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俺はこの「手」で世界を救う!

ラムダックス

第49話


「あ、あなたは?」

目の前の巨人に話しかける。

「我は慈悲の神ラビュファト。人の子は皆我の愛によって救われる」

「あなたが……ラビュファト様?   じゃあ、私を助けてくれたのも?」

「その通り」

自らをラビュファト様だと名乗る巨人は女型だった。透き通る白い長髪が風もないのに靡いている。
髪と同じく真っ白な貫頭衣を着、左手には先端に楕円を斜めに切ったものを二つくっつけたような形をした飾りをつけた桃色の杖を持っている。

ラビュファト様が笑うと、私は言いようのない感動に心を奪われた。

「あ、あの、ありがとうございます!   私、死んでも返しきれない恩を……」

「畏ることはない。我は慈愛の神、人の子は皆我が子に等しいのだから」

「ラビュファト様……」

ああ、なんて澄んだお方なのか。これが神という存在。

「そちは地上に戻らなければならない」

「え?」

「ここは神の国と地上を繋ぐ部屋。あまり長くいては精神が徐々に壊れてしまうのだ」

「そんな……」

「残念なことに、そちの住んでいた村は壊滅した」

「そ、それはつまり」

「皆殺しだ」

「み、皆殺し……お父さん、村長も、クロンのお父さんお母さんもみんな?」

「その通りだ」

「嘘……嘘!」

「真だ。これを見るがいい」

ラビュファト様が杖をかざすと、私の目の前に大きな丸い鏡が現れた。

「いや……」

私は見たくないと思いつつも皆のことか心配で見てしまう。

村は至る所に大きな穴が空いており、家々は焼け焦げ煙が立ち込めていた。男の死体はグチャグチャに潰されており顔もわからず、女の死体はあちらこちらを陵辱された跡が見受けられる。

私の家……村長宅は丸い穴が奥まで貫通しており屋根の殆どが吹き飛んでしまっている。

最近新しく作られた銀行という建物だけが、不自然に綺麗なまま残っていた。

「……こんなの、酷すぎる」

わたしは溢れ出す涙を止めることができない。白い床にポタポタと垂れて行く。

「だが、現実だ」

「……いや」

「受け止めるのだ」

「いやっ!」

「生き残ったのは、そちだけ」

「いやああああ!」

私は叫び声を上げ続ける。だがそれでもやがて声が枯れてしまう。

「……ううっ、ううっ」

「辛かろう、悲しかろう」

「……はい」

「憎いか?   帝国が憎ましいか?」

「…………はい」

「では、力を授けよう」

「ち、力?」

「うむ」

ラビュファト様は再び杖をかざす。

すると、私の身体が淡い光に包まれた。

「……暖かい……」

心が休まる。壊れていた何かが治ってゆく感じがする。
体の力が抜け、頭の中がぼうっとなる。

「……憎しみの反対は、慈しみ。慈愛の心だ。そう、我は慈愛の神ラビュファト。そちに幸せが訪れるよう常に願っていよう」

ラビュファト様の姿がだんだんと霞んでいく。いや、私の視界がそうなっているのだ。

「……ラビュファト、様」

私は急に心寂しくなり、手を伸ばそうとする。が意に反して腕が動いてくれない。

「そうそう、そちの”枷”、解いておいたぞ」

その言葉を最後に、私は深い闇に包まれた。





「ん……?」

目を覚ますと、私はどこかへ寝かされていた。

「あ、起きた?」

「え?」

すぐ横に、緑髪の女性が寝そべっていた。

「ひっ!」

私は慌てて退こうとする。だが起き抜けで思うように身体を動かせない。

「ちょ、そんな怖がらないでよ。ね、いい子だから、こっちにおいで〜」

女性は両手をわきわきさせながら膝をすってこちらに近づく。

「だ、誰!   ここはどこ!   私に近づかないでっ!」

「……もう、しょうがないなあ」

やれやれ、と首を振りベッドからおり立ち上がる。

「わたしはガイアナガラ=ヴィクトレン=イグウォス=ワシト=エリザベシュト=エルフィ。この部屋・・の主人だよ。歳は二百四十七歳」

「え?」

ナニイッテルノ、コノヒト

「す、すみません、もう一度」

「ガイアナガラ。二百四十七歳、この部屋で暮らしているんだよ」

満面の笑みは変わらず、セリフも変わらない。
だがその喋っている内容が明らかにおかしい!

「に、二百四十七歳……ガイアナガラさんというお名前なのはわかりましたが……」

「あれ、エルフを見るのは初めて?」

「エルフ……?」

「あちゃ、そりゃ信じないか。ほら、周りを見てごらんよ」

私は言われた通り部屋を見渡す。
六方すべてが木の幹が絡み合ったような素材でできており、家具も同じような木製と見受けられる。

私が寝ているベッドは上に同じ大きさの天井が付いており、そこからカーテンが垂れ下がっている。

よく見ると、家具の一つ一つが繊細な造りをしているのがわかる。全て最高級品だと言われても間違いなく信じるだろう。

「……木?」

「そう。エルフは森に住む種族。そして私は、その王女様ってこと!」

「え?」

え?

「王女……さま?」

頭の可哀想な人なのかな?

「ちょ、ちょっとちょっと、なんでそんな蔑んだ目で見てくるの!?   本当だってば!   ほら、耳を見てよ」

「耳?」

ガイアナガラさんが髪を掻き分け右耳を見せつけてくる。

「!!」

耳は細長く、先が尖っていた。そして耳たぶには小さなイヤリングが。

「このイヤリングは、王族に伝わる秘宝の一つなの。私は魔力操作に長けているから、成人するときにこの『ビッグバレイ』を託されたんだ」

「はあ、そうですか」

「……うーん、いまいち信じられないみたいだね?」

「それは、だって……証拠が全然ないし」

み、耳も付け耳とか?

「じゃあ、これでどう?」

--チリンチリン

机の上に置いてある鈴を鳴らす。と、ベッドの反対側の壁につけられている扉から女性が入ってきた。
私は咄嗟にベッドの死角へ隠れ、顔を少しだけ出す。

「はい、どうなさいましたか?」

女性は真っ青な髪を後ろでくくっており、肌は白い。また、ガイアナガラさんと似た服を着ている。長袖のローブの上に絵本で見た王子様が羽織っているようなマントを被り、下はズボンとサンダルだ。
ただ違うのは、ガイアナガラさんは髪の色と同じ全身緑色の服を着ているのに対し、女性は全身薄灰色なことだ。

そして耳が、尖っていた。

「私は誰?」

「……はい?」

ガイアナガラさんが首を傾げそう言うと、女性がゴミを見る目になった。

「あっ、いや、そうじゃなくて、このに私が本当に王女様だと言うことを教えてあげて欲しいんだよ」

「?   どこにそんな人が?」

「えっ?」

ガイアナガラさんがこっちを振り向いたので私は顔も引っ込める。って、なんで隠れてるんだろう私?

「おーい、出ておいでー!   怖くないよ、痛くないよ〜」

ガイアナガラさんの声が近づいてくるのがわかる。
仕方なく、少しずつ顔をのぞかせる。

「ううっ」

「お、いたいた。この娘だよ」

間近に、ガイアナガラさんの顔が見えた。

「わっ」

と、脇の下から体を持ち上げられる。

「あ、あうっ」

じたばたと手足を動かすが全然抵抗できない。

「それは……人間?」

薄灰色の服を着た女性は、顔つきが一気に変わる。

「姫様!   その人間は一体!?」

「拾った」

「はあっ!?   な、何を仰っているのですか!   今すぐ捨てて来なさい!」

あの、動物扱いですか私……?

「え、あの?」

「ああ、大丈夫大丈夫。わたしが責任を持って面倒見るからさ、ね?」

ガイアナガラさんの顔を見上げると、そう言って笑い返して来た。

「駄目です、ここがどこかわかっていらっしゃるのですか?   神聖な世界樹の麓なのですよ!   人間が紛れ込んだと分かれば、ラビュファト様がなんと仰ることか!」

セカイジュ?   それに今、ラビュファト様って。

「一人くらい大丈夫でしょ、ラビュファト様もこんなことくらいで怒らないって。よしよし〜」

ガイアナガラさんが頭を撫でてくる。くすぐったい。

「いけません、このことは直ちに陛下に奏上して来ますので」

「え、パパに!?   それは駄目っ」

「いいえ、ガイアナガラ様がお考えを変えられないのであればそうするしかありません」

「でもでも」

「でももだってもありません。それでは」

女性が歩き出そうと後ろを向く。

そのとき、部屋の左側にある開けっ放しになっていた窓から、風が吹き込んで来た。

「うわっ」
「きゃっ」
「くっ」

皆一斉に顔を下に向ける。

「……今のは、風?」

「そんな、まさか!」

何を驚いているのだろう、二人がびっくりした顔をする。

「あの、風がどうかしたのですか?   確かにちょっと強めでしたけど」

「このエルフの国には、風が吹かないんだよ。世界樹が展開する障壁で守られているからね。まさか、障壁に問題が?」

「そんなはずは。確認して参りましょうか?」

「うん、頼んだ」

「畏まりました」

女性は私のことをちらりと見た後、部屋から急いで出て行く。

「……ふう、なんとか乗り切ったね……でも風が吹くだなんて、まさか」

私のことをベッドに降ろす。
そしてガイアナガラさんが笑顔から一転、真剣な顔に変わる。

「?」

「……あれは……ラビュファト様が……?」

ぶつぶつと何かを呟いている。

「……ん?」

そして、私の顔をじっとみつめ始めた。ガイアナガラさんって、とても美しい人だな。

「ちょっといいかい?」

「はい?」

「後ろを向いてくれるかな」

「はい、どうぞ」

言われた通り、ベッドから立ち上がり背中を見せる。

「!!!!   これは!!」

「ひゃっ」

ガイアナガラさんが首筋を撫で始めた。

「く、くすぐったい!」

「もうちょっと待って!」

そのまま左右に擦り続ける。

「……間違いない、”印”がある!」

ガイアナガラさんが再びあの机に置かれた鈴を鳴らす。だが今度は違う鈴だ。音色も、少し高い気がする。

--コンコン

「入って」

「失礼致します」

すると、さっきとは別の色の服を着た女性が現れた。
女性は部屋に入るやすぐに両膝を地面につけ、両腕を指先をきっちり揃えて×の形に交錯させた。

「殿下、如何なさいましたか?」

デンカ?



「皆に伝えるのだ、ここにラビュファト様の使者が現れたのだと!!」



          

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