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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第29話 引っ越し当日、朝


「……はっ!」

はあ、はあ……俺は目が覚めると、大量の汗をかいていた。

「……とても嫌な夢を見た気がする」

だが、どんな夢か覚えていない。

唯一頭に残っているのは……目?

「はあ、とりあえずシャワー浴びよ」

流石にこんなにベタベタとしたまま居たくはない。
下におり、さっとシャワーを浴びる。

そしてガラガラ、と入り口の引き戸を開けると。

「あっ」

「おぉ!?」

目の前に妹様がいた。

「な、真奈、ど、どうして」

「お、お兄ちゃんこそ……きゃっ!」

「え?」

と下を見ると、俺は自らの下腹部が丸出しになっていることに気がつく。

「おわあああ! す、すまん!」

慌てて後ろを向く。

「ううん。私こそっ! 入ってるって知らなくて……今来たところで」

なるほど、俺がシャワーを止めた後に洗面所に来たから、その浴びる音を聞かなかったのか。

「い、一旦出るね! はい、タオル!」

と、カゴからタオルを取り頭を被せてくる。
そしてパタパタと走り去る音がしたため、後ろを向くと、真奈は言った通りにいなくなっていた。

「……はあ、朝から災難だ」

今日は忙しいというのに、既に精神がすり減っている気がする。
急いで水分を拭い、持って来ていた服を着る。

リビングに戻ると、すでに両親がおり、先ほど出会ってしまった妹もダイニングの椅子に座っていた。

「おはよ」

「あ、伊導。ちゃんと起きられたわね」

「流石に起きるわ!」

一発目がそれかい! 息子を信じろ!

「おう、来たか。伊導、俺は先に勇二に会いに行ってくる。お前も、失礼の内容にするんだぞ?」

「わかってる」

父さんはそう言うと、立ち上がり私室に準備をしに行った。

「ほら、あなたも朝ご飯食べなさい」

「ん、ああ、ありがとう」

定位置である妹の左隣に座る。

「はい」

渡されたのは、ソーセージとスクランブル、それにサラダとパンの洋風セットだ。

「……」

横に座る妹は、無言で食事を続ける。

「いただきます」

俺もさっさと食べてしまった方がいいと思い、手を合わせ食事を始めた。すると、

「……ソーセージ」

「ぶふっ」

おい、いきなり何を言い出す!

「おい」

「え? あっ、ご、ごごごめんなさい、つい……」

真奈は顔を真っ赤にする。
アレを思い出して言ったんだろうが……俺まで気まずくなるし料理も不味くなるからやめてくれ。

「貴方達朝から何やってるの? 真奈、ソーセージが欲しいならおかわりあるわよ」

「い、いいいいらない!」

いらない、と言われると、違うそうじゃないとわかっていながらも、俺のことを否定された気分になる。
いやいや、俺も何勝手な想像をしているんだ。仮にも家族だぞ? 自制しないと。
まったく、(偶然? も多いが)最近の真奈の攻勢のせいか、良からぬ考えを持つようになってしまった。

「どうしたの、そんなに慌てて? 伊導も早く食べ終わりなさい」

「な、なんでもない」

「う、うん」

全く、困った妹様だぜ。



そして準備を終えた俺たちは、母さんと一緒にアパートへ向かう。
10分程しかかからないので、すぐに到着するはずだ。

「……ねえ、お兄ちゃん」

「ん、なんだ?」

俺の後ろ、少し離れたところに歩く妹が、話しかけてくる。

「あの、ちょっと相談があるんだけど……」

「相談? なんだ、言ってみろ。病気のことか?」

「ち、ちがう。その、遊びの勧誘なんだけど」

恐る恐るそう言う真奈。何か言いにくいことなのか?

「遊び? どこかに出かけたいのか?」

「うん。か、カラオケ、とかどうかなーって」

カラオケ?

「カラオケねえ……うーん、俺、あんまり歌上手くないけど」

「べ、別にいい! その、お兄ちゃんと行けたらなって思っただけで」

真奈は断られると思ったのか、しりすぼみに言う。

「そうだなあ」

「伊導、別にそれくらい行ってもいいんじゃない?」

と、母さんが口を挟んできた。

「え?」

「たまには、真奈と遊びに行ってもいいじゃないの。あなたたち、仲がいい割にはあまり遊びに行ったりしないわよね。折角なんだし、誘われてあげなさいよ」

確かに、この前ショッピングモールに行ったくらいで、その前後に何処かに出かけた記憶がない。勿論、真奈が依存症になる前もだ。
そのショッピングモールも、同伴者有りだったしな。

「それで、実はなんだけど。私の友達も来たいって言ってるんだよね」

「え? 二人きりじゃないのか?」

あっちにしてみれば二人きりのデート気分で誘ってるのかと思ったが、どうやらそうではないようだ。

「う、うん。私の病気も知ってるし、親友だって思える子だから……駄目かな?」

「駄目ってわけじゃないぞ。じゃあ、3人で行くか? おっと、着いたようだな」

話がまとまりかけた時点で、アパートに到着してしまった。

既に建物の前には、勇二さんと流湖、それに親父の三人が揃っている。

「すまん、また後で」

「あ、うん。大丈夫」

そして三人のもとへ。

「あらあら、おはようございます〜! 皆さんお揃いで、どうも」

「いえいえ、こちらこそお得意様ですから、へっへ」

冗談めかした風にゆうじさんが手もみをする。

「おはよ〜、伊導くん!」

「おはよう。これから世話になる、よろしくな」

「いえいえ、こちらこそお得意様ですから〜、へっへ〜」

と、冗談めかした風に流湖が手もみをする。

「伊導、とりあえず家具がもうすぐくる筈だ。運送会社から連絡があった」

「うん、わかった。じゃあ一旦荷物は……」

「あ、じゃあ管理人室に置いていいよ! こっちこっち〜」

と、一階一番手前の部屋の扉を開け、俺たちを招き入れた。

「お邪魔します」

「お邪魔します!」

二人で部屋に入り、早速背中と手に持つ荷物を置かせてもらう。

「ん? あれ、ちょっと待って」

「ん? 俺も」

と、俺と真奈が同時にスマホを取り出す。

--------
<アダマンタイト>:おーい、伊導。今からそっち行っていいか?

<イド>:え?

<アダマンタイト>:よく考えたら、何もしないのに新居で打ち上げだけ参加するのもなって思ってさ

<イド>:いや、別に気にしなくていいぞ

<アダマンタイト>:いやいや、行きますわ。場所教えてくれるか?

<イド>:そうか? なら〇〇まで来てくれ

<アダマンタイト>:りょ! そこなら、自転車で15分くらいだわ。すぐ行くから!

<イド>:すまんな、恩に着る
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そして俺は最後に、可愛らしい熊のキャラクターがぺこりとお辞儀をしているハンコを送っておく。

「伊導くんどうしたの? 真奈ちゃんも」

と、一緒に入ってきていた流湖が聞いてくる。

「いやあ、実は泰斗が手伝ってくれるって言うんだ。15分くらいしたら来るってさ。人手は多い方が助かるから、いいかなって思って許可した」

「そうなんだ! ……あの、実は私もさっき霞から連絡があって、許可したんだけど」

お?

「マジか、じゃあ四人揃い踏みだな」

「そうだね〜」

ありがたいことだ。やはり持つべきものは互いに遠慮し合わない友達だな。

「あの、わ、私も友達が来たいって言って……許可したんですけど……」

「「え?」」

「元々引っ越しが終わったらパジャマパーティしようって言っていて、楽しむだけも悪いから、自分もお手伝いしたいって」

なんと、真奈の友達も引っ越しの手伝いをしてくれるだと?

「ほうほう、じゃあこれで私たち学生組だけで六人か! 大所帯だね〜」

「そうだな」

この分なら、思ったよりも早く終わるかも?

「じゃあ取り敢えず、外に出ようか」

と、三人で外に出たところ、丁度引っ越し屋さんが家具を持ってきた。

          

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