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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第20話 ベッド、そしてパフェ


再び、店の外のベンチに座っていると、妹が帰ってきた。

「ど、どうだ、買えたか?」

真奈の顔は火照っていて、それに視線を合わせようとしない。

「う、うん。選んでもらったのも含めて」

「そ、そうか」

二人の間に気まずい空気が流れる。

「つ、次はどうする?まだ少し時間あるけど?」

「そうだな……なんか飲むか?」

自販機が目に入ったので、そう問いかけてみる。

「あ、うん」

二人でそこへ向かい、適当に飲み物を購入したあと、自販機の横にあるベンチに並んで座った。

「さっきはゴメンね、お兄ちゃん。調子に乗り過ぎちゃった。二人でお買い物なんて、久しぶりだったし」

真奈はうつむきながら、飲み物を一口すすったあと、そう言う。

「いや、もういいさ。どうだ、今日は楽しいか?」

「うん。えへへ、やっぱりお兄ちゃん、優しいね」

そして、俺の方を向き微笑みかけてきた。

「ん、何がだ?」

「んーん、なんでも! それよりそろそろお母さんたち帰ってくる頃じゃないかな?」

なんだそりゃ。妹様はご機嫌そうに、足をぶらぶらとさせる。

「ああ、そうだな」

色々あったため、ランジェリーショップではだいぶ時間を消費した。目安の30分も経つ頃だ。

「あ、いたいた〜」

と噂をすると何とやら。手をふる流湖と、その後ろからは母さんが歩いてくる。

「おう、お帰り」

「お帰りなさい」

「ただいま戻りました〜」

「待たせたかしら、二人とも? 流湖ちゃん、良いねー。選ぶ服のセンスもいいし、遠慮なしに褒めてくれるし、お母さん10歳は若返った気分だわ〜」

と母さんは頬に手を当ていう。その仕草だけで充分歳を表していると……何でもありません、ハイ。

「あれ、真奈ちゃんなんか雰囲気変わった?」

と、流湖が真奈の身体をベタベタと触りながら言う。

「そ、そうですか?」

「うーん、なんか色っぽいし、それにさっきよりも肌が艶々しているような……」

鋭い指摘をしてくる。ば、バレないよな?

「きっと、お兄ちゃんと買い物したからですよ。久しぶりに二人きりで見て回れたので」

「あはは、妹との久しぶりの買い物がランジェリーショップって、伊導くんも面白い体験するよね」

「まあな……」

面白いというより意識が真っ白になりそうだったが。

「はいはい、お喋りはそのくらいにして。じゃあ今度は家具屋さんに行きましょうか」

母さんはいつもの通り手を合わせ、俺たちを先導する。


--アパートにはある程度家財を持って行くつもりではあるが、それでもあちら専用に購入する必要がある。予算はある程度余裕があるが、(今のところは)1年間限定の二人暮らしだしそこまで大量のものは必要ないだろう。


「はーい」

「そうだな、今のうちに当たりをつけておくのもいいだろうし」

「あ、じゃあ私色々とアドバイスしますよ? これでも一応アパート経営者の娘なので!」

と、流湖は自信満々に言う。

「あら、助かるわ。じゃあお願いしようかしら」

「マジか、助かる」

「ありがとうございます、先輩」

「まかされました〜っ」

と、流湖は敬礼の真似事をする。



今度は3つ上の6階、生活フロアにある大きなスペースを持つ有名量販店の家具屋さんにやってきた。『値段以上の品質』が売りのお店だ。

「これなんかどう?」

「うーん、ちょっと大きいかも」

「じゃあこっちはどうですか?」

「そうだねえ、これくらいなら入るかな?」

と、時々参考意見をもらいながら、家具を見ていく。

「お、これなんかどうだ?」

おれは一つのクローゼットを示す。

「ん? いいね、これ。デザインもだし、大きさもあの部屋には丁度良いくらいだと思う。真奈ちゃんはどう?」

「そうですね、確かに悪くない製品だと思います。流石お兄ちゃん」

「いやいや、褒めるところか?」

真奈は背中をポンと叩いてくる……先程のことを思い出し、少し反応してしまったのは秘密だ。

「ん?」

案の定、流湖が俺のことをじっと見つめてきた。

「はいはい、いちいちいちゃつかないの! じゃあ取り敢えずメモっと。またお父さんとも相談しなきゃだけど、一応目星はつけておきましょう」

そういえば、二人はまだ呑んでいるのだろうか?
身体を壊さない程度にしてもらいたいものだ。

「あ、お兄ちゃん、こっちこっち」

すると、妹は手招きをし、俺たちを呼び寄せる。

「ベッドか? 俺は寝られたらなんでも良いぞ。最悪布団でも良いしな」

「え〜、うちのアパート、結構床硬いよ?」

「そうなのか?」

じゃあそれは最終手段にしておいた方が良さそうだな。

「ねえねえ、これ、どう?」

話し込む俺の服を引っ張り、真奈が指さしたのは。

「だ、ダブルベッド?」

二人が寝て丁度良いくらいの、頭の方と足の方の仕切りにハートマークのワンポイントがついた木製のダブルベッドだった。

「真奈、何を言っているの? あなた、二人暮らしする理由わかってるんでしょうね?」

母さんが怒った顔でそう言う。

「わかってる。でもこれ見て、二段ベッドにもできるって書いてあるんだよ?」

ん、確かに。商品説明には、二段ベッドにもなるダブルベッドって書いてあるな。珍しい、そんな品物もあるんだな。

「ダメダメ、うち天井は高くないから、きっと寝起きしづらいよ? 普通に2個買ったほうが良いと思うけど」

流湖が駄目出しをする。

「そうよ、それにもし買うとしても、普通に二段ベッドを買ったら良いんじゃない?」

母さんも、正論をぶつけ真奈を諭す。

「そうでしょうか? 私としては、いっそのことシングルに二人で寝ても良いと思ってますが」

「ふーん、それはちょっと寝辛そうだね。もしそうなったら、伊導くんには私と一緒に管理人室で寝てもらっても良いかもね〜」

「なっ!?」

「ふふっ」

二人はバチバチと互いの視線で火花を散らす。
あの、俺の意志は……

「こら、二人とも! 喧嘩しないの!」

と、母さんが珍しく厳し目の口調で言う。

「あっ」

「す、すみません、お母様……」

はあ、なんでこのタイミングで喧嘩をするのか。
案の定、周りの客や店員の視線を集めてしまった。

「今日はここら辺にしておきましょう。まだ時間はあるから、今度見にきたらいいでしょう? 伊導も、それで良いわね?」

「ああ、その方が良さそうだな」

それに俺の精神がもう死にかけている。

「わ、わかったよお母さん……ごめん」

「申し訳なかったです」

と、二人は頭を下げる。

「ほら、最後にデザートでも食べて帰りましょう。せっかくだから、最後は良い思い出にしたいじゃない?」

「そうだな。二人も、良いだろ?」

「うん、行こっ」

「そうしましょうか、ありがとうございます。気を使わせてしまって」

「良いのよ、真奈と仲良くしてくれれば、それで何も言うことはないわ」

「善処します」

まるで叱られた政治家みたいな言葉遣いだな。本当にわかってんのか?

「真奈ちゃん、ほら、手を繋ご?」

「いいんですか?」

「今日くらいは休戦しましょ。でも、これからはよろしくお願いしちゃうからね?」

「ではお言葉に甘えて。こちらこそ、負けませんから」

今度は互いに笑顔で、目に何かに対する闘志の炎を燃やす。

そんなバトル漫画のライバルみたいな雰囲気になりつつも、二人はぎゅっ、と手を繋ぐ。
そして互いに、うふふと笑い合った。

「じゃあ、行きましょうか。有名なお店があるらしいのよ、一度行ってみたかったのよね〜」

そして四人で、二階にある建物の一片全体から飛び出した、バルコニーのようになっている空中庭園へ向かう。

「ここよ、パフェが美味しいらしいのよ」

きたお店には、行列ができていた。

「うげ、まじか」

「おおー、ここですか。最近ネットでも話題なんですよ」

「そうですね、私のクラスでも話に出ていました」

「俺は知らねえ」

偏見かもしれないが、女子はやはりこういう甘いものが好きなのだろうか?
お客さんにも、比率的には女性の方が多く見える。それにしてもよくこんなに並べるなあ……

そして1時間ほど並び、ようやく店の中へ入る。時間はすでに四時を回っている。

そして思い思いの品を注文し。

「--お待たせいたしました〜」

やってきたのは、40センチはあろうかという特大パフェだ。これが例の人気商品らしいが。

「な、なんだこれは……」

「うわあ〜美味しそう!」

「綺麗〜」

「あらあら、凄いわねえ」

クリームにフルーツ、そしてシリアルやアイス、チョコ。ウェハースやクッキーなど、およそパフェに盛られているであろう定番の品々があちこちに突き刺さっており、まるで小さなクリスマスツリーだ。

確かに、見た目だけなら人気になる理由もわかる。そう、見た目だけなら。

「あの、これ誰が食べるんです?」

思わず敬語になってしまう。

「え? そりゃ四人ででしょ」

「え?」

あの、俺もケーキ頼んであるんですけど……

「あ、ちなみにこれ残したら追加でお金取られるらしいから。頑張らなきゃ!」

まじか。それを最初に言ってくれよ!

「じゃ、いただきましょうか」

「はーい」

「待ってました〜」

「くっ、頑張れ俺……!」

と、そこに。

「お待たせ致しました、ティラミスのお客様〜」

あ、死んだわこれ。




その後、何とかパフェを食べ切った俺たちは、俺以外笑顔で電車に乗り、自宅へ帰るのであった。

君たち、どこにあれが入ってるんですかねえ……何でそんなに元気なの? うぷっ……


          

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