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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第13話 病院にて


そんなこんなで流れるように日々が過ぎていき、週末。土曜日になり、俺と妹、そして母さんの3人で病院へ行く。父さんは仕事があるため今日はもう朝早くから居ない。

「さ、行きましょう」

「うん」

「はーい」

母さんの運転する車で病院へ。そして先日お世話になった先生と面会だ。

病院につき、真奈は色々と検査させられる。時折俺も同伴させられ、同伴している時の妹の脳波やらなんやらを色々と調べた。

そうして数時間後、検査結果を受け取り、先生と面会をする。

「やあどうもどうも。その後体調の方はどうですか?」

「はい、実は……」

と、ここ数日の出来事を報告。

「……そうですか。ほぼ丸一日か。思ったよりも症状が現れるのが早かったですね。それに、元気だったのが一変、一気にしんどくなったと……」

先生は検査結果を見て、それから顎に手を当て考え込む。

結局昨日の夜まで、12時ごろになると真奈の体調が悪くなり、俺に添い寝するよう求める日々が続いた。そしてまた次の日の朝にはハイテンションになり、また夜にはゲンナリしてしまうという繰り返しだ。こうなると、流石に俺に接触したせいで真奈の元気が有り余った状態になってしまったのだろうと確信するようになった。

「とにかくまずは、学校では理解を示してもらえたので良かったです」

妹が言う。昨日までの一週間も、酷いことを言われることはなかったそうだ。そもそも流石に中3ともなると、言っていいことやっていいことの良し悪しの分別もついている頃だろうし、そこまで心配せずともよかったもしれないが。
だが病名だけ聞くと、ふざけてるのかと馬鹿にしてくる奴がいそうだったのも確かだ。変えることのできない自分の現状を人に理解されないって言うのはとても辛いものがあるからな。

「そうだね。引き続き経過観察ということで、対処法を見つけるにはもうしばらくかかりそうだしね。それで僕がこの検査結果と、あなた達の話を聞いて一つ気になったのは、伊導くんとの接触の仕方によっては、真奈ちゃんの体調が悪くなるまで、なにをしても必要な成分を補充できない可能性があることなんだ」

と、先生はなにやら紙にささっと書き、俺たちに見せてくる。

「あくまで仮説なんだが、一つは摂取する量や長さは関係なく、ある一定の時間が経つと必ず摂取しなければいけなくなる場合。これは、当たっていれば恐らくではあるが大体24時間と考えられる。また、現状を整理し当てはめると、このように『伊導くん成分』摂取後に体調が劇的に回復し、24時間が経つと電池が切れたようにまた急激に体調が悪化するという考えができる」

先生が一つ目のグラフを指差す。
『真奈ちゃんの体調』と書かれた線は、『俺成分』を摂取してからほぼ直角に右肩上がりに線が伸び、そのまままっすぐ進む。そして最後に崖を象るように右下に落ちていく。

「ただこれは結果を見る限り、確かに真奈ちゃんの脳は伊導くんに反応しているようだし、フェロモンを感じたときに異常に分泌されていることに変わりはないから、ちょっと考えられないかな」

「そうなんですか」

何があっても夜に絶対にしんどくなる、なんてことはなさそうでよかった。もしそうなら、どこに出掛けてもこの病気が治るまで辛い思いをすることになるだろう。

「もう一つは、実は接触する方法によって摂取する量が変わり、たまたまここ数日生活リズムがパターン化していたためその事実が隠されていた場合だ。夜は添い寝してるってことだけど、すると通常の接触の何十倍もの時間を至近距離で共に過ごすことになるよね?」

「はい、まあそれは」

思えば、先週病院に入院していた時は俺が殆ど付きっきりだったな。

「伊導くんに近づけば近づくほど、真奈ちゃんが一度に感じるフェロモンの量が増え、また期間が長ければ長いほど貯め込むことができる。ちょうど携帯を充電するようにね」

先生は二つ目のグラフを見せる。

今度は斜め四十五度くらいの線が右上に伸び、そこから横に伸びていくにつれ少しずつ下がっていく。そして時たま思い出したようにちょこっと盛り上がり、最後にはカーブを描きゼロに向かって右下に収束する。

「ただこの考察だと、しんどくなる直前まで普通に元気だったのが説明がつかなくなるね。そこで、この三つ目。一つ目と二つ目を合わせたいわばハイブリッド型だ」

最後に描かれたグラフは、一つ目と二つ目を合わせたような形だ。一つ目ほどではないにしても、夜中にグッと上に伸び、そこから朝まで横這いで、その後少しずつ低下していく。だがこれも二つ目とは違い、低下していく幅は少なく描かれている。そしていくつかの盛り上がりによってまた持ち直し、最後には一気に落ち込む。

「見てもらった通り、この予想では一つ目と二つ目の間。下降する幅も少なく、しかし全くゼロでもない。以前までの元気な真奈ちゃんを100%とすれば、今の真奈ちゃんは120%ほどまで充電できるようになっているという仮定だ」

「なるほど、これならば私が自分の元気が有り余っていると感じたことにも説明がつきそうですね」

と、真奈は頷く。

「さらに、途中途中、朝や夕方、夜など、二人が過ごしているであろう時間には少し振り返している。これは夜寝るほどではないにしても、接触していると考えられるからだ。どうかな?」

「そうですね、朝ご飯に晩ご飯や、夜寝る前のちょっとした時間なんかは一緒にいることが多いです」

つまり、接触する距離や時間によって補充できる量は変わるが、基本的に夜中になるとリセットされるように体調が悪くなり、そこから添い寝しているせいで大量に『俺成分』が補充され、朝には元気いっぱいになっているというわけか。

「まあこれは知っているとは思うけど、人間は時間が経てば経つほどエネルギーの消費量も加算されて行く。今の真奈ちゃんの場合は、『伊導くん成分』の関係か、通常の状態からさらに余計とエネルギーを貯蓄できる状態になっており、ある程度消費してもそこまでしんどくならないという仮説を考えてみたんだけど、どうだろう?」

ううむ、すると『俺成分』を補給した真奈は"ハイパー真奈状態"になるというわけか?

「あくまで仮定の話なので、以前申し上げた通り、長期的な観察と治療が必要と考えます」

先生は母さんに真剣な表情でそう言う。

「はい、それは覚悟しています。親として、家族として、サポートしていくつもりです」

「またもう一つ、これはもしもの場合なんだけど。この仮説があっていたとすると、今の真奈ちゃんは自らの体を酷使している状態にあるかもしれない。そうでなくても、さっき聞いた話にあった元気だったのに急にしんどくなると言うのは、やはり身体に負担がかかり良くない。言えば、薬物が切れて体調が悪化するのと似たような状態だね」

つまり『俺成分』を摂るのは、薬物を乱用しているのと同じと言うことか? そう言えば前回ここに来たときにもそんな話をしていたな。

「真奈ちゃんには辛いかもしれないけど、出来るだけ摂取する頻度を抑え、さらに一緒にいる時間も短くしたり、近づかないようにしたり……ひとまず、一旦添い寝をやめてみて、様子を観察してみてはどうかな?」

「えっ」

すると、真奈はこの世の終わりがやってきたかのような顔をする。

「どうしたんだ真奈?」

「そんな、お兄ちゃんと一緒に寝られないなんて……」

「今までだって寝てなかったじゃないか」

「あの快感は一度感じたら忘れられないよっ」

「こらっ、真奈! 先生の前でなんてことを!」

「あっ、私ったら……は、はじゅかし……」

今度は顔を赤くし俯いてしまう。流石にはしたないぞ。

「あはは、気になさらずに。それにしても真奈ちゃんは、本当にお兄さんのことが好きなんだね」

「はい、大好きです」

と次は、顔を上げキリリとドヤ顔をする。

「その気持ちに僕の方からどうこう言うつもりはないよ。けれど、真奈ちゃんには自分の身体を労って欲しいんだ。もし万が一のことがあると、伊導くんと一緒にいられる時間も少なくなってしまうんだよ?」

「それは……嫌です」

「だろう? だから、しんどいかもしれないけど、どの仮説が正しいのかを確かめるために、少し我慢してみることも考えて欲しいんだ」

「……わかりました、私とお兄ちゃんの将来・・のためですもんね!」

「そうそう、僕もサポート出来るとはことがあればなんでも言って欲しい。お母さんも、引き続きよろしくお願いします。もちろん、伊導くんもね」

「はい、こちらこそ」

「ありがとうございます、先生……」

と、母さんは涙を流す。

「娘はこのままどうなってしまうのかと心配で……ううっ」

「あの、よろしければ精神科の先生を紹介しましょうか? 嫌、別に病気だって言ってるわけじゃなくてね、患者の家族のケアを専門にしている方がいらっしゃるんですよ」

「本当ですか? じゃあ、一度試してみようかしら」

「ではまた紹介状の方を書いておきますので。では、今日はこれで」

「「「どうもありがとうございました」」」

「お大事に。次の診察は、また一週間後と言うことで……」

そして俺たち三人は、病院を後にした。

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