各々自分の得意とする事をお披露目致します…ローズ様は運動神経もよろしいようですのでダンスを選択してみましたが…不都合でも」

クレアさんがローズを見ると…

「わ、私…ダンスだけはどうも苦手で…」

気まずそうにするローズに一度踊ってみなさいとパートナー役をスチュアートが務めて1曲踊らせてみた…

「ローズ様、曲をよく聞いて下さい、テンポが早いです」

スチュアートさんが踊りながらローズにアドバイスをするがどうも上手くいかない…ようやく曲が止まるとどうにかスチュアートさんの足を三回踏むだけで終わる事が出来た…

「スチュアートさん…すみませんでした」

「いえいえ、大丈夫ですよ。ダンスで足を踏まれることなどよくある事です」

スチュアートさんが平気なそう顔をしてくれるが踏んだ時に顔を顰めたのをローズはしっかりと見ていた…。

(うっ…うっ…後で氷を持っていこう…)

ローズがガックリと肩を落として申し訳なさそうにすると…

「どうしましょう…これは思っていたより酷いですね」

クレアさんが苦い顔をする。

「ローズ様は他に何か得意な事はありますか？」

クレアさんに聞かれて考え込むと、パッと閃く！

「掃除と洗濯は得意です！」

「ご令嬢として得意な事ですよ！」

「ですよね…うーん…」

ローズが自分の得意な事をあげていくが…

「芋の皮剥きとか…薪割りとか…食べられる草を見つけるのが早いです…後は…」

「もうよろしいです…」

クレアさんが頭を抱えた。

スチュアートさんが苦笑して

「家事からは離れてみてください、他に好きな事やよくやっていたことなど」

あっ！ローズが顔をあげると

「馬と剣が得意です！」

笑で答える。

「馬？」

「剣!?」

スチュアートさんとクレアさんが声を出して驚いた…

「それは…男性なら良いですが…」

「令嬢は馬も剣もしませんよ…」

「そうですよね…向こうでは馬が無いと遠くにも行けませんので…小さい頃から教えられていました…剣も家を護る護衛も雇えなかったので…自分の身は自分で護るようにと父に教えられ…」

「ほう…それならば結構な腕前なのでは？」

スチュアートさんが興味を示す。

「ここに来るまでは毎日鍛錬を欠かさずやっておりました。父が何事も途中で投げ出すなと言っていたので…そのうちにやる事が当たり前になってしまいました」

あははと笑っていると…スチュアートさんがニヤッと笑う。

「どうでしょう…少し私と手合わせなど…」

スチュアートが提案すると…

「是非！」

ローズが直ぐに答えた！

「スチュアートさん！ローズ様！」

クレアさんが窘めると…

「やるなら見つからないところでやりなさい！」

思わぬクレアさんの言葉に…

「「はい！」」

二人は元気よく返事を返した！

「ではローズ様は少し着替えましょうね」

「では私も着替えて用意をしておきます、庭園の裏の方なら人目もつきませんからそこでやりましょう」

ローズは頷くと…久しぶりに体を動かせる事に喜びを隠せなかった…思わずスキップをしてしまうと…クレアさんに窘められてしまった。

「そうですね…さすがにスカートは不味いですからね…」

「家でやる時は弟の服を借りておりました」

「そうね、いっそ男装をしておけば誰もご令嬢だとは思わないわね」

クレアさんはサッと部屋を飛び出すとすぐ様服を持って戻ってきた。

「とりあえずこれを…大きい所はササッと縫いますから言ってくださいね」

「さすがクレアさんですね！そのスキル見習いたいです」

「ふふふ、ローズ様には必要ありませんわ」

クレアさんが褒められて笑いながら縫っていく

「えーでもこの契約が終われば私は領地に帰りますからね、そこでは必要です」

ローズの言葉にクレアの手が止まった…

「そうでしたね…ローズ様はいつかは帰ってしまうのですね…」

寂しそうに答える…クレアにとってローズといる生活が心地よいものになっていた…。

(寂しくなるわ…)

「寂しくなります…」

思っていた事を言われてしまう。

「クレアさんもスチュアートさんもいつかタウンゼントに来てくださいね！父と弟を紹介したいです」

「あらあら…私達が行ってもいいのかしら…」

クレアが笑うと

「勿論です！私の大切な人を私の家族に紹介させて下さい」

ローズの心からの言葉に…

「ええ…」

クレアは針の縫い目がよく見えなくなってしまった…。