妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第37話 駅前で


そうして午前8時50分ごろ、駅に着いた俺たちは、他の3人を待つ。

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◎アパート同盟(6)◎

<アダマンタイト>:すまん、ちょっと遅れそう!

<イド>:マジか、じゃあ待っとくわ

<ダマスカス>:私もっ、ごめんなさい!

<ミスリル>:私はもうすぐ着きますのでー!

<イド>:了解

<マナ>:皆さんお気になさらず! 昨日は色々手伝ってもらったので疲れていらっしゃるでしょうし

<オリハルコン>:おさないかけないはしらないだよ〜

<ミスリル>:真奈いいこヨシヨシ

<マナ>:///

<イド>:それは災害時の行動だろう、流湖……まあ確かに、急いで事故とか起こさないようにな

<アダマンタイト>:おう!

<ダマスカス>:はいっ
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「じゃあ今のうちに今日の行動を相談しておく?」

「そうだな、大まかな方針は決めておいても良いかも」

「お兄ちゃん、カラオケで何歌うの?」

「そこからかよ」

「ねえねえ、どうせならなんでも出来る所に行ったほうが色々楽しめそうじゃない?」

確かに、一つずつ回るよりはその方が時間も無駄にしなくて済むかもな。

「そうだな、じゃあ二駅先にある『ターンスリー』は?」

ターンスリーとは、カラオケにボウリング、ゲームセンター、さらにはフードコートやネットカフェまである複合アミューズメント施設のことである。
全国展開しており、リアルでの遊び場が減ってきている現代では人気のお店だ。
老若男女関係なく訪れており、24時間営業でもある。

「秋休みだから人が多いかもしれないけど、何とかなるかな」

「そうだな。じゃあ皆が揃ってから聞いてみようか」

と話を一旦終えると。

「あ、せんぱーい! おはようございます!」

「ぐおっ」

やってきた理瑠が、俺たちの近くに来ると走り出し勢いよく抱きついてきた。

「今日はよろしくお願いしますね!」

「わかったから、離せって」

俺の腰に抱きつき、ぴょんぴょんと跳ねる。

「理瑠ちゃん、めっ、だよ? 昨日も言ったよね?」

真奈が理瑠の後ろから近づき、肩に手を置くと。

「ひっ」

理瑠は俺から手を離し、カサカサと音を立て流湖の後ろに隠れてしまった。

「何してるんだお前たち、朝から喧嘩するなよな」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん? 喧嘩じゃないよ、躾だよ?」

「いやいや、友達に躾って……言い方考えろよな」

「はーいっ」

と真奈は手を挙げてから、先ほどの理瑠のように俺の腕にしがみつく。

「なんで言ったそばからそうなるんだ、離しなさいっ」

「そうだそうだー!」

理瑠も流湖の後ろからここぞとばかりに援護射撃をしてきた。

「あはは、面白いね〜」

一方の理瑠は呑気に二人のやりとりを見ている。おいー助けてくれー……

「理瑠ちゃん、それはそうとして、相談があるんだけど。さっき話をしていたら、『ターンスリー』に行こうって話になったんだけどいいかな〜?」

「『ターンスリー』ですか、いいですねー! 賛成です! ランテでのチャットではどこに行くかはまだ決まってませんでしたからね」

昨日の夕食後、みんなでそれぞれRIMEのアカウントを交換し、"ランテ"と呼ばれる集団で集まるチャット欄を作成した。何時に集まるかとか話の内容を確認するくらいで、実際にどこに行くかは集まってからのノリで決めようぜという泰斗の一言によってそのままお開きとなったのだ。

因みにランテとは、ラウンドテーブル、つまり円卓のことだ。
RIMEにある機能を使って作成した複数人でのチャット欄を指してそう呼ばれている。理由は、公式によると『円卓のようにみんなで顔を見合って意見を言い合える場所を提供したい』という想いからだそうだ。

各国の議会なんかでも、半円形のところが多いが、あれも同じ理由だそうだ。国連の議会でも円卓を使っているのをニュースで見た記憶があるな。

「じゃあ今のところは全員賛成ということで。あとは泰斗と増田さんだな」

それにしても二人揃って遅刻とは。偶然の一致かそれとも……

「あ、すまんすまん!」

「ごめんなさーいっ!」

それから5分ほどすると、二人がこれまた揃って駆け寄ってきた。

「ふー、なんとかセーフか?」

「ギリギリ9時だな。まあそんな硬く捉えなくてもいいんじゃないか?」

時計を見るが、ほぼ9時であった。目くじらを立てるほどのものでもない。

「昨日の今日ですしねー」

「お二人揃っていらっしゃいましたけど、もしかして昨日から一緒だったんですか?」

「確かに、私気になるな〜」

流湖が霞の方に腕を置き何やらこしょこしょと耳打ちする。

すると、霞の顔が一気に真っ赤になり地面に両耳を手で押さえて蹲み込んでしまった。

「増田さん? おい、流湖何してんだよ」

と俺は眉を潜め口をきっとアニメとかだったら三角になっているだろう形にしながらいう。

「にひひ、ちょっとカマかけてみたら当たっちゃった」

「もしかして……お二人は昨日夜もご一緒で?」

真奈は何かを察したように頬に赤みを含ませ、泰斗に聞く。

「いやあ、ははは、なんつーか……俺たちいくとこまで言っちゃったんだよね」

「は?」

それってつまり、そういうこと?

「おおおおお、先輩達、付き合って初日でズッコンバッコンですか!? 新婚初夜ならぬ恋人初夜ですねー! くふふふふふっ」

と理瑠が興奮した様子で気味の悪い笑顔を浮かべながら身も蓋もない言い方をする。ほら、通行人の人たちが何事かと俺たちのこと睨んでるだろ、もう少しお淑やかにしなさい!!

「はわわわわ、めっ、めーーっ!」

霞が慌てて理瑠の口を塞ぐ。

「まめまめ〜? ももまむもむ、もみまみめ、まままみまめみむまむま!」

「そこまではしてない、してないからっ、ちゃんと付けましたっ!」

何を言っているか分からないが、霞には通じたらしい。すごい勢いで否定しているがいったい何を言われたのだ?

「泰斗、俺が全国の皆様の声を代弁させてもらっていいか?」

「え? なんだ?」



「このリア充め!! 爆発しろ!!」



「ぐはっ」

と、腹……は流石にまずいので肩パンしておいた。これでみなさんの気も少しは晴れたことだろう、うん。

「いてて、何すんだよ、お前に言われたかねえよハーレム要員のくせに」

「はあ? ハーレム?」

この俺が?

「そうだぞ、お前も十分、外から見れば羨ましすぎるんだからな。こんなに沢山の可愛い女の子に好かれてる男なんて見たことないぞ」

泰斗は少し浮いた帽子をかぶり直し唾を後ろに回してそういう。

「そんなことないと思うが?」

「おい、妹さんに、理瑠ちゃん、それに折原さんまで。少なくとも3人だぞ。それにこれは俺の予想だが、まだまだ増える気がする、うん。特に年上女性が一人もいないところから学校の先生なんかに惚れられそうだな」

「いやいや、ないから。それに流湖は関係なくねーか?」

あれは親父さん勇二さんが勝手に言ってるだけだろう。流湖も急に言われたからちょっと照れただけで、冷静になったらきっと好きな人がいるからと気を取り直したはずだ。

「はあ……お前、それで鈍感って言われたことないのか?」

「そういえば朝、勇二さんからそんなこと言われたが……なんのことかわからん」

「なるほど。そうきたか、もう何も言うことはないぜ」

泰斗は何故か諦めの境地に達したような顔をし、俺の肩をポンポンと叩く。

「取り敢えず、電車に乗ろうか。泰斗と増田さん、『ターンスリー』に行こうと思ってるんだけどそれでいいか?」

「おお、あそこか。俺は全然いいぜ」

「私もっ、楽しみ!」

「りょーかい、じゃあそう言うことで」

「よーし、今日は楽しもうぜ!」

「うんっ」

「こんなに大人数で出かけるのは初めてだ」

「は〜い!」

「ぬふふ、ここで先輩とあれやこれやとハプニングを」

「理瑠ちゃん? ちょっとあちらでお話ししましょうか?」

「アッハイ」

そうして駅のプラットフォームへ。

          

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