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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第27話 美術部にて


「あ、折原か」

教室を出てすぐの廊下で、隣の教室の小窓越しに声をかけられた。そう言えば廊下側の席って言ってたっけか。

「テスト、どうだった? お疲れ様だね〜」

「ああ、まあまあかな。こんだけ色んなことがあった割には良くできたと自分でも思う」

「ふふっ、伊導くん妹ちゃん思いだからね〜。真奈ちゃんがちょっと羨ましいかも」

「なんでだよ」

「さあ?」

流湖はすました顔で口角を上げる。

「そっちこそ、テストはどうだったんだ?」

「うん、お陰様で上手くいったよ〜。勉強会、開いてよかったね」

「そうだな」

先週は結局毎日図書室で勉強会を開いた。
結果、みんなで教え合うことができたし、いつものテスト期間よりも捗った感じがする。

「あ、伊勢川くんっ。どうもっ」

窓のサッシに腕を置き話こんでいると、更に教室の奥から霞がやってきた。

「ども」

「霞〜会いたかった〜」

流湖が霞に抱きつき、お腹の辺りに頬擦りする。

「なんで、同じ教室なのに……」

確かに。学校にいる間はほとんど同じ空間にいるだろうに。

「でも、席離れてるし……」

「まあ、それは確かに」

「あ! そうだ、霞。あの話しようよ」

「あの話?」

と、言って、流湖は立ち上がり鞄を持つ。

「ひとまず部室に行こ。伊導くんもどうぞ」

「まあ、少しくらいなら」

すぐ帰る予定であったが、何か話があるようだし。

俺は二人に付き添い美術室へ向かう。

「で、話ってなんだ?」

その道中、廊下を歩きながら俺はそう話を切り出す。

「んーとね〜、打ち上げ兼、引越し祝い兼、それに真奈ちゃんとの親睦会。かな?」

「なんだそりゃ」

「詳しく説明すると、勉強会&テストの打ち上げで。そして伊導くんがうちに引っ越してくるお祝いパーティに。最後は真奈ちゃんともっと仲良くなりたいし、霞とも引き合わせておいてあげたいから、だよ?」

「なるほど」

霞も美術部なため、将来の先輩になるかもしれない人と面識を持たせておくのは確かに悪くないことだろう。

「わ、わたしも、その……泰斗くんともっとお話、したいしっ」

と、霞は顔を赤らめ言う。

「おやおや、恋する乙女ですな〜」

「も、もうっ」

二人はイチャコラする。

「あ、着いたよ〜」

そうするうちに、美術室へ到着。

扉をあげると、何故か美術室には生徒がおらず、先生だけがいた。

「あれ?」

「お、やっぱりきたか……」

美術の担当教師兼美術部顧問である、得田富佐子とくだふさこ先生だ。
芸術家として、作風はニッチながらも業界では有名な人らしい。

「先生、ほかのみんなは?」

「すまんな、今日は部活休みにしたんだ。ちょっと新しいアイデアが湧いてきてな。それに、テスト明けで皆疲れてるだろうとも思ってな」

「ええ〜〜」

「ええー、とはなんだ、折原。そんなに部活したかったのか?」

「というよりも、せっかく絵を描いて羽を呼ばせると思ったのに……」

「ほんと、変なやつだなあお前は」

富佐子は、その金髪をサラッとかきあげる。



以前訊ねてみたところ、どうやら先祖に外国の血が入っているらしく、いわゆる先祖返りが起こったらしい。顔立ちも、確かにあまり日本人らしくなく、西洋的な美しさを備えている。

昔は『西洋被れ』などとよくいじめられていたが、その臭いものに蓋をする、村八分的な社会の体質に対する反骨精神が自分を育んだのだ、とは先生の弁だ。


「先生には言われたくないですよ〜」

「ん? そんな悪いことを言うのはこいつか、このっ、このっ」

「きゃあ〜〜〜」

「なんで私までっ!?」

と、富佐子は二人の胸を揉みしだく。

「はあ、やっぱ女子高生は最高だぜ! ……まあ、ちょっと位ならいいか。アタシは隣の部屋で創作してるから、何かあったら声をかけてくれ」

満足? したようで、二人を解放したあと、そう許可を出してくれる。でもちょっと危ない一言混じってたよね? 聞き間違いじゃないよね?

「は〜い、ありがとうございます」

「ありがとうございますっ」

「お邪魔します」

そして、先生は隣の準備室へ向かった。

「部活、勝手に休みにしていいのか? まあ顧問のいうことだから良いんだろうけどさ」

と、流湖に訊ねる。

「いいのいいの、先生のことは皆尊敬しているし、そういう人だってわかってるからね〜」

「うん、先生はちょっと変わったところもあるけど、あれでもこの世界ではそこそこな人だからっ。変人であればあるほど、芸術界では上にいけることが多い」

「そういうものなのか」

「じゃ、話の続きをしましょ〜。取り敢えず、明日は引越しなんだよね?」

明日10月6日の土曜日から、10日水曜日まで秋休みだ。

「まあ、そういうことになるな。恐らくは実質明後日くらいまでかかるんじゃないか?」

一応二人分の荷物だからな。運び込むだけなら簡単だが、家具などもやってくる予定だし。配置するだけで1日が終わるかもしれない。

「じゃあ、歓迎会は8日ってことでどう?」

「そうだな、ちょっと聞いてみるか」

俺はRIMEアプリを立ち上げる。



--------
<イド>:泰斗、打ち上げなんだが、8日にしたいと思うんだけど行けそうか?

<アダマンタイト>:お、ほんとか! 全然ばっちこい!

<イド>:そうか、わかった。あと、折原に増田さんも参加できるってさ

<アダマンタイト>:マジか! そうか、増田さんもか

<イド>:ん? 折原は?

<アダマンタイト>:勿論嬉しいぜ!

<イド>:お近づきになりたいからと言って、ハメ外すなよな。じゃ、そゆことで

<アダマンタイト>:りょりょー
--------



最後に泰斗は、顔から血を垂れ流しているウサギが敬礼しているハンコを送ってきた。すげえ趣味してるなこいつ。

「泰斗、大丈夫だってさ」

「お、やったね〜! じゃあ、いつもの四人でパーっと遊んじゃいましょう〜」

イーゼルに置いたキャンバスに絵を描きながらはしゃぐ流湖。

「いぇーいっ」

その隣に机を置いた霞は、どうやら漫画のようなものを書いているらしい。

「その前に引越しを終わらせないと……」

「あ、当日は私も手伝うから、安心してね」

「え、いいのか?」

「もちのロンだよ〜、大家さんだからね」

俺たちが引っ越す家は、流湖の家が経営しているアパートだからな。因みに俺の父親とあっちの父親が旧友であるらしく、お友達価格で借りられた。

「なるほど、恩に着る」

「お礼は、指輪でいいからね」

と、流湖は左手を持ち上げて言う。

「え? いやいや、高いわ!」

「あははっ!」

高校生に指輪をプレゼントしろとは、なかなか酷なことを言う。と言うか好きでもない男子からそういうの贈られるのってどうなんだ? 好きな人がいるという割に、彼女は結構俺のことを弄ってくるというか、距離感が近い気がするんだよな。

「そういえば、真奈がここを見学する話ってどうなってるんだ?」

以前、折原家のアパートに行ったとき、我が妹が秋休みにこの美術部を見学するという話をしていた。そっちはどうなったのだろうか? ここら辺の中学校も皆同じ日程で秋休みが入るため、時間的な余裕はあるとは思うが。

「あ、それは大丈夫だって。だから、10日の水曜日にきてもらうことになったよ〜」

「そうなのか」

妹とは、あの一件下着事件以来あまり話をしなくなってしまった。が、それでも『俺成分』補給は続けている。
今のところ、この前みたいに急に何度も体調が悪くなるということはないが、それでもやはり1日1度は身体的接触を伴う摂取が必要なようだ。

まあ、ここ数日は少しずつだが関係は回復しているため、二人暮らしにはそれほど影響はないとは思うが……だがやはり、個人的には未だ真奈と二人きりで暮らすということには懐疑的だ。
決まってしまっているものは仕方がないので、今更変えようがないが。

「早く真奈ちゃんにこの部活に入ってきて欲しいな〜」

「まずは受験に受かってからだけどな」

「それもそうか、あはっ」

「私も楽しみっ! 早く会いたいなっ」

霞はまだ真奈と会ったことないもんな。二人を引き合わせたら、いったいどういった仲になるのだろうか。

「今年の秋休みは予定がいっぱいだね〜」

「そうだな。これで文化祭もあるし、なかなかハードな二学期になりそうだ」

妹の病気から始まり、テスト勉強での親睦に打ち上げ、そして文化祭と。
秋が深まるにつれ、だんだんと俺の周りを取り巻く環境は変化していくのであった。

          

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