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妹が『俺依存症』を患った件

ラムダックス

第5話 朝の風景


「な、何してんだ真奈っ!?」

「あ、お兄ちゃん、おはよ……ふわぁ〜」

妹はベッドの上で正座をし、呑気にあくびをする。

「なんでここにいるんだよ? 昨日ちゃんと自分の部屋に入って行ったよな?」

そう詰め寄ると同時に、その直前起きた"事件"のことを思い出してしまい、ほんの一瞬だが目の前にいる女性の口元を意識してしまった。

「そうなんだけど……『あ、お兄ちゃん成分摂取するの忘れてた!』ってなって、また身体の調子が悪くなっても嫌だし、念のためと思ってちょっとだけフェロモンを浴びに来たの」

「な、なるほど?」

まあ、一応の理由はわかった。確かに本来は俺成分を摂取するためにやり取りをしていたんだったな。

「でもよく考えたら、キスしたときに充分補充出来ていたんだよね。あの時は脳がジュワジュワ〜ってして凄かったなあ……あとで下着変えちゃったくらいだもん。直接肌に触れると脳内物質の分泌量が多くなるのかな?」

「ええ……まあそれは置いておくとして、なんでここにいるんだよ! その話の流れでどうして朝チュン!?」

それにしても今日はチュンチュンチュンチュン、鳥さんたちの自己主張が激しい……!
そういうシチュエーション求めてねぇから! それR-18でよくある奴だから!

「うん、まあいっかって思って、少しだけ一緒に横になろうかなって思ったんだ。お兄ちゃんいっつも鍵かけるし、久しぶりに一緒になって寝たし、私としてはとても満足です」

何故かドヤ顔の真奈さん。

「そういえば昨日掛け忘れていたような気がするな」

そりゃ急にあんなことされたもんだから、少しテンパっていたのかもしれないな。っていうか。

「おい、なんでいつも夜は俺の部屋に鍵がかかってることを知ってるんだよ?」

「え? だって隙があれば一緒に寝ようと思って……普通だよね?」

「お、お前なあ」

妹様のナチュラルなムーブが恐ろしい。

「えへへ、まあいいじゃんいいじゃん? というわけで、おはようございます」

といい、真奈は丁寧に三つ指で頭を下げる。

「あ、お、おう。おはようございます?」

「というわけで着替えてくるね。お兄ちゃんもそろそろ起きたほうがいいんじゃない?」

「ん?」

時計を見ると、大体いつも起きる時間だった。そうだな、そろそろ通学準備し始めないと。

「じゃあ、また後で」

スタスタ、と部屋を出て行こうとする真奈。

「っておい」

「ぐえっ」

とっさに襟を掴む。

「い、痛いよお兄ちゃんっ」

「謝りなさい、勝手に異性の部屋に入らない! これ常識! 家族だろうと年頃の男の子には色々あるんだからな!? 仮にも俺のことを好きとか宣うなら、そういう配慮くらいしてくれてもいいんじゃないか?」

「大丈夫、例えお兄ちゃんがどんなことをしようとも、例えば部屋の端にある不自然におかれた丸いカーペットの下の床を切り抜いた小さな隠し倉庫にどんな趣味の本を隠し持っていようとも、絶対に幻滅しない自信あるからっ! 私のお兄ちゃんに対する好意は生半可なものじゃないんだよ」

まて、何故俺の秘密の場所を感知しているのだ……誰にも教えたことないのに。

「あ、これお母さんも知ってるよ?」

「なん、だと……」

俺はまさかの新事実に対するショックにより、四つん這いになり項垂れる。

「じゃあ、また後でね」

その隙に妹はそそくさと退室してしまった。

「……隠し場所……変えないと」

知ってても何も言わないのも母親の愛情だと思っておこう、うん。

そして思春期男子特有? のショックを抱えながらも準備を終え、リビングに降りる。

「おはよう、伊導」

「起きたか」

「おはよう、父さん母さん」

「あ、おはよ〜、お兄ちゃん!」

「……ああ」

こいつ、何事もなかったかのように振る舞いやがって。そのメンタリティある意味羨ましいぜ。

「どうしたの朝からそんな不機嫌そうな顔をして?」

母さんが朝食を配膳しながら問いかけてくる。

「いや、なんでもない。寝起きにちょっと転んだだけ」

「そう? 気を付けなさいね、もうすぐテストなんでしょ。伊導まで入院してしまったら大変だわ」

「あ、ああ。気をつけるよ」

「お兄ちゃん、意外とドジなところあるんだね」

これはもう話を合わせろアピールに違いない。仕方ない、昨日の今日で二人で添い寝してましたなんて知られたら、どんな反応をされるか分からないからな。俺も何もなかったフリをするしかないか……

そういえば、真奈のやつ入院してる時から昨日くらいまでは結構潮らしい雰囲気もあったけど、今日はだいぶ元気なんだな。いつもわりと明るめの方だが、それに増してって感じがする。

「うるさいな。なあ真奈、お前なんかはしゃいでないか?」

「え? そうかな?」

「確かに、朝からもう少し大人しくできんのか? 全く困った娘だ」

父さんも嘆息し、手に持つ新聞を再び読み始める。

「なんだか元気が有り余ってる感じするんだよね! シュッシュッ!」

遂にはシャドーボクシングの真似事まで始めてしまう。綺麗に結ばれた少し茶色がかった黒髪のポニーテールがフリフリと揺れる。こう見ると本当に馬の尻尾みたいだな。
こんなことしてるけど、こいつ美術部なんだよなあ……美術部って、普通はおとなしそうな眼鏡っ子とか、巨乳の生徒会長キャラとか、そういう人達がやっているイメージあるけど。
こいつみたいな一見運動部っぽい人間でも出来るもんなんだなあ。まあ見た目によらず意外と手先が器用なところはあるし、以前見せてもらった絵もなかなかセンスがあるとは思ったので、正に"人を見た目で判断してはいけない"という良い例かもしれないな。

「もしかして、ここ数日ゆっくりしていたのもあるんじゃない?」

「かな?」

「何日か分の元気を溜め込んだってことか? そんな、電池でもあるまいし貯蓄できるもんじゃないと思うけど?」

もしそんな機能が人間にあることがわかれば、色々と世の中が変わってしまうだろうな。

「それはそうと、学校では大人しくするんだぞ」

「わかってるよお父さん、私もそこまで馬鹿じゃないから。学校ではちゃんと真面目にやってるから心配しないで」

「そうか、それなら良いんだ。面談ついでに普段の様子なんかも聞こうと思ってるからな、嘘をつくんじゃないぞ?」

「嘘じゃないです〜!」

……こうしてみるといつもの真奈なんだよな。つい先日の出来事が嘘みたいだ。

「はいはい、みんな早く朝ごはん食べてね。あなたもいつまでも新聞読んでないで!」

「あ、ああ」

渋々と折り畳み、みんなで朝食をとる。

そして真奈たち3人はそのまま中学校へ、俺は一人高校へと赴く。

俺の高校の方が距離があるため、先に家を出ることとなる。

「あ、まって、お兄ちゃん」

「なんだ?」

と、玄関を出る直前、真奈が声をかけてきた。

「『お兄ちゃん成分』は?」

え??

「ん? それは昨日、今日は朝から控えてみようって話したばっかじゃないか。まさか忘れてたのか?」

「あっ……そ、そうだった……」

「どうだ、禁断症状とやらは出ているか?」

見た感じは大丈夫そうだが。だがこの前も突然倒れたと言っていたから、もしかすると直前まで変化が表に現れないのかもしれない。

「今のところは平気。でも、ちょっとむずむず? するかも」

「そうか、母さんたちも、もし向こうで何かあったら連絡してくれ」

「わかったわ、じゃあ行ってらっしゃい」

「ああ、行ってきます」

「気をつけるんだぞ」

「うう〜〜、行ってらっしゃい〜〜」

妹よ、そんな涙目で見られても駄目なものは駄目だ。これはお前の為でもあるんだからな、今のうちに試せることは試しておかないと……と俺は心を鬼に? する。

そうしてしばらく歩いていると、後ろからポンッと肩を叩かれた。

「おはよっ、伊導くんっ!」

          

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