貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

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第6話サービス

ローズは部屋に入ると言われた通りに鍵をかけた、そしてベッドに少ない荷物を乗せるとバタンと仰向けに倒れ込んだ…

「つ、疲れた…」

王都に着いてからようやくまともに休む事が出来た。

「少し…だけ」

ローズは瞳を閉じると眠りに落ちていった…


ハッ!

ローズが目覚めると…宿はシーンと静まっていた…外を見ると真っ暗で月が高く登っている。

どのくらい寝たんだろう…

ぐぅ~

腹の虫がなり出すと…

「この様子だと…4.5時間は寝ちゃったのかも…」

ローズはそっと部屋の外に出て階段を降りると…食事する場所の明かりは消えていてカウンターの所だけが明かりに照らされていた…

ローズはそっと近づいて小さく声をかけてみた。

「すみません…」

しかし返事はかえって来ない…やっぱり終わっちゃったか…

ローズがガックリと肩を落とすと…

グゥッ!

腹の虫が抗議するように大きく鳴いた!

その音に…

「誰だ?」

奥からシェフらしいおじさんが出てきた。

「あっ…すみません…寝過ごしてしまって…もう夕食は無いですよね?」

ローズがおずおずと聞いてみると…

「コインは持ってるのか?」

おじさんが仕方なさそうに聞いてきた。

ローズは顔を輝かせると

「はい!」

元気よくコインを見せた!

「しょうがねぇな…簡単なもんしか出せないけどいいか?」

おじさんが聞くと

「はい!ありがとうございます!」

ローズは嬉しそうに答えた!

ちょっと待ってろと言われたのでカウンターに座ってキョロキョロと周りを見ながら待っていると

「ほら、芋のスープとパンだ。あとは肉を焼くから待ってよ」

おじさんがドンと料理をローズの前においた。

「うわぁ!あったかそう!いただきます!」

ローズは手を合わせるとスープから口に運んだ!

「美味しい!おじさん美味しいです!玉ねぎの甘さが染みるわ~」

ローズがほっぺを抑えながら美味しそうに食べている。

「大袈裟なお嬢ちゃんだな…」

おじさんが苦笑しながら肉を焼いている。

「このパンもスープに付けると最高ですね!味が染みて柔らかくなるから食べやすい!」

あっという間にスープとパンをたいらげると…

「しょうがねえやつだな…おかわりは食べるか?」

おじさんが声をかけた。

「いただきます!」

ローズが喜ぶと…おじさんも美味しそう食べてくれるローズに悪い気はしなかった…。


「ふぅ…お腹いっぱい…。ご馳走様でした」

ローズは再び手を合わせた、おじさんはその様子を満足そうに見ていた。

「お嬢ちゃんは美味そうに食うな、作ったかいがあるよ」

おじさんが笑っていると…

「違うわ!美味しそうじゃないくて美味しいの!」

ローズは真剣な顔で訂正する。

「あっ…すみません」

興奮して立ち上がった事を恥じて座り直すと

「本当に美味しかったです…ご馳走様でした」

おじさんに笑いかけてお礼をいった。

「ハッハッハ!そんなに喜んでくれるんならサービスしたかいがあったな!」

おじさんが声をあげて笑う

「サービス?」

「いや、ちょっとだけな気にするな」

おじさんが食器を片付けようと手を伸ばすと…ローズがおじさんの腕をガシッと掴んだ!

「おっ?」

おじさんが驚いてローズを見る

「こんな遅くに来てサービスまで…おじさんお手伝いさせて下さい」

唖然としているおじさんを他所にローズは食器を掴むとカウンターの向こう側へと回り込む。

すると食器を洗い始めた!

「おい、おい…何してるんだ?おじょうさんは客なんだそんな事しなくていいんだぞ」

おじさんが止めようとすると…

「いえ、私だけ特別扱いを受けたなんてしれたらおじさんにも迷惑がかかるかも知れません。もしバレたら…その代わりに皿を洗わせた…って言えば大丈夫ですよね」

そう言ってローズはあっという間に皿を洗うとついでに洗い場をサッと綺麗にした。

「お嬢ちゃん…手際がいいな?」

いつもより綺麗に洗われた皿を確認するとおじさんが驚いた顔をローズに向けた。

「毎日家事をしていればこれくらい当たり前ですよ」

ローズはパッパッと手を拭くとカウンターからでた。

「では本当にご馳走様でした。朝はきちんと時間通りに来ますね!おやすみなさい」

ローズはおじさんに挨拶をすると音をたてないように2階へと戻っていく。

おじさんはそんなローズの様子にしばらく唖然としていた…

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