貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

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第9話カイルの憂鬱

「はぁ…」

カイルは珍しく仕事中にため息をついていた…その様子に親友のロイが珍しいと驚いて顔を見つめた。

「どうしたんだ?カイルため息なんてついて?」

「えっ?ああ…ため息をついていたか…気が付かなかった」

元気のない様子に少し心配になっていると

「お前が元気がないとなると…また女性絡みか?」

ロイが同情する。

「今度はどうしたんだ?また部屋にまで押しかけられて襲われそうになったのか?それともまた媚薬を飲まされたとか?後は…抱えきれない手紙が襲ってきたか?」

ロイが冗談混じりに聞くと

「ああ…どれも覚えがあるよ…だけどそんな事じゃない…」

「もっと酷いことが?」

ロイがカイルの答えにゾッと背筋が寒くなる。

「やはり女性は怖いな…俺はまだ婚約者なんて要らないよ…それに自分の相手は自分で見つけたい」

ロイもカイルの憂鬱が移ったように外を眺めていると橋から王宮に向かって歩いてくる女の子が目に入った。

「ああ…また来たようだ。王子様の婚約者候補…なのかな?それにしちゃあ普通の子に見えるな?」

ロイの言葉にカイルも何気に外を見ると…

「あっ!」

昨日見た女性が門番と話しているのが見えた!

「彼女だ!」

カイルは部屋を飛び出て急いで城門に向かった!

城門に着くがどこを見てもあの子はいなかった…

「どこに…」

もう城に入ったのか?

カイルが城下を探すか迷っていると…

「カイル様?どうされました、そんなに慌てて…」

門番が書状を手にちょうど戻ってきた。

そしてキョロキョロと何かを探すと…

「あれ?ここに女の子が居ませんでした?」

門番も同じ人を探しているようだった。

「お前は彼女と喋ったのか!」

門番の肩を掴んで問いただす

「い、いや…なんか王子の婚約者候補の方のようでした…」

「王子の?では例の婚約者候補を探す令嬢の一人なのか…」

カイルの顔が曇った。

「そのようです…しかし自分は分不相応だと…この話を辞退したいと断りに来たようです」

その言葉にカイルの顔が今度は少し明るくなる。

「それで、大臣に確認に行ったところ…容姿をお伝えしたらそのまま追い返せと…でももう居ないなら追い返す必要もありませんね」

門番が笑っていると…

「おい、お前…彼女の事はなんて伝えたのだ…」

カイルが顔を伏せて聞く。

「カイル様も見ましたか?彼女服はまぁ綺麗にしてありましたがどう見てもお古だし…髪も自分で梳かしただけでしたよ…靴なんかずっと歩いて来たんだがボロボロでした。その事を伝えたら王子には相応しくないと一喝してました」

「なんだと…」

カイルが不機嫌そうな声を出す。

「駄目だ…彼女が必要だ…今すぐ連れ戻してこい…」

カイルの言葉に門番が唖然とする。

「聞こえなかったのか?今すぐ彼女を連れ戻してこい!連れてこれなければお前の明日は無いと思え!」

カイルにギロっと睨まれると…

「は、はい~」

門番は急いでローズを探しに城下に走って行った…。

「俺にも王子にも興味がない女性…ローズ嬢…」

カイルは門番から受け取ったローズの書状を握りしめると…後ろ髪ひかれる思いで城へと戻っていった…。

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