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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第80話 転入生


車に乗ること1時間弱、予鈴のなる10分ほど前に校門前に着いた俺と流湖は、車を降りる。因みに真奈は当たり前だがこの高校の生徒ではないため父さん母さんと一緒に別の車だ。
そして豪さんも、仕事があるので別邸から直接東京へ向かった。

「どうもありがとうございました、お世話になりました」

高級車な故目立つのか、単純に送り迎えしてもらう生徒が珍しいからか、俺たちのことを登校中の生徒がチラチラとみてくる。

「いえ、こちらこそ色々と迷惑をかけるが、よろしく頼む」

「頑張ります……」

車の中から叔父さんが言う。
これからも未来とはなんだかんだと関わることになったための言葉であろうが、俺も彼女との状況・・を受け入れた以上は仕事を全うしなければならない。

予定通り、年明けくらいまでの約2ヶ月半、婚約者のふりをすることになった。
あのクソ野郎影松次英が捕まったとはいえ、それでも未来個人というよりそのバックにある『電突』の影響力を当てにした婚約話を持ちかける者はこれからも出てくると思われる。

未来自身、お嬢様である故お見合い話が出ること自体は理解しているようだが、やはりあのおじいさんの影響か本人はそのような方法で結婚したいとは思っていない。
それでも恋愛ごとが嫌いというわけではないみたいで、俺に対して好き好きオーラを放つばかりであるので、こちらとしては困ったものではあるのだが。

「それでは」

「お世話になりました、私まで泊めてもらっちゃって〜」

「いや、遠慮しなくても大丈夫だよ。未来にもこれからは環境の変化に慣れてもらわないとだし、その為にも友達が増えてくれると嬉しいんだ。それに伊導くんのことを好きな者同士、色々と情報共有が出来るしね」

叔父さんはウィンクをする。待ってくれ、あなたの家は一体なんの情報を持っているんだ? 個人情報ダダ漏れかぁ……

「あはは〜、勿論未来ちゃんとは仲良くさせてもらいたいです!」

「うんうん、それじゃあよろしく」

「え?」

彼がそう言うと、会話を自らの父親に任せていた未来が、車から降りてくる。

「あれ? なんで降りるんだ?」

「それは勿論私がこの学校の転入生だからですわ」

「……転入?」

「転校とも言いますわね。つまりは今日からは伊導さんと同級生ってことですわね!」

「「えええええええ」」

未来がマキカンに転校してくるだと!?
制服がうちのものじゃなかったし、第一昨日もそんな話は一言も出ていなかったぞ。まさかサプライズとか言うんじゃ。

と思って叔父さんを問い質そうとするが、いつのまにか車は出発しており、俺たち三人が取り残された。

「うふふ、では参りましょう」

未来は俺の腕を掴み自然な形で組んでくる。

「え、ちょっとちょっと!? 抜け駆け禁止!」

そう言うと反対の腕には流湖が引っ付いてくる。

「何してるんだ二人とも、やめてくれー!」






無理やり二人を引き離した俺は、さっさと職員室に未来を連れて行き、流湖をちょうど登校してきた霞に押し付けた後、教室の自分の机で項垂れる。

「どうしたんだ伊導? そんなに疲れた顔をして」

「ああ、色々あったんだよ、色々とな……」

俺の方を向いて聞いてくる泰斗に曖昧な返事をする。詳しく説明しない方がいいだろうし、何より俺自身昨日一日の出来事を正確に説明する気力がないからだ。

「ふーん。それより、今日このクラスに転入生が来るらしいぜ?」

「え?」

--も、もしかしてこの展開は……

と、ちょうど本鈴がなり、担任の大隈凛子りんごちゃんが入ってくる。

「はい、今日は大切なお知らせがあります」

礼をし終わった後、早速そう切り出した凛子は、出入り口向かい手招きをする。

『おおおおおお!』

入ってきた人物を見た瞬間、クラスメイトたち(特に男子生徒が)の歓声が湧き上がる。

「新しいお友達が、増えることとなりました。皆仲良くしてあげてね、では折角なので自己紹介を」

「はい、ありがとうございます。私の名前は、神川未来、今日からお世話になります、よろしくお願い申し上げます。細かい自己紹介はまた後ほどで」

ペコリと綺麗なお辞儀をした。
尚彼女はまだこの高校の制服が用意できていないのか、以前いた学校のものと思われるいかにもお嬢様というふうな清楚な服を着ている。

「おい、すげー可愛い子じゃん! それにわたくしだってよ、雰囲気もそれっぽいしもしかしてお嬢様かな?」

泰斗がハイテンションで話しかけてくるが、俺は頭のどこかで予想していた通りの展開になったことに小さく息を吐く。

「こらー、私語しないの!」

凛子はこうなることを想定していたのだろう、すぐさま泰斗だけではなく、ザワザワと雑談をしていた生徒たちに注意をし、話を続ける。

「神川は家庭の事情でこの町に引っ越してきたばかりなんだ。皆も是非、彼女が早く新しい環境に慣れるよう協力してあげるように」

『はーい』

「ありがとうございます、先生」

未来が喋るたびに小さな歓声が起こる。女子の声も結構多いのは何故だろう。

「では席は……そうだな、伊勢川伊導、彼の横でどうだろうか?」

「はい?」

思わず声を出してしまった。確かに横の席は不自然に空いているのだが。

「わかりました」

未来はそう言うと、スタスタと歩いて俺の横に座る。

「よろしくお願いしますね、伊勢川様」

「あ、はい……」

なんだ? 先程までの距離感の近い対応とは違い、少しよそよそしさを感じるぞ。

「それじゃあそういうことだから、転入生が来たからと言って浮かれることがないよう、神川も含めてこれからも勉学に励むように。では以上」

学級委員の号令で礼をし終わり、凛子が教室を出た瞬間。

「初めまして! 私の名前は」

「おおおお、俺は」

「未来ちゃんって言うんだね! かわいい〜!」

「ねえねえ、どこから来たの? バスト何サイズ?」

一斉に新しいクラスメイトに群がる生徒たち。
中にはセクハラまがいのこともしている奴がいたのでそっと肘打ちを入れてやる。

「うおおっ、すごいなぁ……」

出遅れた泰斗が呟く。

「ああ、この時期の転校だからな。色々と聞きたい話題もあるだろうし」

「そういう伊導はなんかやけに冷めてないか?」

「いやまあ、この後の展開を考えると今から頭が痛くてな」

「は?」

そうして授業が始まり、昼休み。

「はあ〜、終わった終わった、霞たち呼んでこようか」

「ん、そうだな、俺も購買に行くか。頼めるか?」

「あいあい」

最近は購買に群がる物見遊山な生徒も減ってきて、学校側の本来の目論見通りに以前のような混乱が起きることも少なくなってきた。ので俺も混雑を避ける必要がなくなり、こうして普通に買いに行くことにしているのだ。
そのため弁当組の泰斗に流湖と霞を呼びに行ってもらうことも多くなってきた。まあ流湖とは未だたまに購買に行くことがあるので、実際は泰斗にとっては彼女を迎えに行く彼氏という面もあるのだが。

「伊勢川様」

「ん?」

休み時間の度に群がっていた生徒たちを同じようにいなしていた未来は、クラスメイトたちを落ち着かせつつ立ち上がると俺の席の前へ来た。

「こちら、今日のお弁当です」

「はい?」

目の前には、二つの包みを持った未来が。

「ですので一緒にお昼を過ごしましょう」

え?

「あの、未来さん?」

『!?』

あ、しまった、つい名前で呼んでしまった。
と後悔したのも遅く、すぐさま先程まで転入生を取り囲んでいたクラスメイトの輪がこちらに寄ってきた。

「どどどどどういうかんけい!?」

「なになに、二人は知り合い?」

「おい伊勢川、まさか抜け駆けか!?」

「うわああああっ」

結局、未来に対してよりも激しい質問責めにあった俺は、いつのまにか避難していた泰斗たちに見捨てられて、昼ごはんを食べる時間もなかったのだった。
因みに未来もちゃっかりと流湖に連れられて隣のクラスへ行っていたらしい……むむむ、強かな。

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