貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

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第31話手合わせ

「用意はどうでしょうか?」

スチュアートがローズ達を迎えに来ると…そこにはどう見ても細身の男性が立っていた…

「おお…これは」

スチュアートが驚いて凝視すると

「へへ…」

恥ずかしそうに笑うローズがいた。

「少し線が細いですが…パッと見は男性の様に見えますね…でも…」

スチュアートさんがローズに近くと…

「笑うとやはり可愛らしい女性だとわかってしまいますね」

そう言って頬にかかる髪をサラッと除けた。

「そうですか?」

ローズが鏡を見るがそこには一人の男が立っているようにしか見えなかった…

「わかる人にはわかりますよ」

クレアさんも一緒になって鏡を見て頷く。

「あれ?クレアさんなんか目元が赤くないですか?」

ローズがクレアの顔みて近づくと心配そうに聞く。

「本当ですね、クレアさん大丈夫ですか?」

スチュアートも心配そうにクレアを見ているがクレアさんは慌てて…

「だ、大丈夫です!ほらそれよりも早くしないと勉強の時間が短くなりますよ」

「それはいけませんね」

スチュアートも慌てると

「じゃあ行きましょうか!」

ローズ達は三人で堂々と部屋を出ていった。


三人で広い庭園の裏手に行くと…

「ここなら人が寄り付く事は無いでしょう」

スチュアートが持っていた荷物を置くと

「私はお茶の準備をしておきますからお二人は怪我だけは無いようにお願いしますよ」

クレアさんが注意する。

「勿論です」

スチュアートがしっかりと頷いた。

二人で少しクレアさんから離れると…剣を構える。

(ほぅ…立ち方も様になっていますね…)

ローズの構えにスチュアートが感心していると…

「行きます…」

ローズは一歩踏み出すとスチュアートに突きをくり出した!

「ちょ!」

スチュアートはローズから来た突きをどうにかながすと…

「ちょっと待って下さい!」

ローズを一旦止める。

「どうしましたか?」

ローズは何が悪かったのかわからずに首を傾げる

「なんですか…さっきの突きは…」

「えっ…父に習ったのですが…そんなに酷かったでしょうか?」

ローズが自信なく下を向くと…

「いえ…逆です!素晴らしい…女性にしておくのが惜しいくらいだ…」

スチュアートさんの口調が崩れる。

「えっ?」

ローズがよく聞こえずに聞き返す。

「いえ…なんでもありません、すみませんでした中断させてしまい…さぁもう一度行きましょう」

「はい!」

ローズは再び剣を構えるとスチュアートに向かっていった!

二人の白熱した打ち合いを見ること無くクレアはお茶の準備をしていた…。

しばらくして二人が汗をかきながら戻ってくると…

「スチュアートさんってお強いんですね!一回も当てられませんでした…」

ハァハァと息を吐き整えるとスチュアートさんに尊敬の眼差しをおくる。

「いえ、ローズ様の方が素晴らしいです。この腕ならそこら辺の男性なら敵わないでしょう」

「そうでしょうか?私は父には全く敵わなくて…」

ローズの言葉に

「タウンゼント男爵は余程の腕の持ち主なのですね…是非ともいつか御相手願いたいですね」

スチュアートが笑って言う。

「是非相手をしてあげて下さい!スチュアートさんみたいな強い人が来たらきっと喜びます」

二人で笑って談笑していると…

「ほらほらお二人共汗を拭いて下さい、そのままでいたら風邪を召してしまいますよ」

クレアさんがタオルを渡すと…軽く汗を拭き取る。

「久しぶりに剣を握りましたが…体が覚えているものですね」

スチュアートさんの言葉にローズが今度は逆に驚く!

「スチュアートさん剣を握るのは久しぶりなんですか?」

「そうですねぇ…まぁたまに気晴らしに素振りはしますがここ最近はあまり…」

「そうなんですか…ならたまに私の相手をしてくれませんか?」

ローズが聞くと

「それは是非お願いしたいです」

スチュアートが嬉しそうに頷いた。

スチュアートさんとクレアさんがお茶の準備をしてる間に…ローズは二人から少し離れると剣を構えた…そして踊るように剣を振り回し始めた…

その姿をスチュアートもクレアも唖然として見つめていた…

流れるような仕草は美しくしなやかで力強い…男性とも女性とも取れる動きに二人は釘付けとなっていた…

ローズが剣を収めるように動きを止めると、その瞬間二人から溢れんばかりの拍手が送られた。

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