妹が『俺依存症』を患った件
第10話 夜、妹の部屋で、『お兄ちゃん成分補給』
「ただいま」
と、そのタイミングで父さんが帰ってきた。俺たちは玄関へ行き出迎える。
「あらあなた、おかえりなさい。珍しいわね、こんなに早く帰って来られるだなんて。まだ7時だわよ?」
「「おかえりなさい」」
「ああ、二人ともただいま。じつは部長が真奈のことを気にかけてくれてな。早引きさせてくれたんだ」
因みに父さんは課長だ。
「そうだったのね、ありがたいわ。又お礼を言っておかなくちゃ」
「そうだな。それより少し疲れたな、晩飯はあるのか?」
「たった今できたところなのよ、ほら、先に着替えましょう」
「うむ」
二人は二人の寝室になっている部屋に向かう。
「あ、お兄ちゃん、ちょっと」
「なんだ?」
真奈に呼ばれ、キッチン前のダイニングテーブルに座る。
「今度でいいからさ、一度そっちの美術部の見学とか、させて貰えないかな?」
「え? 急にどうしたんだ?」
「だってお兄ちゃんさっきテレビに映ってた人と知り合いなんでしょ? 折角だし、頼んでみてくれないかなって。入る前に、どんな雰囲気かわかったらやりやすいと思うし。それに事前に顔合わせしておくのも色々と得でしょ? 他にもちょっと、気になることもあるし……」
「そうだなあ」
まあ、折原さんとは今日の昼休みに話したこともあって、以前よりも更に仲は良くなった気がする。またそろそろ友達と呼んでも向こうも気にしない程度にはなってきてるんじゃないか?
だが急にそんなこと頼んで許可しても言えるかどうかは別だ。向こうにも都合があるだろうし。
「うーん、まあ一応聞いてみるよ。ダメ元って感じでいいなら」
「全然構わないよ、ありがとうお兄ちゃん大好き!♡」
そしてなんと椅子に座ったまま俺に抱きついてきやがった。
「こら、どさくさ紛れに告白してくるなっ! そして抱きつかないの! できるだけ接触するのを我慢するって話はどうなったんだよ」
「え〜、ケチ……」
「いやいや、俺が悪いわけじゃないだろ?」
「そうだよね、こんな病気になった私が悪いんだもんね……わかった、早くお兄ちゃんのこと大嫌いになれるよう努力するね? そしたら、依存症も早く治るかもしれないもんね」
俺の体を話した真奈は、一気にシュンとして俯く。
「ぐっ、べ、別にそこまでとは言ってないが……」
「ほんと?」
「ほ、ほんとうだから。って言うかわざと言ってるんだろどうせ?」
「むう、流石にに分かりやすかったか」
「同情を誘おうとするんじゃない」
と、頭にチョップをお見舞いしてやった。
「こら二人とも、なにじゃれついてるの? くっついたら観察の意味がなくなるじゃないまったく。ほら、ご飯食べるわよ」
「そうだぞ。真奈、体調はどうだ?」
するといいタイミングで母さんたちが戻ってきた。
「今のところ大丈夫。それにようやく普通になってきたって感じ? やっぱり朝からはちょっと元気がありすぎたなって、えへへ」
「そうか、ならそれでいい。引き続きあまり接触しないようにな」
そういえばさっきちょっとひっついてしまったが、テンションが急激に上がるということはなかったな。一体なにが条件なんだろうか?
「じゃあ食べましょう、いただきます」
「「いただきます」」
そうして夕食をとり、俺はテストに向けて予習復習を。真奈も自室に篭って今日はもうなにもしてこないつもりのようだ。
俺は勉強を終えると、早めに寝ることにしベッドに入った。
今日はちょっと疲れたかもしれない。折原さんと仲を深めることができたし、それに久しぶりに中学に行って先生と話もできたから良しとしよう。
おやすみ世界……ぐーぐー。
……そして深夜。ふと目が覚めると、夜中の12時ごろだった。
「うーん、あれ、今何時だ? まだ12時じゃん、全然眠れるな」
俺は安心して再び寝ようとする。と、隣の部屋から呻き声のようなものが聞こえる。
「え、真奈?」
俺は飛び起き、部屋の鍵を開け隣の部屋へ向かう。
「真奈、どうかしたのか?」
ドアをノックし返事を確認するが、なにも言ってこない。だが少しだけだがやはり呻き声のようなものが漏れているのが聞こえる。
「おい、入るぞ?」
ドアノブを回すと、どうやら鍵はかけていないようで、すんなりと扉が開いた。
夜中に女子の部屋に入るのは戸惑われるが、致し方ない。
「真奈?」
部屋の奥にあるベッド(因みにどうやら俺のベッドと今がひっつくように置いてあるみたいだ)が膨らんでいるのが見える。寝ているのか? 寝言だったのだろうか?
起こしたら悪いと思い、静かに近づく。
「う、うーん、お兄ちゃん……」
「お、おい、大丈夫かっ!?」
「し、しんどいよ……はあ、はあ」
まさか、禁断症状か!?
「おい、待てよ、今起こしてやるからな」
そうしてベッドの上に蹲る妹の身体を掴み起こす。
「ううっ、寝ようと思って横になってたら、だんだんしんどくなってきて……お兄ちゃん呼ぼうかなって思ったけど、鍵がかかってたから、部屋に戻って……」
そうだったのか、しまったな……
「それはすまない、取り敢えず、どうしたらいい?」
「え、えっと、お兄ちゃんが欲しい……」
「えっ!?」
汗をかき、頬も照っていて更に贔屓目かもしれないが妹はなかなかの美人なため余りにも色っぽく、つい違う意味を考えてしまった。
「『お兄ちゃん成分』、す、吸わせて?」
なるほど、そういうことか。ってちょっと考えればすぐにわかるだろう俺、実の妹相手になに考えてんだ!
「お、おにいちゃ……はあ、はあ」
妹の息は荒く足取りもおぼつかない。っと、今は真奈を楽にしてやることが最優先だ。
「だ、大丈夫か!? 今助けてやるからな!」
そして。
「ギュッ! スウウウウウウウウウゥゥゥ………はあああぁぁあ〜〜〜❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」
俺の体を抱き締めた妹は、そのまま深く息を吸い込み……ビクビクと自らの身体を震わせながら、まるでこの世に存在するすべての幸せを一般に味わったかのような表情で甘い声を出しながら息を吐く。
「も、もう一度……スウウウウウウウウウゥゥゥ……い、いぐっ……!」
今度は息を吸ったあと、俺の体を強く抱き締めながら、静かに震えた。
「お、おい、大丈夫か!?」
胸に顔を埋めたまま時折ビクビクと痙攣したように震える妹の両肩を、俺は掴み押す。
「…………見なかったことにしようかな、なんだかかわいそうだ」
そうして見えた妹の顔は、涙とよだれに塗れまさに恍惚とした表情であった。う、うん、指摘するのもアレだし、しばらくこのままにしておこうかな?
そう考え、何事もなかったかのようにまたゆっくりと俺の胸に押し付けてやる。
そのまましばらく、ビクッビクッと体を跳ねさせる妹の体を優しく抱き締めてやった。
「……ふう、もう、大丈夫っぽい。ありがとうお兄ちゃん」
「いや、いいさ。それよりも本当に大丈夫か?」
「うん、もう身体の震えも治ったし、しんどさも無くなってきたから」
「そうか、ならいいんだが……」
それにしても急にきてしまったな。法則性があるのかまだわからないが、とにかく意識を失わずに済んで良かった。
先日は本当に授業中に急にぶっ倒れたって聞いたからな。もしここでそうなったらまた病院送りだったかもしれない。
「母さんたち、よぶか?」
「ううん、いいよ。ねえ、それよりも良かったらだけど、朝まで一緒にいてくれない?」
「えっ?」
「まだ、少し怖いから……」
と、まだ顔を少し赤らめている妹は、そっと抱きついてきた。
「こ、ここでか?」
「うん」
「わかった……ほら、横になって」
床から立ち上がり、ベッドに優しく寝かしつけてやる。
「あっ、ちょっと待って」
「なんだ、まだ何かあるのか? 遠慮せずに言ってくれていいんだぞ?」
「そ、その……し、下着が、ぐちょぐちょで……っ」
「!!! すまん、外に出ているな!」
顔を真っ赤っかにした真奈をそれ以上見てられず、俺は妹の部屋を飛び出したのであった。
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