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俺はこの「手」で世界を救う!

ラムダックス

第41話


「今度こそ!」

開始の合図とともに、カッツが一戦目と同様飛び出す。

「馬鹿の一つ覚えが!」

だが、ドンダルマに難なくと受け止められかける。

しかし、カッツは直前で足を踏ん張り、振り下ろしかけた剣をピタリと止めた。

「なにっ!?」

「おおおお!」

そのままドンダルマの左横に廻り、カッツの剣を受け止めようと頭の上に掲げていた左腕に模擬剣を打ち付けた。

「ぐおっ!」

打ち付けられる衝撃と痛みを受けたドンダルマが、反射的に剣を手から離してしまう。

「もらった!」

それを見たカッツは勝負をつけようと喉元に剣を突き出した。

「ふっ」

「なにっ!?   うわっ!」

だが、ドンダルマは息を大きく吐き出し咄嗟に身体を後ろに倒す。カッツの剣は反ったその胸をかすり通り抜ける。
ドンダルマは右腕を動かし突き出されたカッツの左腕を掴み、一緒に地面に倒れこんだ。

「おらっ」

「ぐっ」

ドンダルマが勢いのままカッツの腹に膝蹴りを入れる。そして立ち上がり、一度互いの距離を置いた。

「卑怯だぞ!」

俺は声を荒げてしまう。

「なんですって!?」
「卑怯なのはそっちでしょ!」
「ドン様がんばれー!」

あっち側にいる取り巻きが応戦してきた。

「何をおっしゃるのですか、そもそもこの決闘は、そちらからふっかけてきた”喧嘩”でしょう!」
「メス猫が三匹……うるさい」

アナスタシアさんとプッチーナまで加わる。



「外野は黙れ!」



だが、主審であるティナリア先生が一喝し、俺たちは黙ってしまう。

「ドンダルマ、剣以外の攻撃は禁止だ!   次にやったら失格にする!」

「はあ、はあ……わ、わかりましたよ、ふっ」

「くっ……い、いてぇなぁおい……」

ドンダルマは息を荒くしながらも、おなじみの髪をかきあげる仕草をする。カッツはこの間にどうにか立ち上がった。

「両者、もう一度位置について!」

ティナリア先生の合図で二人が開始位置に戻る。そして剣を構えた。

「始めっ!」

合図と同時に、今度はドンダルマが飛び出す。

「さあ、すぐに決めさせてもらうよ」

両手でつかを持ち、突きの姿勢を取る。身体を屈め突進し、カッツの足を狙うようだ。これは躱しにくいな。

「なんの!」

カッツは半身を更に深くし右足を前に出す。ドンダルマの進路にわざと見せつけるようにした。

「馬鹿め、死ねっ!」

ドンダルマはカッツに激突する直前、川の飛び石を渡るかのようにカクカクと相手の立つ場所を左回りに迂回し背中側へまわり込む。

「--かかったな!」

だが同時に、カッツが出していた右足を引き、その勢いのまま身体を右回りに回転させ、屈んでいたドンダルマの顔めがけて腹の面でおもいっきり剣を打ち付けた。

「なっ」

回り込んでいたドンダルマは、勢いを殺すことができず、自分の移動する速さとカッツの剣を叩きつける勢いを顔面でもろに受けてしまった。


「かっ……」


ピタリと動きを止め、そしてぐらりと体が揺れて地面に倒れこんだ。

「……そこまで!   判定をお願いします!」

ティナリア先生が手を挙げて決闘の終わりを告げる。カッツは自分の開始位置に戻る。

「「なん、だと」」

教頭とエセスナ先生は、呆然と二人のことを見る。

「判定を、お願いします。お二人とも?」

「「ぐ、ぐぬぬ!」」

ティナリア先生が催促すると、二人は渋々カッツを差した。

「勝者、カッツ!   二本先取によって、この決闘は一年一組三十九番、カッツの勝利とする!」



『や、やったー!』



俺たちは喜びの声と共に、拳を天に突き上げたカッツのもとへと駆け寄る。

「やったな、カッツ!」
「おめでとうございます!」
「……よくやった」

「ああ、勝っちまったぜ!   応援ありがとうな、みんな」

カッツが親指を立てる。

「ドンさ……ま……?」
「大丈夫……ですか?」
「あっ……」

取り巻き三人がドンダルマに近寄る。が、その顔を見た瞬間心配そうにしていた表情を真顔に変えた。

「大丈夫なのかこいつ?   うえっ、なんじゃこりゃ」

俺たちも近寄る。カッツが顔を覗き込むと、驚いて、しまったという風に口元を手で覆った。

ドンダルマの顔は鼻が潰れており、歯が何本か折れて両方から血を垂れ流していた。その微妙に整った顔も剣を打ち付けられた衝撃からか歪んでしまい、今ではすっかり面影をなくしてしまっている。

「……行きましょうか」
「ええ、そうしましょう」
「カッツ様……よく見たらかっこいいかも」

取り巻き達は俺たちのことを一瞥し、さっさと歩いて建物の方へ帰って行く。

「なんだ、一体?」

カッツは三人の様子を不思議に思っているようだ。だがまあ、こんな顔になっちゃえば、幻滅するだろうな。
……少し同情……はできないや。ざまあ。

「先生!   とりあえず先ずはドンダルマさんを!」

「うむ、そうだな。教頭先生、お願いします!」

「わ、わかった!」

教頭は引きつった顔で頷き、太った身体をぶよんぶよん揺らしながら訓練所備え付けの医務室へ向かう。

隣に立つエセスナ先生は、俯いて両拳を握り立ち尽くしたまま微動だにしない。


「おのれ……」


ん?   先生が体を震えさせる。

「なんだ、エセスナ。まだ負けを認められないのか?」

ティナリア先生が近づく。

「よくも……よくも……!」

「よくも、なんだ。俺の生徒を負かしてくれたな、と?」

「いつも俺の邪魔をしやがって……」

「邪魔だと?   いつも絡んで来るのはそっちからじゃないか。学生の時からずっとちょっかいかけてきてさ」

ティナリア先生が眉を潜める。ティナリア先生はこの学園卒業生だ。ということは、エセスナ先生も学園生で、二人はその時からの知り合いだったということか。



「作戦が……さくせんが……オオオオオオオオ!」



『っ!』

エセスナ先生の様子がおかしい。口を大きく開け不気味な声を出し、更に目が真っ赤に光っている。

「お前達、下がれ!」

先生は俺たちをかばうように片腕を伸ばす。慌てて二人から距離を置いた。


「ティナリア……オレノモノニナルハズナノニ……ウオオオオオン!!」



一体どうしたというんだ!?
エセスナ先生の身体が盛り上がり、衣服が破ける。金髪だった髪の毛は黒くなり逆立ち、獣のように目尻切れ目が入る。
口からは牙が生え爪が熊よりも鋭く長く黒光ったものとなった。

「医者を連れてきましたぞおおお!?   ば、ばけものおぉ!」
「きゃぁ!」

医務室から一人の女性を連れて戻ってきた教頭が尻餅をつき、女性は足がガクガクと震えその場に座り込んでしまう。

「オレノティナリア……ゴアアッ!」

エセスナ先生だったナニカは身長が二倍ほどになっており、一歩歩くだけで地面が揺れる。
呆然と見上げるティナリア先生へ大股で近づき、その凶悪な手を伸ばす。

「先生っ!」

「っ!」

俺の叫ぶ声で我に返ったのか、咄嗟に横に飛び退ける。先生のいたところを鋭利な爪が空振り地面をえぐる。

「お前達、誰か応援を呼んで来るんだ!」

「はいっ!   私が!」

アナスタシアさんが駆けて行く。

「ニガサナイゾ!」

「えっ、やあっ!?」

だが、それを見たエセスナがアナスタシアさんを掴む。制服が裂け、掴まれた時に爪が当たったのか腕から血が吹き出る。

「アナスタシア!」

プッチーナが大きな声で叫ぶ。

「グオオ……ヨノオンナハオレノモノ……ティナリア、コッチニクルノダ」

「黙れ、アナスタシアを離すんだ!」

ティナリア先生は模擬剣を手に取る。俺たちもすぐさま戦闘態勢をとった。

「ハムカウトイウノカ……フォオオ……」

なんだ、あれは!

エセスナの口元に黒い塊が集まってゆく。

「くらえ!   <光あれビーム!>」

俺はビームを塊に向かって放つ。だが何故か、塊に吸い込まれたかのように光が途中で消えてしまった。

「!   みんな、避けるんだ!」

「はいっ!」

先生の合図で、俺たち四人・・はできるだけエセスナから離れようと建物の裏に隠れる。

だが、ドンダルマを助けようとしている教頭が置き去りにされてしまった。

「ムフフ……マズハオマエダ。ガアッ!」

「えっ!?   わ、わた----」


--ゴオオオオオ!!


「ひゃっ」

「プッチーナ!」

振動で転けそうになったプッチーナを胸に抱き庇う。
建物の壁から顔を出して訓練所を覗くと、黒い炎が場を包んでいた。暑さを感じ慌てて顔を引っ込める。

やがて炎が収まり、視界が開ける。
訓練所の地面は真っ黒に焼け焦げており、そこには、二つの黒焦げたナニカが倒れていた。

「すげえ……」

カッツが呟く。

「あんなの、どうしろって言うんだ?」

隙を見てビームを撃ち込むか?   だが、先ずはその隙を作らないといけない。それに黒い塊には効かないみたいだし、発動させないようにしなければならない。プッチーナのスキルも効かなさそうだし……

いや、まだカッツのスキルがある。それにどんなものかはわからないが、先生もスキル持ちのはずだ。

「クロン、プッチーナ、カッツ。お前たちは私が良いというまでここにいろよ!」

と、先生が立ち上がり剣を構えた。

「えっ、先生は!」

「私は……あいつを止めて来る!   お前達に無理はさせない!」

そして建物の陰から飛び出す。

「せん!   ……せい……くそっ」

まさか一人で行ってしまうだなんて。俺たちを巻き込んだ責任を感じているのかもしれない……
でも、あんな相手に一人でだなんて、無謀にすぎる。

「…………クロン」

「おいクロン、どうするんだよ」

「どうすると言ったって……助けに行くしかしかないだろ。なあ、カッツ。スキルは使えるのか?」

「ああ、勿論さ。もう足の痛みも引いたしな。十分動けるぞ!」

「そうか……プッチーナは、どうするんだ?」

「……私は、助けを呼んで来る。アナスタシアも心配だし、先ずは一人でも多くこちらの戦力を整えないといけない」

「そうか、わかった。頼んだぞ」

「……うん」

プッチーナはエセスナに気づかれないように、出来るだけ陰になっているところを通り、なんとか学園本体の方へ抜け出して行った。

「ティナリア先生がいつまで戦えるかもわからない。今のうちにエセスナの不意を打つ作戦を考えよう!」

「おう!」








「エセスナ、こっちだ!」

私が飛び出すと、エセスナがこちらのことを見た。

「オオ、キタカ、オレノツガイヨ」

「先生!   危ないですよ!」

「何を言っている、エセスナ!   頭だけでなく遂に顔までおかしくなったか!   まるで獣だぞ!   アナスタシア、安心してくれ。私の大事な生徒だ、必ず助け出してやるからな!」

剣先をエセスナに向け叫んで挑発を繰り返す。

「ムフフ、オレノカオガ?   ナニヲイウ、ムカシハホレテイタクセニ……ソレニコノメスハモウオレノモノ。オマエタチニハコノスバラシイコダネヲサズケテヤロウ」

「いやあーっ!   や、やめてっ!」

エセスナの両胸から股間のアレが二本も生えて来る。そしてアナスタシアの身体に擦りつけた。

「ふざけたことを抜かすな。これ以上話をしていても意味がない……くらえ、<地獄の業火ヘルファイア!>」


--ゴオオッ!


スキル名を叫ぶと、エセスナの足元から火柱が立ち上がった。

「フンヌ!」
「きゃあっ!」

「なにっ!?」

だがエセスナは巨体にも関わらず上空へと飛び上がり、その炎を難なく避けてしまった。

「ガハハ、ティナリア。オマエノスキルハオミトオシダ!」

「ちっ……腐れ縁が仇となったか……やはりここで縁ごとお前を断ち切るべきだな!」

私はスキルではなく物理的な攻撃に出る。剣を構えエセスナのもとへと駆ける。

「ソウクルカ!」

「ちっ」

だが禍々しい姿になったエセスナは、その手に生えた凶悪な爪を振り回し私の進路を妨害する。私は剣を盾にしながらそれを躱す。が、徐々に押され始めた。

「ヌハハ、オレコソガコノヨデイチバンノオトコ、ソウセイノジダイカラ、オンナハオトコニカテナイヨウニデキテイルノダ!」

「ひっ、き、きもちわるい!」

胸のアレがぴくぴくと動き、液体が飛び散る。それがアナスタシアにかかった。

「おい、そいつはまだ十二歳なんだぞ!   そんな大きさのものを突っ込んだらどうなるかわかっているのか!」

「モンダイナイ。コワレタラカワリハイクラデモイルカラナ!」

「なんという奴だ……女を道具としか思っていない。それが、お前の本心なのか!」

「グハハ、ドウダカ、ナッ!」

「うわっ!?」

なんと、エセスナの尻から尻尾が生え鞭のようにしならせてきた。
私は咄嗟に模擬剣で受けたが、敵わず吹き飛ばされてしまう。

「ぐはっ……」

壁に叩きつけられ、強制的に肺の中の息が吐き出される。背中だけではなく、腕が痛む。見ると、尻尾にやられたのか、血が出ていた。

「モウスコシデ……モウスコシデ……グフフッ」

エセスナは挑発するように胸のアレをぴくぴくと動かし、ゆっくりと近づいて来る。

「どうする私……どうする……アナスタシア……カッツ……プッチーナ……クロン!」

「はい、先生!   ここです!」

「えっ?」

攻略法を考えていると、後ろからクロンとカッツが現れた。二人は片手を上げ整列する。

「先生、ここからは俺たちに任せてください!」

「何を言っているんだ!」

「行くぞ、カッツ!」

「おう!」

二人は私の制止も聞かずに、エセスナへ駆け寄っていった。


          

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