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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第30話 さあお引越しの始まりです


皆で協力して、家具をせっせと運ぶ。
他にも、余っている食器などの日用品は家から持ってきているため、それらの段ボールもだ。

「はあ、はあ、二階に上がるだけって言うのに、結構重いな……」

「仕方ねえよ。廊下が狭いし……」

あの後少しして到着した泰斗と、冷蔵庫を運ぶ。

因みに本当は全て引っ越し屋さんがやってくれるはずらしいのだが、自分たちも手伝った方が早く終わると思いこうして運んでいる。

「はあ、着いた……」

二階の一番奥にある部屋へ、運び込む。

「おい、どこらへんにおくんだ?」

「取り敢えずキッチンに!」

アパートの中は、縦にダイニングキッチンとその奥に洋室が並んでいる。それぞれ6畳ずつあり、間に仕切りを挟むことができるが、今は取っ払っている。

玄関入ってすぐのその手前側の部屋に冷蔵庫を配置する。仮置きのため、後で位置は調整するのでこれでいい。

「あ、ごめんなさいっ、これってどこに置けばいいかな?」

と、今度は泰斗の来た数分後にやってきた霞が、段ボールを持ちながら中に入ってきてそう言う。

「取り敢えず、奥の部屋に置いてくれ、すまん」

「いえいえ、これくらいっ」

今日の霞は眼鏡をかけている。カチューシャはいつもの通り付けているが、これだけでも印象がだいぶ変わるな。もう少し歳をとっていれば、キャリアウーマンと言っても通じそうな見た目だ。

「あ、お兄さーん! 次テーブルだってー!」

と、下から叫ぶ声が聞こえてきた。

こちらは妹の友達である、三住理瑠みすみりるちゃんだ。霞と同じくらいにやってきて、この娘も作業を手伝ってくれている。本当、ありがたいことだ。

「わかった! 泰斗、一旦出ようか」

「おう」

二人して外に出、階段を降りる。

引っ越し屋さんがオーライオーライと言いながら大きな箱を下ろし、家具の量販店で買った机と椅子のセットを上へ持って行き出す。
持ってきた家具とは別に買った家具も、お店から直接引っ越し屋さんの倉庫へ送ってこちらへ持ってきてくれるサービスがあったので、これは使うしかないと思い頼んでおいたのだ。便利だなあ。

「お兄ちゃん、結構進んだね」

「ああ、そうだな」

「まさかこれだけ集まるとは思っても見なかったぜ」

「お二人の人望のおかげですねっ!」

「私はお兄さんの顔が一度見てみたかったというのもありますけどね、ふひひっ」

「やだもう、理瑠ったら。そんな笑い方しないでよね」

「めんごめんご。つい!」

「俺の顔なんて見てどうするんだ? 理瑠ちゃん」

因みに彼女に対しては、本人からの熱烈? な希望で、端から名前呼びである。

「伊導の顔なんて見たって、何も得られやしないぜ?」

「おい、どういう意味だ?」

「私はお兄ちゃんの顔を見ているだけで幸せな気分になりますよ?」

それはきっとお前だけだぞ、真奈。

「真奈ちゃんはちょっとは自重するべきではっ……」

「いいじゃんいいじゃん〜、私も同じだよ〜?」

と、今さっき引っ越し屋さんと何事か話していた流湖まで何故か参戦しだす。

「むっ、これはシュラバーの予感!」

「あはは、そんなんじゃないから、理瑠ったら」

「俺は今日ほどお前のことが恨めしいと思ったことはないぞ……この裏切り者め!」

泰斗は負のオーラを発生させ、地団駄を踏む。

「アダマンタイトのことも影では好きな人がいるかもしれないのに……」

と、霞がぼそっという。

「え?」

隣にいた泰斗には聞こえたらしく。急に真顔になり、二人の間に奇妙な空気が流れ出す。

「今、なんて?」

「あっ……なんでもないよっ、阿玉くんっ」

「そうか? たまたまか……聞き間違えたのか?」

いや、たしかにアダマンタイトと呼んでいたと思うが……まあいいか。

「あ、次また段ボールだって! これで最後のフェーズらしいから、皆で攻略して行きましょ〜」

「はーい!」

「わかりました、皆さんお手数おかけします」

「よし、やっちゃるか!」

「後少し、踏ん張ろう……」

「後の楽しみのためにっ」

流湖の呼びかけに、理瑠ちゃん、真奈、泰斗、俺、霞の五人はそれぞれ思い思いに返事する。

そして間も無くダンボールも片付けられ、ようやく全ての荷物の運び入れが終わった。

「では我々はこれで。またご贔屓に!」

と、トンボマークの引越屋さんのトラック二台が去っていった。

「ふう、ようやくか」

時計を見ると、すでに12時を回っており、もう13時になろうというところだ。

朝8時くらいから始めたため、5時間近く作業をしていたことになる。
もしみんなが来てくれなかったら、荷出しを含めると当初の予定通り明日までかかっていたことだろう。

この分なら、今日中に必要な分の荷出しも終わりそうだし。残りは俺と真奈の二人で後日にやれば問題はない。

ともかく、一旦作業はこれで終了。休憩しようか、とみんなに提案しようとした時。

「みんなー、ご飯よー!」

と、タイミングよく隣の折原家自宅から、母さんが出てきて言う。

「お、じゃあ行こうか」

「はーい!」

「ふう、なかなか疲れたぜ」

「阿玉君おじさんくさいっ」

「ええっ!?」

「まあまあ、ありがとうございます先輩方。助かりました」

「真奈ちゃんしっかりしてるね〜、偉いね〜」

「ふう、ようやく終わったか……やれやれ、ガキどもは元気だなあ」

そして俺たちの様子を監視していた勇二さんも伴って家へお邪魔する。

「ふむ、上手く行ったようだな」

家の中でソファに座り様々な書類の手続きをしていた父さんが言う。

「お前もちったあ手伝えよな、雄導」

「仕方ないだろう、こっちだって色々と忙しいんだぞ? 学校側に申請する書類も書かなきゃならん」

と、軽口を叩き合う旧友二人。

「はい、今日はそうめんね。残り物を使わせてもらったわ」

「おー」

「やった!」

「冷たいもの、助かりますっ」

「お母さんもありがとう、お疲れ様」

素麺か、最近食べてなかったなそういや。久しぶりに見る白い麺は、氷水に浸かりてかてかと輝いている。

「ではいただきまーす」

「「「いただきます」」」

そうして総勢9人での食事をする。

「しっかしまあこれだけ集まったな」

ずるずると素麺を食べる音が響く中、勇二さんがそう話を切り出す。

「うむ。伊導、人の縁は大切にするのだぞ。いつどこで活きてくるかわからんからな」

「ああ、わかってるさ」

ほんと、皆には感謝の念しかない。

「でも、こうすると初対面の人も多いんだよね」

「そうだな、特に高校組と理瑠ちゃんは全員初めてなんじゃないか? 皆、中学も違ったしな」

俺と真奈と理瑠ちゃんが同じ出渦でうす中学。
泰斗と霞が同じ恵葛えくす中学。
流湖が一人、巻波まきな中学。

こうして改めて整理してみると、結構バラバラだな。
俺たちの通う巻間まぎか高校は、言われている通りこの地域の中学から集まっている生徒が多いのだとわかる。

因みに、高校を中心としてみると、右側に俺たちのデウス中が。そのさらに右の方に流湖のマキナ中。
高校の下の方に、エクス中の校区が広がっている。

補足すると、上の方には善雲珠ぜうす中学校区が。
左の方には尾貞おでい中学校区があり、そのさらに左には市立大丹たいたん高校がある。

「来年には、この皆が同じ高校に通うことになればいいですね!」

と、真奈は笑顔で言う。

「あれ、理瑠ちゃんもうちの高校受けるの?」

「ええ、もう推薦はほぼ決まりで、特待の方です! バレーのですよ」

「へえ、凄いな。バレーボールか?」

「はい、県大会の三回戦まで進んだんですよ? 自分で言うのも恥ずかしいですけど、これでも結構チームの中心でやってました!」

「うちの中学ってそんな強かったんだなあ。高校に入っても、ぜひ頑張ってくれ、応援するよ」

「はわわ、ありがとうございます!」

理瑠ちゃんは顔を少し赤らめ、照れたように言う。

「むう……」

真奈はそんな彼女の様子を見て、焼きもちを焼いているようだ。そんな怒るようなことじゃないだろ今のは……
未だに二人暮らしには不安も残るが、両親の強い説得と、病院の先生のゴーサインもあって反対は押し切られてしまった。
こうして引越しまでしてしまった以上、取りやめることもできないしなあ。

その後、自己紹介も兼ねた雑談をしながら、昼食を終え、俺たちは今日中に終わらせるつもりで荷出しをし始めた。


          

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