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俺はこの「手」で世界を救う!

ラムダックス

第1話


「そこだっ!」

草原に、一条の光が走る。

「キュピッ……!」

逃げようとしていた一匹の野兎が、その光に貫かれ倒れ伏した。

「……ふう、これで5匹か」

少年は倒れ伏したそれを拾い上げ、背中に背負った籠に収める。野兎の傷跡は火で焼き潰されたように黒ずんでおり、ほとんど出血していない。
そして籠の中には、この野兎を殺すまでに、すでに四羽の野兎が放り込まれていた。その野兎のどれもが、同じように身体のどこかを貫かれており、少し焦げ臭い肉の焼けた匂いを放っていた。

「まさか団体さんに出会うとは、運が良かったぜ。これで今夜の食事が少しは豪華になるな!」

少年はどうやら夜のオカズを獲りに来ていたようだ。思ったよりも短時間でいい成果が上がられたためか、気分は上々。
少年の住む村では、子供は誰しも常に飢えているのだ。勿論、大人達も表立って態度には出さないが、いつも腹を空かせているのは同じ。なのでこうして出来ることで、少しでも村に貢献しようと狩に出かけたのだ。

「……よし、どんどん狩るぞー!」

少年は、次の獲物を探しに草原を歩く――――








「ほう、これは中々。久しぶりの兎肉だからか、母さんの料理が美味しく感じるぞ」

男は肉を頬張り、そう感想を口にする。

「え、なんだって?」

女はそんな態度を見て、男を睨みつけ怒りをあらわにした。

「あ、いや、いつもおいしいぞ?   うん。いつもはせいぜい野鳥の肉だから、今日は食べ応えがあるなって意味だよ!   な?」

男は隣に座る自分の息子に語りかける。

「うん、そうだよ母さん。やっぱりたくさん食べられたほうが、美味しく感じるのは当たり前だとおもうよ。だから、母さんのいつもの料理が美味しくないってことじゃ、ないとおもうよ?」

「……そうかい、たんとお食べ。なんたって、今日はクロンのお陰でこんなにたくさんあるんだからね!」

母親は息子の言葉を聞き、怒りが収まったのか笑顔でそう語りかけた。

この男女は夫婦、そしてその息子こそ、先程まで草原で狩りをしていた少年、クロンである。クロンは結局往復四回、計35羽もの野兎を狩ってきた。
なぜそんなに獲ることができたのかというと、いつもは草原に疎らにしかいない野兎だが、今日は何故か家族連れと思わしき団体に何回も遭遇したからだ。運が良かったのか、クロンの持つ”技”の調子も良く、こうして豪勢な夕食となったのだ。

勿論、この一家族三人だけで、35羽もの兎肉を食べきることはできない。クロンはあくまで貧しいこの村全体のために狩をしてきたのだ。功労者として、分け前を少し多くもらえたに過ぎない。
それでも、いつもは小さく分けて、二口三口ほどで終わってしまう肉に、ガブリとかぶりつくことが出来るのだから、喜ばないほうがおかしいだろう。

「うん!   やっぱり、母さんの料理は最高だね!」

「あらあら、ほら口元から油が垂れてるよ」

「ははは、もっと落ち着いて食べるんだぞ、クロン」


そうして、夜は更けていった――――




「--おはようございまーす!」

朝、玄関口から元気な女の子の声が聞こえてきた。恐らくあの娘だろう。

「はーい!」

俺は返事をし、ドアを開ける。

「ふふっ、おはよ、クロン」

「……ああ、おはよう、アナ」

幼馴染の笑顔は、どこかいつもより明るく感じた。









「そうか、もう7歳になったのか。おめでとう、アナ」

「ありがとう、クロン!   私ももうすぐ大人の女ね!」

アナはそういって笑った。

アナは、俺の幼馴染だ。6……じゃなかった、7歳で、俺より2歳年下の可愛い女の子。透き通るような白い肌に、髪の毛はそこらへんの子と変わらない茶髪だ、少し薄めかもしれないが。
風を浴びると、その長い髪がサラサラと流れるようになびく、こんな寂れた村にはふさわしくないと思ってしまうような子だ。

「何いってんだよ、まだあと8年は子供のままだぞ?」

この国では15歳で大人と認められる、らしい。らしいというのは、この村周辺が俺にとっての”世界”であり、全てだからだ。俺は、たまに来る行商人くらいしか、違う”世界”の人を知らない。
父さんも昔は行商人だったらしいが、この村に住む母さんに一目惚れしてそのまま住み着いたらしい。後はそんな父さんから聞く話くらいか。

兎に角、そんな狭い”世界”に住む俺だが、それでもアナは一つ垢抜けているというか、正に住む”世界”が違う気がするような女の子なのだ。
じゃあ、何故そんな子と幼馴染なのかというと、それは三年前の出来事が関係するのだが……

「どうしたの、クロン?」

気がつくと、アナが俺の顔を覗き込んでいた。思わずドキリとする。こいつ、こんなに整った顔をしていたのか。

「い、いや。お前も大きくなったなあって。あの森で出会った頃は、まだこんなだったのに」

俺は手で地面との距離を示しながらそう話をする。

「でしょ、それにね、おっぱいも大きくなってきたんだよ!」

アナは俺の言葉を聞き、胸を反らしながら答えた。アナの肌に負けないくらい白く汚れのないワンピースの胸のあたりが、少し膨らんでいる、気がした。過去形なのは、びっくりしてすぐに目をそらしたからだ。

「ちょ、何やってんだよ!   お前はもう少し恥じらいというものをだなあ……」

「えー、クロン。照れてるんでしょ?   ね、ね?」

アナは俺の反応に気を良くしたのか、ニヤニヤしながら向かい合って座っていた机を回り込み、また俺の顔を覗き込んできた。
見た目は大人しそうな(父さん曰く清純派セイジュンハ)女の子なのに、どうしてこういつも元気なのだろうか。

「あーもー、うっとうしいなあ。大人しく座っとけよ」

俺は少し赤くなった顔を見られまいと横に向けながら、アナを手で押し退けようとする。

「キャッ」

すると、聞いたことのない声色の声が聞こえてきた。と同時に、手に柔らかい感触が。

「え?」

俺はアナの方に顔を戻すと、俺の両手がアナの胸に触れているのが目に入った。アナはびっくりしたのか、バンザイを肩のあたりまで下げたような体勢で固まっていた。
というか、今の声、もしかしてアナの声なのか?

アナは顔を一瞬で真っ赤に染め、プルプルと震えだしたかと思うと。

「く……」

「く?」

「く……クロンの、エッチーっ!」


バッチーン!!


「ぐはあっ!」


俺はアナの小さな手で思い切り叩かれ、椅子から転げ落ちた。

「うえーん!」

そしてそのままアナは、玄関から飛び出していってしまった。俺は叩かれた頬を抑えながら、思わず呟いた。

「……なんだこりゃ」


どうしてこうなった。


          

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