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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第8話 中学校にて(全編真奈時点)


「あっ、真奈!」

両親を送り出したのはちょうど一時間目が終わる頃だったので、運良く休み時間に教室に入れた。
ドアを開けるとすぐ、クラスメイトが話しかけてくる。

「あ、おはよー! もう大丈夫なの? RIMEでもお話したけど、やっぱり心配で。ごめんね、お見舞い行けなくて」

この子は三住理瑠みすみりる。私の親友だ。

親しい人たちには、メッセージアプリで心配ない旨を伝えておいたのだが、それでも気にかけてくれるのは素直にうれしい。

「うん、ありがと。もう平気だよ? それに気にしないで。その気持ちだけで十分、嬉しいから。まあ実は、チョットややこしいことになってしまったけどね」

「ややこしいこと?」

「また後で先生から話があると思うから、今は気にしないでいいよ?」

「そうなんだ、わかった! 今日はなんで遅れたの?」

「ちょっとお父さんたちと、先生とでお話ししていたの」

「ああー、そういうことか。じゃあ後でいなかった分の授業の内容、教えてあげるね!」

「うん、助かる、いろいろありがとね!」

「えへへっ」

理瑠はバレー部員で、明るく活発な子だ。チームでは結構活躍していて、部の県大会出場にも貢献した。残念ながら大健闘の末三回戦で敗れてしまったが、あの時の理瑠は本当にカッコ良かったなあ。

彼女はお兄ちゃんの高校に推薦入学する予定らしく、理瑠ともまた同じ学校に通えるかもしれないのはとても嬉しい。

「あっ、真奈ちゃんじゃん、もう大丈夫なの?」

「うん、ありがとう----」



と、他のクラスメイトとも似たようなやりとりをした後、昼休みまでしっかりと授業を受けた。
今日は幸い、『依存症』の禁断症状が発症することはなかった。今のところは大丈夫みたいだけど、自分の身体とはいえいつ我慢出来なくなるか分からないっていうのは少し怖い気持ちもある。
また皆に迷惑をかけたら心配させたくはないし、やっぱり早く治したいな。


「----じゃあさ、お兄さんも満更でもなかったんじゃない?」

「ど、どうかな?」

お昼ごはんを食べながら、理瑠に昨日の夜、お兄ちゃんへキスをした話をする。

「だって、妹とはいえこんな美少女にキスして貰えたんだよ? 絶対嬉しいはずだって」

「そんな、美少女なんてやめてよ……でもお兄ちゃん、昨日部屋の鍵をかけてなかったんだよね。もしかして動揺していたのかも?」

「え? なんで知ってるの?」

「そ、それは……実は、ちょっと理由があってお兄ちゃんの部屋を訊ねたら、すでに寝た後だった、それに鍵も開いているようだし、ちょっとだけならいいかなって添い寝しちゃったんだ」

「きゃー! 真奈、やるじゃん!」

理瑠は私の気持ちを一番理解してくれている子だ。茶化すこともなく、純粋に私の気持ちを応援してくれている。この娘と親友になれて、本当に良かったと思う。

「ま、まあ流石にちょっと大胆過ぎたかな? とは思ったけど。けれど、『お兄ちゃん成分』を補給できたからよかったかなって」

「お兄ちゃん成分? なにそれ、面白い事言うのね真奈って」

「あっ……」

しまった、つい口に出してしまった。

「……理瑠ならいいかな? 大事な話があるんだけど、ちょっといい?」

「え? いいわよ」


そして二人、普段あまり人のいない、死角の多い廊下の隅の方へ行く。

「実は……私、『お兄ちゃん依存症』に罹ってしまったの」

「へえっ?」

詳しい症状を説明する。話を聞くにつれ、最初は突拍子もない話に少し戸惑っていた理瑠も、真剣な顔になる。

「……つまり、真奈はそのお兄さんが発するフェロモンを浴びないと、我慢できない体になってしまった、って事なのね」

「そういうことになるわ……あの、信じてくれるの?」

「当たり前じゃない。真奈がそんな嘘をつくような子じゃないっていうのはよくわかっているつもり。私のことなんだと思ってるわけ? バレー部のエース理瑠ちゃんよ!」

「あははっ、なにそれ、関係あるの?」

「関係あるの! つまり、今までもこれからも、真奈の一番の親友で一番の理解者だってこと。覚悟しておいてよね」

「……理瑠、ありがとう」

私は思わず泣いてしまう。

「ちょ、や、やめてよ」

「わ、私、怖かったのかも……こんな病気、普通は理解して貰えるわけないって。家族は私の症状を実際に見たからまだなんとか解ってくれたけど、普通は頭おかしいって思われても仕方ないよねこんなの……」

「真奈……」

自然と抱きついてしまった私の頭を、優しく撫でてくれる。

「もし理瑠に理解されなくて見捨てられたらどうしようって怖かった。口ではなんとでも言えるけど、でもやっぱり一人ぼっちは嫌なの」

「大丈夫、言ってるでしょ。私は絶対に真奈を見捨てたりなんてしない。もし何かあったら遠慮なしに言ってね?」

「あ、ありがとう……」

と、理瑠のそこそこ豊満な胸をグリグリとする。

「ちょ、なにやってるのよ!?」

「えへへ」

「もう、仕方ないなあ」

世界で一番好きな人はお兄ちゃんだけど、世界で一番大切な友達は理瑠。そのことを再確認できた昼休みだった。
そして予鈴が鳴るまで二人きりでイチャイチャし続けた。



「というわけで、彼女の病気は日常的には問題はありません。ですが、先日のように突然体調が悪くなる可能性もあります。皆さんも、なにかあれば助けてあげてください」

「ご迷惑をおかけします。あと半年間ですが、みなさんこれからも仲良くしてくれると嬉しいです」

「真奈のこと嫌いになるわけないじゃない!」

「そうそう、気にするなって」

「みんな……ありがとう」

また、思わず涙を流してしまった。

今日一番の懸念であった昼休み後のホームルームでは、特に茶化されることもなく、皆真剣に私の病状について、聞いてくれた。ある意味山場を乗り切った気持ちで、私はほっと息を吐く。

「それではホームルームを終わります。来月には最後の合唱発表会がありますね。みなさんの思い出に残るようなものになることを願います」

そうして担任は教室を出て行った。

と、私の席の周りにみんなが集う。

「え?」

「真奈ちゃん、大変だね」

「気にしないでね、私たち、仲間じゃない!」

「そうだそうだ、もしいじめる奴がいたら、俺が守ってやるからな」

「おい、どさくさ紛れに点数稼ぎしてるんじゃねーぞ」

「あ? そ、そそそんなわけないだろう!」

「全く男子ったら……」

「あはは……」

その後の授業中は特になにも起きることはなく、こうして無事、懸念していた1日が過ぎていく。

「じゃあ、また明日! 急げ急げっ」

「うん、バイバイ理瑠」

理瑠は最後の大会が近いらしく、チャイムが鳴るや否や部活に向かってしまった。

「私も行かなきゃ」

部室となっている美術室へ向かう。と、中から話し声が聞こえてきた。




「--じゃあ、真奈ちゃんはもう大丈夫なんですね」

「ええ。いつも色々とお世話になってます、今後とも妹をよろしくお願いします」

「それにしても久しぶりに会うわね、伊導くん。やっぱり中学生の頃に比べると、大人っぽくなったわ」




えっ、この声は、顧問の先生と……お兄ちゃん!?

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