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俺はこの「手」で世界を救う!

ラムダックス

第45話


--チュンチュン!

「ふふ、お帰り」

部屋の窓から白い小鳥が入って来、縁から身を乗り出して空を眺めていた少女の肩に止まった。

「……ああ、私の愛しい人」

少女は小鳥の頭を撫でながら少年の顔を思い浮かべるだけで、恍惚感に満たされる。

「でも……お邪魔虫が三匹も……!」

「チュイッ!」

グチャリ。

小鳥の首が床に落ちる。肩に止まっていた身体は、窓から外へ落下して行った。

「ふう。これがあれば……ふふふふ」

少女は小鳥の口から半透明の丸い赤い塊を取り出す。



「--待っていてくださいね、クロン様・・・・。ふふふふ、ふふふふふ!」









「お前ら、いよいよ今日からスキルの実践だ!   先ずは、それぞれの力量を確かめさせてもらう!   この的となる自律人形ゴーレムをそれぞれが思いつく方法で機能停止にしろ!」

春の三月四日、一ヶ月に及ぶ基礎鍛錬も終わり、遂にスキルの授業を行う日がやって来た。
教師は引き続きヨッスル先生、ここからは男女混合の授業なので女子担当だった先生もいる。
主に取り仕切るのはヨッスル先生のようだ。

模擬戦場には、入学試験の時と同じく人形が何体か置かれている。
但し、普通の人形ではない。”ゴーレム”と呼ばれる魔導技術によって作られた”魔道人形”という種類の動く人形だ。攻撃・防御共に動作可能な、最新鋭サイシンエイ機種キシュなのだという。

灰色の人形は人型ではあるものの、やけに角ばっている。小指をぶつけたら痛そうだ。

『サー!』

俺たちは息ぴったりに返事をする。女子も声が揃っているところから、同じような厳しい鍛錬を受けて来たのだろう。

「ただし、攻撃系のスキルでないものを持つ者もいる!   そちらも機能を停止させることには変わりはない。が、補助系のスキル持ちは入学式と同様この動物たちにスキルを使ってもらう」

ゴーレム群の横に、檻に入れられたうさぎや小鳥など何体かの生き物が置かれていた。

「また、この模擬戦場では既に防御装置が張られている。多少手元が狂ってもここが壊れることはない、安心してくれ。では最後に、補助担当の先生を紹介する。女子の皆は知っているだろうが、男子は知らないだろうからな!   ホサリ先生お願いします!」

「はい。男子の皆さん、ホサリです。ヨッスル先生は授業の進行をされるため、個別に何か困ったことがあれば、私に相談してください。よろしくお願いします」

ホサリ先生は茶色い髪を後ろに一束に結んだ小柄な女性だ。体型はフォーナさんタイプだろうか。

『はい!』

「よろしい!   では早速始めよう!   時間節約のため模擬戦場を二つに別けるから、まずは客席に上がるんだ!」

二つに別ける?
俺たちは言われた通り、一度戦場部分から建物中に戻り客席に上がる。

「どういうことだろうか?」

「さあ?」

カッツも訳がわからないといった顔だ。

全員が揃い、ホサリ先生が客席後方にある大きな箱の前に立つ。そして何やら操作しだしだ。

すると--


----ゴゴゴゴ!



「うおっ!?」

突然、戦場部分の土が半分に割れ、その割れ目から上の方が半円になっている、大きな白っぽい透明の壁がせり出して来た。

「なんだありゃ」
「すげぇ」
「国立学園って……」

壁はやがて防御装置が生み出している障壁とくっつくようにして止まった。

「……大丈夫です、ヨッスル先生」

「わかりました!   お前ら、見ての通り今日の授業は二人ずつスキルを使ってもらう!   というわけで特別な方をお呼びした!」

特別な方?

「お願いしますっ!」

ヨッスル先生とホサリ先生が、客席の出入り口に向かって跪く。

暗がりから二つの人影が現れた。

「やあ、こんにちは!」
「ほっほっほ、元気かいな?」

な、なんと!

「学園長!?」
「そ、それに……ランガジーノ殿下!?」

『えええええええ!?』

まさかお偉いさんが二人も現れるだなんて!
俺たちは慌てて先生と同様跪いた。

「ははは、急に呼ばれて少しびっくりしたが、君たちの顔を見るとやる気が出て来たよ。今日はじっくりと見定めさせてもらうからね!」

ランガジーノ様は歯を見せ笑う。

『きゃー!』

女子たちから控えめながらもきゃっきゃと黄色い悲鳴があがる。

「わしも学園長として、今年の一年生のスキルがどんなものか見させてもらうよ。入学試験の時は用事があって出られなかったからね、実に楽しみだわ」

どう見ても少女な国立学園のトップは、ない胸を張りかっかっかと笑った。

「という訳で、今日はこのお二人にそれぞれ一面ずつ担当し、評価してもらう!   俺は進行に徹するため、甘い評価は決してくだされないと思え。気を引き締めてやるように!」

『はいっ!   よろしくお願いします!』

「「よろしく」」

「ではまず、出席番号の一番と、二番……は飛ばして三番、それぞれの面に向かえ」

「はい!」

出席番号一番、アナスタシアと、出席番号三番、ドクメスキス君が立ち上がり戦場部分へ向かう。

ドクメスキス君はイクイーギ公爵家の次男だ。イケメンで頭が良く、優しい短髪の男の子で、学年を問わず人気も高い。一体どんなスキルを使うのだろう。

そういえば、フォーナさんがスキル一覧表を持っていたのだったな。見せて貰えば良かった。でも最近、ちょっとそっけないんだよな。天聖教のことを引きずっているのだろうか?

二人がそれぞれの面に降り立つ。アナスタシアを学園長が、ドクメスキス君をランガジーノ様が見るようだ。

ヨッスル先生は拡声器を手に持つ。


「では、始め!!」



俺たち観客は、透明な壁によってわけられているちょうど真ん中あたりに座っている。そのため両方の生徒の様子を確認することができる。
学園長は右側に。ランガジーノ様は左側に座る。生徒たちは自由に座っていいことになっているため、いつものメンツで固まることにした。

そして先生の合図と同時に、ホサリ先生があの大きな箱で何か操作をし、消滅していたゴーレムの目が青く光った。

「起動シマス」

ゴーレムはそれぞれ一体ずつ相手にするようだ。アナスタシアの方を見ると、彼女らしく自分の身長の1.5倍はある相手にも関わらず、物怖じせずに手を構え戦闘態勢を取っていた。

アナスタシアは確か、ドレインとかいうスキルだったな。生命力を吸い取るとか。でも機械相手にどう戦うつもりだ?

「起動シマス」

ドクメスキス君はというと、ゴーレムと正面向かって対峙しているのは同じだが、なんの構えも取らずに唯突っ立っているだけだ。本当に一体どんなスキルなんだ?

「「排除、開始」」

ゴーレム二体がそれぞれの目標へと向かって動き出す。灰色の巨体が見た目以上の速さで動く。もっとドスンドスン動くのかと思ったが、意外と軽い動きだ。ガチャ、ガチャ、といったところか。

「<吸収ドレイン!>」

アナスタシアはなんと、そのまま得意のスキル、ドレインを使った!
果たして効果はあるのか!?

「ガガ、ガ……テ、テイ……シ……」

アナスタシアに向かっていたゴーレムが、腕を振り上げた姿勢で固まった。どうなったんだ?

「あれは!   ……そうか、魔力を吸い取ったのじゃな!」

学園長が叫ぶ。

魔力を……なるほど!
ゴーレムは魔導技術を使った人形、つまりはサイシンエイといっても所詮は魔導機械なのだろう。魔導機械は魔力が無ければ動作しない、ゴーレムにとっての生命力である魔力を吸い取ったということか!

これはスキルの応用だ。中々便利なスキルだな。

「そこまで!」

学園長が言う。と、アナスタシアは一度礼をして客室へと戻るため、建物の中に入っていった。




一方のドクメスキス君はと言うと、いつのまにかゴーレムの周りをくるくると回っている。何をしているんだ?

「なるほど、相手に動きを読まれないようにしているんだな」

ランガジーノ様が呟く。

「どう言うこと?」

隣に座るプッチーナに聞く。

「……一定に回っているように見えて、少しずつ速さや足を踏み出すタイミング、ゴーレムとの距離を変えている。相手にとったらいつ前に出て攻撃してくるかわからない」

「なるほど」

確かに、緩急がみえる。

と、ドクメスキス君がピタリと動きを止めた。

「<蛇行ステップ!>」

叫んだ瞬間、右に左へと交互に大きく飛びながら俊足で移動し始める。ゴーレムはかろうじて付いてきていた目の動きもついに追えなくなったようで、キョロキョロと辺りを見渡すばかりだ。
因みに当たり前だが、俺の目でも見えない速さだ。



「----<ザン!>」



声だけがなんとか聞こえた。
数秒ののち、ゴーレムと背中合わせになるようにドクメスキス君が現れる。背中と足を曲げ左手を手刀の型にしているのがわかる。まるで走る一瞬を切り抜いたかのような格好だ。

模擬戦場を静寂が包む。そして。

ゴーレムの身体がバラバラに砕け散った。

「そこまで!」

ランガジーノ様が合図をし、ドクメスキス君はスッと身体を伸ばした後、客先に向かって礼をし、出入り口に消えていった。

「い、いまのは?」

プッチーナとは反対側に座るカッツに訊ねてみる。

「わ、わからん。恐らくは斬撃系統のスキルだろうけど…なるほど速すぎて見えなかった」

「ああ、俺もだ」

他の生徒達も似たような感想のようだ。

「……推測だけど」

プッチーナが言う。

「あの”手”を使って、ゴーレムの身体を切り刻んだんじゃないかと。左右に移動しながら相手を撹乱したのち、一気に微塵切りにしたのだと思う」

「あの手で、ゴーレムを?   でも、どう見ても人の手で切ることができる硬さじゃなさそうだが」

「……それができるのが、スキルの凄いところ。学年三位は名ばかりじゃない」

「そう言われると、頷くしかないが……」

人知を超えた力であるスキル、だからこそそれらは”異能”と呼ばれるのだ。特殊ではなく異なる力。人の持つものとは全く隔絶した能力、その力を持つものこそが、俺たちスキルホルダーなのだ。

改めて、スキルの凄さを間近に感じたのであった。




「では次、三十八番、ロラ。そして三十九番、カッツ!」

「「はい!」」

ついにカッツの出番だ!   反対側の面に行くは、ロラ・オゥさん。オゥ騎士爵家の一人娘だ。

「頑張れよ!」
「ファイトですっ!」
「……かんば」


「おう!」

カッツは意気揚々と戦場部分は降りていった。

「では、始め!」

「「起動シマス」」

二体のゴーレムが同時に起動する。ロラさんは俺たちから向かって右側、カッツは左側だ。

「いきなり行くぜ!   <正方切断マスカット!>」

カッツが両手の親指と人差し指を使って四角い穴を作る。そしてそれをゴーレムに向け、スキル名を唱えた。

と、その穴からゴーレムの身長と同じくらいの長さの斬撃が、縦横三本ずつ同時に飛び出し、どんどんとゴーレムへ伸びてゆく。



--そしてゴーレムの身体を一瞬で十二分割にしてしまった。



「すげえっ!」

ゴーレムの身体はガシャガシャと音を立て流したら崩れ落ちる。分断された切れ目は綺麗に切断されていた。

「どうよ!」

カッツは拳を握り天に向かって打ち上げる。

「うむ、素晴らしい出来じゃ」

学園長も納得の出来のようだ。

「すごいです!   一瞬でバラバラに!」
「……頭は軽いけどスキルは感心する」

俺の両隣に座るアナスタシアとプッチーナも笑顔だ。




一方ロラさんは。
両腕を広げ、ゴーレムと対峙する。

「……はあっ!   <七色の幕カラフルカーテン!>」

そう叫ぶと同時に、ゴーレムの上に、虹色のカーテンのような幕が現れた。幕は風でなびいているかのようにユラユラと揺れている。

そして。

ゴーレムの身体が足元から凍りつきはじめる。
ゴーレムは逃げようともがくが動くことができない。そしてついに全身が凍りついた。

「パンッ!」

続いてロラさんが両手を打ち鳴らす。

すると、ゴーレムが氷の粒に砕け散った。

粒は宙を舞い、虹のカーテンに反射して様々な色に輝く。

「綺麗!」
「こっちも凄いな……」
「……キラキラ」

俺たちだけでなく他の生徒も感動の溜息をつく。

「……ふう」

ロラさんは暫く手を合わせたまま止まっていたが、軽く息を吐いた後、礼をして出入り口に向かった。

「うん、素晴らしい。ただ攻撃するだけではなく、このような芸術的な要素も含むとは。色々な使い方が想像できて実に面白いね」

ランガジーノ様がうんうんと頷く。

「うむ。では最後だな!   四十番、クロン!」

!   つ、ついに俺だ!

「はい!」


          

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