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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

❤︎EX 流湖の想い


私の名前は折原流湖おりはらるこ16歳。県立巻果高校けんりつまぎか、通称マギ高に通う一年生。部活は美術部。

成績はそんなに悪くない方だし、自分で言うと嫌味に聞こえるかもだけど、ルックスやスタイルも悪くないと思う。

人間関係も良好だし、昔からの趣味だった美術で賞をもらえるほどにもなった。

そんな私の人生で唯一、順調じゃないと言えるのは、今頃になって生まれて初めてできた好きな人が全然振り向いてくれないこと。その好きな人というのは………………同じ高校に通う、隣のクラスの伊勢川伊導いせかわいどうくんだ。

彼との出会いは、この夏まで遡る----




当時は、まだ好きな人なんていない時代。私は朝登校するために、家を出てまっすぐ進む。

「今日も暑いな〜……」

最近は、暑くなるのが早い。7月に入ったばかりだというのに、既に気温は夏日だ。
同じルートを通る知り合いがいないため、一人で道を行く。
まだ朝早いためか、人はまばらだ。

と、交差点に差し掛かった時--

「うおっ!?」

「きゃあっ!!」

一時停止を無視した自転車が急に飛び出してきた。

いてて、避けた拍子に尻餅をついてしまい、お尻がヒリヒリする。

「おい、危ねえな、ふざけてんじゃねえぞこら!」

どうやら運転手は酔っ払っているようで、自転車を降りるとなんと怒鳴りながら私に絡んできた。

「えっ、な、なんですか?」

「最近の奴らはチャラチャラしやがって、なんだこの茶髪は? 舐めてんのか!?」

と、髪の毛を触ろうとする。私は咄嗟に逃げようとしたが、突然の出来事にまだ足がすくんで動けない。

「や、やめっ……!」


「--おい、何してんだオッサン!」


するとその瞬間、誰かが私と運転手の間に立ちはだかった。

「あ? なんだ坊主、邪魔だ、どけよ!」

見ると、ウチの制服を着た男子生徒だった。

「おっさんこそ、何してるんだよ? 遠くから事故が起きるの見えて慌ててきてみたら、この子怯えてるじゃないか」

「お前には関係ないだろ? それともなんだ、この俺様とやるっていうのか? ああっ!?」

「いいぞ。だかその前に、警察呼ぶけどいいんだな? 一時停止の無視に、人身事故だぞ? しかも見たところ、飲酒運転ときた。これじゃあ捕まったらただじゃ済まねえだろうな」

男子生徒はスマホを取り出し、逆に運転手を脅す。

「なっ……く、くそがきがっ……お前も、急に飛び出してきたら危ねえだろ、メスガキが調子乗ったんじゃねぇ、次出会ったら轢き殺すぞ!!」

支離滅裂だ。飛び出してきたのはこの人なのに。しかし、その後私のことをひと睨みしたかと思うと、何処かへと走り去ってしまった。

「おい、怪我はないか? 立てる?」

男子生徒はしゃがみこみ、私のことを気遣ってくれた。

その顔を見た瞬間、私の心に何かが広がる感覚がし、じわりと涙が溢れ出てきてしまう。

「な、ちょ、急に泣くなよ。痛むのか? 救急車、呼ぶ?」

男子生徒はオロオロとした様子で心配そうにそう言う。

「う、ううん。大丈夫です。ありがとうございました」

私はお尻を押さえながらも立ち上がり、頭を下げてお礼を言う。

「嫌、気にすんな。お前、うちの生徒だよな? どうしよう、警察呼んだ方がいいか、それとも学校に言うべきか?」

「嫌、いいです。大事にしたくないので」

「え? いいのか?」

「はい」

もし通報して逮捕されたら、またあのおじさんに会わなきゃいけなくなるのかと考えたら、すごく怖くなってきた。先ほどまでのシーンが、トラウマになりそうだ。
本当は通報しなきゃいけないんだろうけど……そんな勇気は出そうにもない。

「……でも、ちょっと怖いから……一緒に、ついてきてくれませんか?」

私は、ポツリとそんな言葉を漏らす。何言ってるんだろう、あっちに取ってはこれ以上は迷惑なだけなのに。

「学校までか? 別に構わないが……我慢しなくてもいいんだぞ」

「いえ、本当に大丈夫です、登校します」

「そ、そうか……わかった、行こうか」

だが男子生徒は、文句を言わずに付き添ってくれた。

そうして二人並んで歩き出す。彼は気を利かせてくれているのか、積極的に話しかけてきてくれた。お陰で、名前や隣のクラスの人だってこと、それにちょっとした個人情報なんかも知ることができた。

そうしてようやく学校につき、私は本能的にほっと一息安心する。
やはり人が多いとそれだけ不安も和らぐのだろうか。

「すまんな、あまり気遣ってやれなくて」

「えっ? そ、そんなことないよ。すごく助かりました、ありがとうございました」

私は再度、お礼を言う。

「いいってことよ。じゃ、気をつけてな」

「はい、では」

そうしてその後、少し怖い気持ちは残りつつも、なんとかその日の授業を終えたのだった。

「帰り、迎えに来てもらったら良かったな」

そして放課後。流石に今日は、体調不良と言うことで部活を休ませてもらったため、そのまま帰宅だ。
だが、その時になって、あの道を再び通らなきゃいけないことに気がつき、足がすくむ。

「でもパパ、仕事か」

ママは私が小学生を卒業したすぐ後に亡くなり、今はパパと二人暮らしだ。

「仕方ない、帰ろっ」

私はだいぶすり減ってしまった勇気を振り絞り、道を行く。

そして問題の交差点に差し掛かると、私は足が動かず立ち止まってしまった。

通行人が訝しげに私のことをチラリと見るが、なかなか一歩が踏み出せない。

そんな時、ふと、伊勢川くんの顔を思い出した。

「……大丈夫、私は行ける!」

彼の顔を思い出した瞬間、朝よりもさらに強いナニカが心に染み込んで来、同時に不思議と勇気が湧いてきた。

そして、一歩、また一歩、とゆっくりと歩みを進める。そして、気がつけば私は普通に歩けるようになっていた。

「……ありがとう、伊導くん」

無意識に、彼の下の名前を呼ぶ。

そして、この時私の人生で初めて、"恋"という感覚を手に入れたのだった。





そのまま登校を続けたある日、私はあることに気がついた。
なんと、彼と登校ルートが被っているのだ。
つまり、あの日たまたまあの場所を通ったわけではなく、いつも通っている道で私が絡まれたというわけだ。

どうやら私の家から彼の家まで10分ほどあるらしく、いつも早めに登校する癖がついていた私は、会う機会がなかったので気が付かなかったのだ。

だが、あの日たまたま家を早く出ていた彼は、私の事故現場を目撃することとなる。人生って、本当偶然が重なっているんだな、なんてロマンチックなことも考えてしまった。


もし、あの時私がいつもより遅く出ていたら。
もし、あの時私が轢かれそうにならなかったら。
もし、あの日彼がいつもより早く家を出ていなかったら。

そしてもし、あの時、彼が私のことを助けてくれなかったら----


これは大チャンスだ、うまくいけば関係強化のきっかけになるかもしれない。

と思い、私は彼の登校時間を調査し始めた。
この時の私は半ばストーカー化していたと思う。漫画やアニメのように、電柱の影に隠れたり、偶然出会った風を装ってさりげなく一緒に登校するよう誘ってみたり。

そうしてようやく彼の登校時間を割り出せたのが7月の終わり頃。そう、それから夏休みに入ってしまったため、なんと私はせっかくの"研究"の結果を活かす機会を一ヶ月先まで逃してしまうことになったのだ。

夏休みに入ったため、彼は帰宅部で、私は美術部。当然通学路でも、学校でも会う機会はなく、流れるように日々は過ぎていった。

そして日を追うごとに、私の気持ちもまた強くなっていった。

そんな夏休み明け。私はようやく成果を試す機会を得られた。
私は今までよりも遅く、家を出る。案の定、彼は予測した時間に同じ道を通っていた。

その後は知っての通り、さりげなく、また時には大胆にアプローチを続けているわけだが、残念なことに彼は中々この気持ちに気付いてくれない。

結構分かりやすくしてると思うんだけどなあ。

昼食に誘ってもらえるよう言ってみたり、校内デートをしてみたり。でも、向こうはただの友達程度にしか思っていないみたい。

でも、ここで挫けちゃダメ。まだ高校生活は2年半も残ってるんだから!





そんな秋に入った頃のある日、私たちが経営するアパートに新しい住人が引っ越してくるという話を聞いた。どうやら1年間限定で家族・・と住むらしいが、うちのアパートの部屋じゃそんな何人も暮らすにはちょっと狭くはないだろうか?
おそらくは自宅の建て替えか何かなのだろうから、そこまで気にしないのかも知らないが。

そしてその話を聞き数日経ったある日、遂にその一家がやってきた。
そしてその一家とはなんと、伊勢川家、つまり彼のことだったのだ!
私は思わぬ偶然に内心小躍りした。

しかし、そこでさらなる衝撃の事実が待ち受けていた。

なんと、彼は彼の妹さんと二人きりで暮らす予定だというのだ。

つまりこれは、『子供たちだけの生活にお節介を焼く大家さんポジ』という非常に美味しい役を得られるチャンスということだ。
私はこれはもう今以上に攻めまくるしかないと思った。

と考えたのも束の間、今度は違う意味で衝撃の展開が待ち受けていた。

なんと、彼の妹さんは、彼のことを一人の男性として好きだったのだ。



「----じゃあ、これからは伊導くんのことに関してはライバルで、美術部としては先輩後輩で、そして一人の女同士としは良き友達で、ってことでどうかな〜?」

「賛成です。よろしくお願いしますね、折原先輩」

「呼び捨て、でいいよ」

「え? いや、流石に急にそれは変に思われるかもしれませんので、じゃあ、流湖先輩でどうですか?」

「うんうん、それでもいいよ----」



しかし、なんやかんやあったが、私たちは、アパートでの話し合いで良いライバル関係を築けた。
真奈ちゃんがいい子で良かった。もし、今すぐ私のことを蹴落とそうとするような子だったら、全面戦争も不可避だった。



これからは私一人だけじゃない、真奈ちゃんも彼のことを狙い続ける。いや、期間で言えば断然あちらの方が長い。
だが、彼は妹という括りを強く持っているようで、実質的には五分五分だろう。後は、私の方が彼女としてふさわしいと思わせればいいだけだ。

がんばれ私、負けるな流湖。目指せ将来の伴侶!


          

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